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第一話 いかにして私が「男子」になったのか
8 絡まれました
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相手の言い分が実にツッコミどころ満載なのだが、この人ってたぶんアレだな。
知らない相手とはとりあえずヤンチャなことをしてコミュニケーションを図ろうとする人。
こういう人種って、たいてい人の話を聞かないんだよね。
地元のガキ大将がこのパターンの相手だったんで、よくわかる。
なにせ子供の人数が少ない土地だったので、ガキ大将の彼はいつも喧嘩相手に飢えていたらしく。
女子の私にまで喧嘩を仕掛けて来たんだっけ。
まあ、私はまともに相手をしたりしないで、とっとと逃げたけどね。
だって身体を動かすのは好きだけど、喧嘩は好きじゃないし。
だいたい世間は、我が弟が愛読しているバトル漫画のようにはいかず、拳を交えても痛い思いをするだけで、心が通じ合ったりはしないものなのである。
あのガキ大将の彼はいつ頃、この事実に気付くだろうか。
そしてこの人も、今この瞬間に気付いてほしいのだが。
それとももしや、こっちはあの彼と違って、拳で語り合える系の能力なのか?
能力にも色々な種類があるって聞いたし。
だとしても、私はそれに付き合うつもりは全くない。
「どうぞ私にお構いなく、私はデキなくても全く困りませんから」
なにかを探している風な常盤さんの後ろから、私はワイルド系男子に言ってやる。
「ちょっと、安城君!」
私が発言すると思わなかったのか、常盤さんが慌てる。
でも、あのガキ大将君も、相手がモジモジしている間に勝手に俺理論を展開して話を進める癖があった。
だから「私はアンタに付き合わないからね!」と周囲の第三者に向けて宣言しておくのが大事なのだ。
そうすれば「アイツもやる気マンマンだったんだぜ!」という巻き込み論法を避けることができる。
「あぁん? 俺の誘いを断るのかぁ?」
私が断ると思っていなかったらしく、ワイルド系男子がとたんに凄んでくるのがまた言い慣れているっていうか、板についている。
こういう悪っぽいセリフって、素人が言うと浮いて聞こえるんだよね。
ってことは、この人は本物のヤンチャさんか。
「だって私、喧嘩はからっきしなので。
痛い思いをしたくもないですし、もう遅いから早く寝たいですし」
私の本気の本音を、しかし相手は鼻で笑う。
「はん!
なんだよ腰抜け野郎が、ビビりやがって」
野郎じゃないし、ビビりで結構だから、「つまんねぇ野郎だな」とか捨て台詞を吐いてさっさと退散してくれ。
私がお約束的展開を期待していると。
「じゃあ、嫌でもその気にさせてやらぁ!」
別パターンのお約束を選んだらしいワイルド系男子が叫ぶと、その片手の平に炎が灯った。
え、なんの手品? って能力か!
「あ、こら!
能力で暴れたら反省室行きだよ!」
「そんなの関係ねぇよ!」
常盤さんの忠告に、しかし相手は聞く耳持たず。
いや、関係おおありだって。
反省室ってなんかヤバそうじゃん?
やめとこうよ危ないことは。
廊下の向こうや、面した扉の中からザワザワと人の声が聞こえる。
「ヤバそうじゃね?」
「誰か……を呼んで来いよ」
そんな囁きが聞こえた時。
「うるさいですね、読書もできやしない」
聞き覚えのある声と共に、ワイルド系男子の手の平の炎がシュッ、と消えた。
そして私の目的地である角部屋のドアが開き、現れたのは神高君だった。
そうか、あそこが私の部屋ってことは、同室者の神高君の部屋でもあるんだよね。
「暴れたいのなら外でどうぞ、ここでされては迷惑です」
神高君はワイルド系男子に冷たい視線を向けた後に、私の方を見る。
「さっさと荷物を片付けないと、明日に差し支えるのではないですか?」
「あ、そうだよ!
もう時間も遅いんだし、早くしなきゃ!」
神高君の意見に、常盤さんも首がもげる勢いで頷く。
早く私をこの場から退散させたいのだろう。そして常盤さんが探していたのは、神高の姿か。
そうそう、皆も明日は入学式なんだから、ヤンチャしていないで早く寝ようよ。
って関係あるのは一年生と関係者だけだから、ほとんどは休みか。
そんな私の内心はともかく、神高君の登場で、場の空気が一気に白けたのは確かだ。
「まさか、てめぇが同室なのか?」
唸るようなワイルド系男子を、神高君がまっすぐに見つめる。
「そうですけど。
あんまりしつこいと沈めますよ、鴻上先輩」
「チッ……」
どうやら鴻上という名らしいワイルド系男子は、これに反論することなく、舌打ちをして去っていく。
おお、なんか知らんが撃退してくれたぞ!?
とにかく面倒事が去ったらしいところで、とっとと部屋に入って荷物を確認してしまおう。
そう思っていたんだけれども。
「一体なんの騒ぎだ、何時だと思っている!?」
鴻上先輩とは逆方向の廊下から、そんな声が響いてきた。
そして新たに現れたのは、小柄でやせ型な体格の色白な男だった。
「常盤さん、何事ですか!?」
その人に話しかけられた常盤さんが、ビクッと肩を跳ねさせる。
なんだなんだ、常盤さんがまたもやビビっているけど、この人もなんかヤバい系なの?
