迷子の竜の冒険記

黒辺あゆみ

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迷子の竜、お城に行く

愛があれば大丈夫!後編

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Sideポチ

衝撃の事実が判明した。
 王子様の結婚相手は幼い少女であった。しかも、ポチのことを犬だと思っていた。
 しかしすぐに、従者の青年に訂正されていた。

「姫様あれは長毛種竜の子供ですから、犬ではありませんよ。そのような頭が悪いと思われそうなことを、発言しないでください」

「おお竜か! 竜の子供は初めて見るのじゃ!」

少々口が悪い従者の発言をさらっと無視するお姫様。いつものことで慣れているのかも知れない。

「ポチっていうんだよー」

見つかってしまっては、隠れていても意味がないので、コニーがその場に立ち上がる。

「竜のくせに変な名前だな、乗ってみたいぞ!」

お姫様から前のめりに言われ、コニーが一歩下がった。

「姫様相手は太っていても竜、かじられても私は責任をとりませんのであしからず。
 どうでしょうか、姫様は騒がしいお子様とは思いますが、ここはひとつ大人になって、思いで作りと思っていただけると幸いです」

従者の青年から、悪口交じりに丁寧にお願いされてしまった。

「ポチ、乗っけていく?」

「というより、すでによじ登られているのである」

コニーに尋ねられるよりも先に、お姫様がポチの毛皮を掴んで背中に登ろうとしていた。それを従者の青年が止めないので、騎士たちも困惑気味だ。
 ポチの背中に登り切ったお姫様が、そのまま降りないので、ポチはお姫様を背中に乗せて城を歩くことになった。

「なんか、思ってたのと違うね?」

「うむ、どっちかというと悪ガキなのである」

ポチはコニーとそう言い合う。子供を乗せるのは、村でよくやることであるのでかまわないのだが、できれば背中の羽の毛をむしるのは止めて欲しい。

 ――ハゲたらどうしてくれるのだ。

 そうして、王子様が待っている部屋へと向かった。
 部屋の前にはピートがいた。どうやら出迎え役らしい。

「にーちゃーん!」

コニーがピートの元へと走って行ったが、お姫様を乗せているポチは走るわけにはいかない。
 コニーとピートが言葉を交わすと、ピートが腹を抱えて笑い出した。ひーひーと苦しげな声が聞こえてくるほどの大笑いである。

「あの者はなにゆえ笑っておるのじゃ?」

「何か彼にとって面白い出来事があったからだと思われます」

ポチの背中で、お姫様と従者の青年が、そのようなやり取りを交わしていた。

「ひー、ぐはっ、えー、ようこそ。王子様は中にいらっしゃいます」

ピートは無理やり笑いを飲み込んで、なんとか挨拶らしきものをした。

「おお、そうか」

お姫様はそこでようやくポチの背中から降りた。

「竜の子よ、感謝する。この羽根は宝物にするとしよう!」

にっこり笑顔のお姫様。なんと、お姫様に背中の羽根を五枚もむしられていた。あとでコニーにハゲていないか確かめてもらおう。

「あのひとロリコンか! あー笑えるー、ひー」

ピートはまだ笑っていた。

Sideコニー

いよいよ王子様とお姫様の対面である。
 とっても広い部屋の、端と端に王子様とお姫様は立っていた。王子様の会話適正距離の五メートルである。

「殿下! お久しゅうございます!」

お姫様が王子様に声を張り上げる。優雅な会話では、なにを言っているのかわからないからだろう。しかし相手の王子様がもじもじしていて、とてもではないが会話にならない。
 そこで! コニーが考案した道具の出番である。

「お姫様、このコップを持ってー」

コニーがお姫様に渡したのは、紐がついたコップであった。そして紐の長さは五メートル。

「これは何なのじゃ?」

いぶかしげなお姫様に、コニーはにっこり笑った。

「あのねー、離れていても会話が出来る便利道具なの。今から、俺とポチで魔力を込めるからねー」

お姫様が持っているものと、同じものを王子様が持っている。
 そう、これがコニーが出した答えであった。「近くで会話ができないのならば、遠くでも会話ができればいいじゃないか」作戦である。今まで誰も気付かなかった発想の転換だった。
 道具は、以前ポチとの会話で使ったものを改良した。魔力で会話を伝達させるので、魔力のない王子様とお姫様の代わりに、コニーとポチで魔力を込めるのだ。
 王子様の持つコップには、ポチが魔力を込める。

「おお、声が聞こえる! これが殿下の声なのか?」

こうして王子様とお姫様は、初めて直接会話をしたのである。
 ――これでミッションクリアーだ!
 この結果を聞いた王様は、「そうじゃない、そうじゃないんだ……」と微妙な顔をしたという。
 しかし王様が出した条件をクリア―したため、良しとするしかなかったそうな。

この後王子様とお姫様がどうなったかというと。

「愛さえあれば大丈夫なんだよ! かーちゃんが言ってた!」

「羽にハゲができたのである……」

「もう少し大人になればいいんだよね、今はロリコンだって、ぷぷっ……」

幸せに暮らした……のかな?
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