私には未来が見える ※ただし生活密着型

黒辺あゆみ

文字の大きさ
38 / 42
第三話

14 タイマン勝負です

しおりを挟む
急遽、私と噛みついてきた二位君とでタイマンをすることになった。
 場所は、講堂の隣の体育館だ。

「なあ、どっちだと思う?」

「普通に考えりゃあ、木村だろう」

「一応、学年でも強ぇ方だしな」

「けど、あの新入りもわかんねぇぞ?」

「純粋に腕っぷしが強いみたいだしな」

ギャラリーがザワザワしているのが聞こえる。
 うむ、前評判は半々といったところか。

「安城君、気を付けてね?
 あ―心配ぃ!」

「木村は結構ヤベェヤツだからな」

駆けつけてくれた徳倉君と松川君が口々に言ってくる。
 あ、木村っていうのは、あの二位君の名前ね、私も今知ったけど。
 それはいいけど、ヤバいってどのくらい?
 どの方向で?
 私が聞いてみると、松川君が真剣な顔で言うには。

「木村は、カマイタチが得意な風系の能力なんだけどな?
 力が強いんで手数が多い上に、それで血を流させるのをなんとも思っていない」

「……ほう」

そりゃあ、危ない方向にヤバいヤツっぽいな。

「今日のゲームでもね、木村君に万智先輩からの指導があったんだけど、なんだかんだで残っちゃって」

徳倉君がそんな情報を教えてくれる。

「なんでまた残ったの?
 万智先輩、そういうの駄目だって言ってなかった?」

それが流血沙汰って、あからさまにアウトでしょうに。
 この疑問に、松川君が説明する。

「木村が出した怪我人は、全部姫様が治しちまったんだよ。
 誰も怪我していないんだからいいだろうとか、頑張っている人を邪魔するなとか、姫様軍団がやいのやいの言っている間に、木村がバックレた形だな」

おおぅ、姫様がここで出てきたよ!
 実はあんなに忠告されていたけど、女子軍団にあんまり遭遇していないんだよね。
 最初の頃に二回くらい会ったけど、すぐに避けられるようになった。
 能力っぽいことをされても、なんだか当たらなかったり、発動にミスされたりで、実害はほぼゼロだったし。
 そうなると勝負は体力と腕力でになるわけで、ここのいかにも都会っ子な女子にはわたしが怖かったのかもね。
 まあそんな女子事情はいいとして。
 木村君が怪我をさせた相手が治ったのは、いいことなんだろうけど。

「なるほど、木村君とやらは、暴力を振るうことをなんとも思っていないと」

実に、私が嫌いな人種だな。
 田舎で、幼馴染のガキ大将君とは数えきれないくらいにケンカしたけど、彼はわたしとのケンカ以外で、暴力を振るうことはなかった。
 それは、暴力は自分も痛いんだと知っているからだ。
 けどここみたいな能力でのケンカだと、その痛さは直接自らに伝わらない。
 だから血が流れても、どこか画面越しのゲームを見ているようで、現実的ではないのかもしれない。
 でも、血が流れることは、痛いことに決まっているのだ。

「それはそれは、本気でオハナシアイをしたくなりましたね」

私はペロリと舌なめずりをする。
 私の隣にずっといる神高は、アドバイスみたいなことをするでもなく、相手サイドをじっと見ている。

「見てろ、泣いてもぜってぇやめてやらねぇ!」

「……まあ、木村なら大丈夫か?」

「気ぃつけろよ? 安城って得体がしれねぇぞ?」

「なんだテメェら、『無能』ごときにビビッてんのか? ダサッ!」

友だちの男子とそんな会話をしているけど。
 ま、ナメてもらえる方がこちらとしてはありがたいね。

「では両者位置について、向かい合う」

レフェリー役をするらしい会長の声が響き、わたしは一人示された場所まで進む。
 すぐ近くに万智先輩が待機しているのが見えて、私がそちらを見てニコリと笑うと、万智先輩は驚いている。

「けっ、余裕ぶってんのは今だけだ」

正面の立った木村君がなにか言っているけど、こちらが特に気にすることはない。

「では確認するが、勝負は三分間。相手が降参する、行動不能で勝負を決する。
 あと、タイムアウトになったら自動的に試合は終了だ」

会長が勝利条件の確認をするのを、木村君が馬鹿にした顔で聞いている。

「会長、意味ねーよ、んな説明。
 だってソッコーで決まるし!」

ニヤニヤ顔の木村君に、わたしもニッコニコ顔で頷く。

「そうですね!
 あっという間ですよね!」

「はぁ!?」

木村君は馬鹿にされていると思ったのか、顔を真っ赤にさせる。

「決めたぜ!
 テメェは血だるまだ!」

ビシッと指をさして言っている木村君を、万智先輩がしかめっ面で、会長は謎の笑みを浮かべて聞いている。

「いいねぇ、熱い言葉の応酬合戦!
 では、そろそろ、構え……始め!」

会長の合図で、勝負が始まる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

処理中です...