知らない相手とはとりあえずヤンチャなことをしてコミュニケーションを図ろうとする人。
こういう人種って、たいてい人の話を聞かないんだよね。
地元のガキ大将がこのパターンの相手だったんで、よくわかる。
なにせ子供の人数が少ない土地だったので、ガキ大将の彼はいつも喧嘩相手に飢えていたらしく。
女子の私にまで喧嘩を仕掛けて来たんだっけ。
まあ、私はまともに相手をしたりしないで、とっとと逃げたけどね。
だって身体を動かすのは好きだけど、喧嘩は好きじゃないし。
だいたい世間は、我が弟が愛読しているバトル漫画のようにはいかず、拳を交えても痛い思いをするだけで、心が通じ合ったりはしないものなのである。
あのガキ大将の彼はいつ頃、この事実に気付くだろうか。
そしてこの人も、今この瞬間に気付いてほしいのだが。
それとももしや、こっちはあの彼と違って、拳で語り合える系の能力なのか?
能力にも色々な種類があるって聞いたし。
だとしても、私はそれに付き合うつもりは全くない。
「どうぞ私にお構いなく、私はデキなくても全く困りませんから」
なにかを探している風な常盤さんの後ろから、私はワイルド系男子に言ってやる。
「ちょっと、安城君!」
私が発言すると思わなかったのか、常盤さんが慌てる。
でも、あのガキ大将君も、相手がモジモジしている間に勝手に俺理論を展開して話を進める癖があった。
だから「私はアンタに付き合わないからね!」と周囲の第三者に向けて宣言しておくのが大事なのだ。
そうすれば「アイツもやる気マンマンだったんだぜ!」という巻き込み論法を避けることができる。
「あぁん? 俺の誘いを断るのかぁ?」
私が断ると思っていなかったらしく、ワイルド系男子がとたんに凄んでくるのがまた言い慣れているっていうか、板についている。
こういう悪っぽいセリフって、素人が言うと浮いて聞こえるんだよね。
ってことは、この人は本物のヤンチャさんか。
「だって私、喧嘩はからっきしなので。
痛い思いをしたくもないですし、もう遅いから早く寝たいですし」
私の本気の本音を、しかし相手は鼻で笑う。
「はん!
なんだよ腰抜け野郎が、ビビりやがって」
野郎じゃないし、ビビりで結構だから、「つまんねぇ野郎だな」とか捨て台詞を吐いてさっさと退散してくれ。
私がお約束的展開を期待していると。
「じゃあ、嫌でもその気にさせてやらぁ!」
別パターンのお約束を選んだらしいワイルド系男子が叫ぶと、その片手の平に炎が灯った。
え、なんの手品? って能力か!
「あ、こら!
能力で暴れたら反省室行きだよ!」
「そんなの関係ねぇよ!」
常盤さんの忠告に、しかし相手は聞く耳持たず。
いや、関係おおありだって。
反省室ってなんかヤバそうじゃん?
やめとこうよ危ないことは。
廊下の向こうや、面した扉の中からザワザワと人の声が聞こえる。
「ヤバそうじゃね?」
「誰か……を呼んで来いよ」
そんな囁きが聞こえた時。
「うるさいですね、読書もできやしない」
聞き覚えのある声と共に、ワイルド系男子の手の平の炎がシュッ、と消えた。
そして私の目的地である角部屋のドアが開き、現れたのは神高君だった。
そうか、あそこが私の部屋ってことは、同室者の神高君の部屋でもあるんだよね。
「暴れたいのなら外でどうぞ、ここでされては迷惑です」
神高君はワイルド系男子に冷たい視線を向けた後に、私の方を見る。
「さっさと荷物を片付けないと、明日に差し支えるのではないですか?」
「あ、そうだよ!
もう時間も遅いんだし、早くしなきゃ!」
神高君の意見に、常盤さんも首がもげる勢いで頷く。
早く私をこの場から退散させたいのだろう。そして常盤さんが探していたのは、神高の姿か。
そうそう、皆も明日は入学式なんだから、ヤンチャしていないで早く寝ようよ。
って関係あるのは一年生と関係者だけだから、ほとんどは休みか。
そんな私の内心はともかく、神高君の登場で、場の空気が一気に白けたのは確かだ。
「まさか、てめぇが同室なのか?」
唸るようなワイルド系男子を、神高君がまっすぐに見つめる。
「そうですけど。
あんまりしつこいと沈めますよ、鴻上先輩」
「チッ……」
どうやら鴻上という名らしいワイルド系男子は、これに反論することなく、舌打ちをして去っていく。
おお、なんか知らんが撃退してくれたぞ!?
とにかく面倒事が去ったらしいところで、とっとと部屋に入って荷物を確認してしまおう。
そう思っていたんだけれども。
「一体なんの騒ぎだ、何時だと思っている!?」
鴻上先輩とは逆方向の廊下から、そんな声が響いてきた。
そして新たに現れたのは、小柄でやせ型な体格の色白な男だった。
「常盤さん、何事ですか!?」
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