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第二話 入学式は波乱の幕開け
8 もうすでに疲れました
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でも神高と姫様かぁ。
並べて見ただけだとアリかなって思うけど。
ほんの一日足らずの付き合いでも、あの神高は可愛いだけでは落ちない気がする。
実際、ヤツは無関係を決め込もうとしていたし。
いや待て、もしかして案外、内緒で姫様とどっかでイチャイチャしていたりとか……ないかも。
なんかイメージが湧かないわ。
私が神高と姫様の関係について妄想していると。
「それよりお前、確か安城だったか。なんともないか?」
万智先輩にそんなことを聞かれた。
「はい? なんともってなにがです?」
なにを言われているのかわからず、私は首をかしげる。
そんな私を見た鴻上先輩が、「ククッ」と喉の奥で笑みを漏らした。
「てめぇはビビりもせずに、俺に歯向かいやがったんだ。
タダの『無能』のはずがねぇ。
そうだろう? 神高よぉ」
「さぁ? 知りませんね」
うぁ、ビビった!
私は急に後ろから声がして、ビクッと肩を跳ねさせる。
そう、いつの間にか受付を済ませていた神高が、私の後ろに立っていたのだ。
「安城、今変な顔をしていましたが。
妙な妄想をしなかったでしょうね?」
しかも微妙に鋭い。
「嫌だなぁ、神高があの可愛い子とイチャイチャラブラブだったらどうなんだろうとか、考えてもいないって」
「……馬鹿な事をほざいていると、潰しますよ」
私がヘラりと笑って告げると、真剣な顔で言われた。
潰すって、ねぇどうやって?
あ、能力でなのか。
そういえば私ってば、神高の能力っていうのがなんなのか、まだ聞いていないや。
でもこれが、公衆の面前で堂々と聞いていいものなのか、微妙に悩むな。
私が一人唸っていると。
「なんともないのなら、いいんだが。
神高、安城が無知なのは当然だろうし。
ルームメイトなら、ちょっとは色々教えておいてやれ」
万智先輩が神高にそんなことを言う。
「……そのうち、追々」
ああこれ、当てにならないヤツだ。
万智先輩もそんな顔をしてるし。
神高は親切なのかそうでないのか、そのラインがどこにあるのか分からん。
でも「色々」の内容は、徳倉君とかに頼った方が良さそうに思う。
「とにかく、また余計な騒ぎになる前にさっさと行け!」
シッシッと犬猫を追い払うかのような仕草付きで言われた。
でもマルチーズな万智先輩だから、あんまり怖くないっていうか、むしろ微笑ましい。
「はい、じゃあ失礼します」
私は先輩である二人に一応挨拶をして、神高と入学式があるという体育館に向かう。
その背中に、姫様の視線が注がれているように感じるなんて、きっと自意識過剰なんだろうな、うん。
そういうことにしておこう。
でもなるほど、学園長の言っていた「特別」の意味がなんとなく分かった気がする。
ヤンチャで喧嘩に強そうな鴻上先輩はともかく、姫様も絡むと面倒事になるっていうわけか。
そんなひと悶着があった受付が見えなくなった頃。
「ほわぁ、なんかスゴい人たちに絡まれちゃったね」
「ヒヤッとしたぜ、全く」
徳倉君と松川君がいつの間にか追い付いて、こちらへ寄って来る。
「キミタチ、助けてくれてもいいんじゃないですか?」
ジト目で見る私に、二人は両手を合わせて謝ってきた。
「すまん、だって女子の集団って怖くねぇか?」
「よくあの女子達に切り返せたねぇ」
徳倉君と松川君の言葉に、私は「まあねぇ」って受け流す。
女子の集団が怖いというのは、本当は女子である私の方がわかっているだろう。
女子って一人だと普通の人でも、群れるとすごいパワーを発揮するから。
良くも悪くもね。
こういうことに田舎者も都会者もないってことが、ネットを見ているとよくわかる。
っていうか徳倉君も松川君も、姫様に見とれてはいなかったんだね。
他の男子はそんなことより、姫様の可愛さにボーっとしていたのに。
慣れているからかな?
でもそれを言えば、初等部からずっと一緒な他の面々も同じなはず。
単に好みのタイプじゃなかったとか?
まあ皆が皆、可愛い系が好きなわけじゃあないだろうし。
それに姫様の可愛さよりも、ツンケン女子の迫力に引いたっていうのもあるかもね。
「あのツンケンした人、怖くないですか?
いきなり『なにかよからぬ会話をしていませんでしたか!?』だもの」
「あの取り巻きの中に、遠耳の能力者でもいたんでしょう」
私が話を振ると、黙って斜め後ろを歩いていた神高が口を挟んだ。
「だねぇ。
たぶん安城君っていうより、神高君の会話を盗み聞きしていたんだと思うよ?」
「俺もそう思う」
徳倉君も松川君も、神高の意見に同意のようだ。
っていうか、やっぱり私は神高に巻き込まれたのか?
私が疑いの視線を後ろに向けると、神高はスッと視線を逸らす。
「しかし、盗み聞きなどの他人のプライバシーを侵害する行為は、学園側に禁じられていますから。
表立って批難できないというわけです。
知らなかったのだとは思いますが、上手く切り抜けましたね」
しかも話までスルーさせたぞ。
説明せんのか、オイ。
にしても、昨日の今日でイマイチ実感が持てていないが、ここにいるのは全て、なんらかの能力を持った人たちなのだ。
気を抜くと大ポカをやらかすだろう。
とりあえず頼っていいのか不安ながら味方ではあるらしい神高と、徳倉君と松川君に能力について後で聞くとして。
ねえもう色々あって疲れちゃったし、入学式とかどうでもよくない?
