私には未来が見える ※ただし生活密着型

黒辺あゆみ

文字の大きさ
14 / 42
第二話 入学式は波乱の幕開け

2 早朝ランニングは身体にいい

しおりを挟む
外はいい天気だった。

「桜も咲いているし、散歩日和だねぇ」

私は購入したお茶を飲みつつそんなことを呟きながら、寮の周りの小道を歩く。
 年々開花時期が早まっている桜だが。
 ここが山奥だからか、はたまたそういう品種だからか、いい感じに咲き誇っている。
 実家では入学準備で花見どころではなかったので、ここで桜を愛でることができるのは嬉しい。
 もう少し早く到着できていれば、お花見できたのかなぁ。
 ……いや、お花見するには誘う人がまだいないか。
 同室の神高は、誘ったら快く応じてくれそうなキャラには見えないし。
 一人だけで花見とか、微妙に寂しすぎる。
 桜を見て、気分が上がったり下がったりと忙しい私だったが。

 タッタッタッタッ

 軽快な足音が聞こえて来た。
 前を見れば、誰かが小道をこちらへ向かって来ている。
 私と同じくスウェット姿で、どうやらランニングをしているらしい。
 私からあちらが見えるということは、あちらからも私が見えるということで。
 相手はゆっくりと速度を落とし、私の前で止まった。

「あれー? 知らない顔だなぁ」

そう言って目の前で首を傾げるのは、小柄な男子だ。
 昨日のマルチーズ、じゃなかった万智先輩と同じくらいだろうか。
 けど可愛い系な万智先輩に比べれば、顔は普通に平均的男子の顔だ。

「おはようございます。
 私は昨日の遅くに着いた新入りなんで、よろしくどうぞ」

挨拶をしながら、ふと思う。
 もしかして、男子だったら俺とか僕って言ったほうがいい?
 でもいきなり口調って変えられないし、慣れないからたぶん変なしゃべり方になりそう。
 ならいっそ私で通して、丁寧語キャラでいったほうがいいかも。
 うん、そうしようかな。
 私が今後の方針について考えていると、相手はポン! と手を叩いた。

「ああもしかして、神高君と同室の人?
 だったら僕も同じ年で今日入学式だよ。
 僕は徳倉健司とくら けんじ、君たちの二つ隣の部屋なんだ」

ニパッと笑って握手に手を出される。
 おお、初対面からフレンドリーなのは、常盤さん以来だ。
 昨日から付き合い辛そうな人とばかり会ったせいか、そのフレンドリーさにとても感動した。

「安城明日香です、仲良くしてくれると嬉しいな」

差し出された手を握り、二人でニコニコブンブンと振り回す。

「にしてもあの神高君と同室って、どんな人だろうって皆で噂してたんだよぉ。
 意外と普通な人でホッとした!」

楽しそうに言ってくれる徳倉君だが、色々ツッコミたいのだが。
 今のセリフで「あの」ってところが強調して聞こえたのだが。
 神高と同室だと普通でない判定されるのが通常なのか?

「あの神高君、とはどういう意味で?」

気になることは聞いておけ、というわけで、率直に徳倉君に疑問をぶつける。
 すると徳倉君は、パチリと目を瞬かせてから「ああ!」と漏らした。

「安城君は昨日来たばっかりだったら知らないよね。
 この寮って中高一緒なんだけど。
 中学の頃っていうか、その前の初等部の頃から、神高君ってずっとルームメイトがいなかったんだよ」

私は速攻で「それは何故」と聞きたいが、聞きたくない気もする。
 だってこの言い方だと、絶対にろくでもない理由に決まっているじゃないか。

「そんな神高君のところの空き部屋に、急に人が入るっていう話でしょう?
 しかも滅多にない高等部からの新入生だし、きっとワケアリなんだって噂になってて」

まあ、ある意味ワケアリではあるな。
 パンダの子供的な珍獣ポストにいるという。

「昨日の夜もなんか騒ぎがあったし、どうしようかってルームメイトとドキドキしてたんだけど。
 神高君が出てきて納めちゃうから、ビックリしたよ。
 だって彼、そういうタイプじゃないもん」

それはなんとなくわかる。
 常盤さんも神高が出てきてくれて助かったって言ってたし、たぶん通常の彼だとまず顔を出さないのだろう。
 なんだ、もしかして神高も十分に珍獣ポストなのか?
 珍獣同士でまとめられちゃったみたいなことなの?
 まあこのあたりの事情は、追々追求するとして。

「にしても、徳倉君は早朝からランニングですか、健康的ですね」

私が話を振ると、徳倉君はまたニパッと笑う。

「僕ねぇ、あんまり身体が逞しくないでしょ?
 でもマッチョって憧れでさぁ。
 こうして地道に体力作りをしていれば、いつかきっとグーンと背が伸びて、ムキムキって筋肉つくかなって」

なるほど、マッチョ志望なのか。
 こういうのって努力以前に体質が大きいらしいから、明らかに痩せ体質っぽく見える徳倉君には厳しい望みだな。
 でも人って自分にないものに憧れるって言うもんね。
 それに体力作りはいいことだよ。
 それにゴリマッチョも細マッチョも無理でも、ちょいマッチョにはなれるかもしれないし。

「なるほど、マッチョは一日にしてはならずと言う、かもしれません。
 頑張ってください」

「ありがとう、僕頑張るよ!」

私のエールに、徳倉君はムン! と力こぶを作るポーズをする。
だが肝心の力こぶは確認できず、マッチョへの道のりはまだまだ遠そうである。
 ちなみに私のところは両親祖父母が皆体は逞しい方なので、私もその遺伝子を引き継いで逞しく育っているわけだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

ブチ切れ公爵令嬢

Ryo-k
恋愛
突然の婚約破棄宣言に、公爵令嬢アレクサンドラ・ベルナールは、画面の限界に達した。 「うっさいな!! 少し黙れ! アホ王子!」 ※完結まで執筆済み

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...