私には未来が見える ※ただし生活密着型

黒辺あゆみ

文字の大きさ
30 / 42
第三話

6 計画は大切

しおりを挟む
「これから狙うは、ある程度鉢巻を稼いだ生徒ね」

このゲームの勝利条件は「鉢巻の数」。
 それは集めた数であって、自力で奪った数ではない。
 そりゃそうだよね、これは男女混合戦なんだから、自力奪取のみにしてしまうと、体力のある男子有利になる。
 それにこれは、午前中を明一杯につかってのゲームなのだ。
 最初からとばしていたら、すぐにへばるのは目に見えている。
 だから時間配分を考えて体力を温存して、ある程度数が減ったのを見計らってのスタートなのである。
 そして体力自慢とまともに張り合っても仕方がないと割り切り。
 頑張り屋さんにある程度鉢巻を纏めておいてもらって、それを今から掻っ攫いに行こうと言う作戦である。

「……なるほど。
 狡賢いというか、効率的というか。
 たかが鬼ごっこによくそこまでのめり込めますね」

呆れた様子の神高に、私は真剣な顔で頷く。

「そりゃそうだよ、だって私はぜひにも食券が欲しい!」

そして、やるからには全力で。
 これは田舎遊びの基本ルールである。
 なにせ、子どもの数が少ない地域だ。
 誰か一人でもやる気を失くすと、他の皆もしらけてしまって、遊びが成り立たなくなる。
 遊びを成立させるには、どんなくだらないことにも全力投球が大事なのだ。

「あ、神高。
 なにもしないのは了解だけど、人が多い場所まで連れて行ってくれない?
 ほら、バビューンって」

「……そのくらいはいいですが」

神高は表情を変えずに頷くと、私をまるで米俵のごとくヒョイと肩に担ぎ上げた。
 オイ、またこの体勢かい!
 お姫様抱っこも嫌だけど、もっと人らしい運び方があるでしょ!?

***

安城明日香がようやく動き始めたその頃。
 風紀委員の万智は、控室でモニターチェックをしていた。
 校舎内のあちらこちらに設置されているカメラから、レクレーションの様子が送られてきているのだ。
 今のところ、危険行為をしている輩はいなさそうだ。
 まあ今年の一年生は過激な生徒はおらず、問題がありそうな生徒といえばあの神高くらい。
 その神高はやたらと噛みつく性格ではないので、鴻上などに比べれば安全だろう。

 ――いや、そうでもないか。

 高等部になってから同室者が現れて以来、威嚇行為が見られるようになった。
 そもそもあの新入りについても万智自身、突然知らされて驚いたものだ。
 本当に新学期直前になって、急に通達されたのだから。
 そしてこのレクレーションも、その新入りのために開催されたようなものだと思っているのだが。

「安城の姿が見えないな」

そう、今回の主役ともいえる存在がどこにも見られないのだ。
 どの生徒も、『無能』はカモだと考えて探しているというのにだ。

「どこか遠くに隠れているのか?
 まあそれが賢明か」

そうだとしたら安心だと万智がホッとして、休憩にコーヒーを飲んでいると。

『うぎゃぁぁぁあ!?』

モニターから大音響の悲鳴が聞こえた。

「なんだ!?」

万智が慌てて見たモニターの一つに映っていたのは。

「神高!?」

生徒が最も集まっている校舎の上空に、浮いている神高と。

『死んだ、絶対に私は一回死んだ!』

その神高に俵担ぎされた状態で、わめいているのは安城だ。

『煩いですね、君が運べと言ったのでしょうに』

『そうだけどさ!
 あんなアクロバットをする必要ってある!?』

『ほんの少々コントロールが狂っただけでしょうに』

『絶対嘘だぁ!?』

二人はカメラに拾われるくらいの大声で、呑気に言い合いをしている。
 堂々と姿を晒していることもあり、きっとすぐに生徒が集まってくるだろう。
 いくら神高がいるとはいえ、もみ合いになる事は間違いない。

「隠れてやり過ごすのではなかったのか!?
 馬鹿な事をしやがって!」

万智は即座に近くにいる風紀委員に連絡を入れ、攻撃行為を見張るように伝えるのだった。

***
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

処理中です...