既に寮に帰りたいんだけど。
並べて見ただけだとアリかなって思うけど。
ほんの一日足らずの付き合いでも、あの神高は可愛いだけでは落ちない気がする。
実際、ヤツは無関係を決め込もうとしていたし。
いや待て、もしかして案外、内緒で姫様とどっかでイチャイチャしていたりとか……ないかも。
なんかイメージが湧かないわ。
私が神高と姫様の関係について妄想していると。
「それよりお前、確か安城だったか。なんともないか?」
万智先輩にそんなことを聞かれた。
「はい? なんともってなにがです?」
なにを言われているのかわからず、私は首をかしげる。
そんな私を見た鴻上先輩が、「ククッ」と喉の奥で笑みを漏らした。
「てめぇはビビりもせずに、俺に歯向かいやがったんだ。
タダの『無能』のはずがねぇ。
そうだろう? 神高よぉ」
「さぁ? 知りませんね」
うぁ、ビビった!
私は急に後ろから声がして、ビクッと肩を跳ねさせる。
そう、いつの間にか受付を済ませていた神高が、私の後ろに立っていたのだ。
「安城、今変な顔をしていましたが。
妙な妄想をしなかったでしょうね?」
しかも微妙に鋭い。
「嫌だなぁ、神高があの可愛い子とイチャイチャラブラブだったらどうなんだろうとか、考えてもいないって」
「……馬鹿な事をほざいていると、潰しますよ」
私がヘラりと笑って告げると、真剣な顔で言われた。
潰すって、ねぇどうやって?
あ、能力でなのか。
そういえば私ってば、神高の能力っていうのがなんなのか、まだ聞いていないや。
でもこれが、公衆の面前で堂々と聞いていいものなのか、微妙に悩むな。
私が一人唸っていると。
「なんともないのなら、いいんだが。
神高、安城が無知なのは当然だろうし。
ルームメイトなら、ちょっとは色々教えておいてやれ」
万智先輩が神高にそんなことを言う。
「……そのうち、追々」
ああこれ、当てにならないヤツだ。
万智先輩もそんな顔をしてるし。
神高は親切なのかそうでないのか、そのラインがどこにあるのか分からん。
でも「色々」の内容は、徳倉君とかに頼った方が良さそうに思う。
「とにかく、また余計な騒ぎになる前にさっさと行け!」
シッシッと犬猫を追い払うかのような仕草付きで言われた。
でもマルチーズな万智先輩だから、あんまり怖くないっていうか、むしろ微笑ましい。
「はい、じゃあ失礼します」
私は先輩である二人に一応挨拶をして、神高と入学式があるという体育館に向かう。
その背中に、姫様の視線が注がれているように感じるなんて、きっと自意識過剰なんだろうな、うん。
そういうことにしておこう。
でもなるほど、学園長の言っていた「特別」の意味がなんとなく分かった気がする。
ヤンチャで喧嘩に強そうな鴻上先輩はともかく、姫様も絡むと面倒事になるっていうわけか。
そんなひと悶着があった受付が見えなくなった頃。
「ほわぁ、なんかスゴい人たちに絡まれちゃったね」
「ヒヤッとしたぜ、全く」
徳倉君と松川君がいつの間にか追い付いて、こちらへ寄って来る。
「キミタチ、助けてくれてもいいんじゃないですか?」
ジト目で見る私に、二人は両手を合わせて謝ってきた。
「すまん、だって女子の集団って怖くねぇか?」
「よくあの女子達に切り返せたねぇ」
徳倉君と松川君の言葉に、私は「まあねぇ」って受け流す。
女子の集団が怖いというのは、本当は女子である私の方がわかっているだろう。
女子って一人だと普通の人でも、群れるとすごいパワーを発揮するから。
良くも悪くもね。
こういうことに田舎者も都会者もないってことが、ネットを見ているとよくわかる。
っていうか徳倉君も松川君も、姫様に見とれてはいなかったんだね。
他の男子はそんなことより、姫様の可愛さにボーっとしていたのに。
慣れているからかな?
でもそれを言えば、初等部からずっと一緒な他の面々も同じなはず。
単に好みのタイプじゃなかったとか?
まあ皆が皆、可愛い系が好きなわけじゃあないだろうし。
それに姫様の可愛さよりも、ツンケン女子の迫力に引いたっていうのもあるかもね。
「あのツンケンした人、怖くないですか?
いきなり『なにかよからぬ会話をしていませんでしたか!?』だもの」
「あの取り巻きの中に、遠耳の能力者でもいたんでしょう」
私が話を振ると、黙って斜め後ろを歩いていた神高が口を挟んだ。
「だねぇ。
たぶん安城君っていうより、神高君の会話を盗み聞きしていたんだと思うよ?」
「俺もそう思う」
徳倉君も松川君も、神高の意見に同意のようだ。
っていうか、やっぱり私は神高に巻き込まれたのか?
私が疑いの視線を後ろに向けると、神高はスッと視線を逸らす。
「しかし、盗み聞きなどの他人のプライバシーを侵害する行為は、学園側に禁じられていますから。
表立って批難できないというわけです。
知らなかったのだとは思いますが、上手く切り抜けましたね」
しかも話までスルーさせたぞ。
説明せんのか、オイ。
にしても、昨日の今日でイマイチ実感が持てていないが、ここにいるのは全て、なんらかの能力を持った人たちなのだ。
気を抜くと大ポカをやらかすだろう。
とりあえず頼っていいのか不安ながら味方ではあるらしい神高と、徳倉君と松川君に能力について後で聞くとして。
ねえもう色々あって疲れちゃったし、入学式とかどうでもよくない?
既に寮に帰りたいんだけど。
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