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番外編
城編 20
しおりを挟む「ふはっ……気持ちよかった……」
いつも風呂は一人で入るのだが、今日はヤミに丁寧に時間をかけて洗われた。最初は恥ずかしかったが、髪を洗われたり、頭皮マッサージや身体マッサージが気持ちよすぎた。またやってもらうのもいいな。
風呂から出ると眼鏡を掛けたスウェンが書類に目を通しては判子を押し、紙にメモをしていた。
声を掛けていいのか迷っていると、スウェンが俺に気付き、にっこりと笑った。
「顔色も良くなったみたいですね、よかったです」
「ん、お陰さまで。遅くなってごめん」
「謝る必要はありませんよ」
スウェンは書類をさっと片付け、ひとまとめにすると手で触れ、インベントリに収納した。
これは特に珍しくはない。手で触れインベントリを思い浮かべると収納できる。ただ、出す時は、スクリーンをタッチするか、声に出す必要がある。
「ねぇ、スウェン。どうやったら無言でインベントリから出したりできるの?よかったら教えて欲しい」
じーっと見つめると、スウェンは困った表情でこめかみ辺りを人差し指でポリポリと書いた。
「話せば長くなるのですが……」
「かまわない」
スウェンは降参したように苦笑いを浮かべながら頷いた。
「わかりました」
俺が向かいのソファーに座ると、ヤミが湯上がりの水を持ってきた。
「ありがとう」
ヤミは軽くお辞儀をした後、スーと音も立てずいなくなる。
水を1口飲むと喉が潤い少し落ち着いた。
お風呂上がりの水分補給最高!
3口目をごくごくと飲んだ後、真っ正面にいたスウェンを見ると紅茶を飲んでいた。
いつの間に!
「さて、どこから話しましょうか……」
スウェンは人差し指の関節を唇に当て、じっくりと考え始めた。俺は邪魔にならないよう水をチョビチョビ飲んでいく。
どのぐらいたっただろうか。俺が水を飲みほした頃、スウェンがゆっくりと口を開いた。
「……簡潔に説明すると、私はジン殿下と少し同じなのです」
「ん?同じ?」
「はい。仲間……とは少し違いますが……」
躊躇する程の話なのだろう。眉間に皺を寄せ、唇を噛み締めている。
「……これから話すことは、主も知らないことなので、ここだけの話にしていただけますか?」
「ん、わかった」
スウェンは紅茶を一口飲むと、俯いたまま語っていく。
「……私は、この世界ではない前世の記憶を持っています」
「えっ?」
俺と同じてそう言うこと?じゃぁ、もしかして俺がいた世界と同じだったり……。
驚いた後、目を軽く泳がす俺にスウェンは苦笑いを浮かべた。
「ジン殿下の……夜見様の世界ではないですよ」
「あはは、だよね」
「……とは言いましたが、実際はわかりません。夜見様の世界と同じく魔法はありませんでしたから。前世の世界の国や名前は、残念ながら覚えていません。ただ、前世の世界で唯一無二の主君と出会いました」
優しく微笑みながらゆっくりと丁寧な口調で話すスウェンに、その主君が本当に大切な人だったのだとわかる。
「私は、とある田舎に住んでいた、しがない平民で、主君と出会ったのは本当に偶然でした……」
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