【番外編中】巻き込まれ召喚でまさかの前世の世界だったので好きだった人に逢いに行こうと思います

白銀

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番外編

城編 21

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両親を早くに亡くした前世の私は、ただ生きるだけの淡々とした日々を過ごしていた。
ある日、いつものように狩りをしていると、森の中で涙目の少年と出会った。年齢は私と同じ12歳ぐらい。

「君、どうしたの?」

私が声をかけると、少年は目を大きくさせたかと思うと胸を張り一言言い放った。

「さっ、散歩だ!」

両手を腰に当てそう言う少年を見て、すぐに後悔した。面倒だな……っと。
その子はかなりの俺様で、どう見ても迷子なのにそれを認めない。放っておいてもよかったが、服装から見て貴族の子息。関わりたくない思いが強かったが、放って置いたらそれはそれで問題になりそうだったので、仕方なく適当に相手をしながら、少年を村長に預けるべく村に帰ることにした。
その途中、黒服を着た怪しい者達に襲撃され、なんとか走り回り、狩りのために仕掛けた罠でどうにか無事に逃れることができた。
今まで森の中で襲われるなど一度もなかった……原因は言わずもがな少年だろうとすぐにわかった。
村長の家につくと、少年を探していた者……騎士が数十名いた。詳しく聞いてみると、貴族だろうと思っていた少年が、まさかの王子様。そして、なぜか王子は私のことを気に入り、「俺のところにこい!」とほぼ強制的に城に連行された。


まぁ、両親のいない私がいなくなったところで村の人は困らない。逆にお金をもらっていたので村長はウキウキだっただろう。


そこから私の人生は一変した。
毎日訓練の日々。辛く、キツく、苦しかった。
そんな中、王子は毎日のように来ては私に声をかけたり、お菓子をくれたりした。それが次第に長くなり、よく話すようになった。それは愚痴だったり、暇だから遊べと言ってきたり、城を抜け出すのを手伝えと言われたり……。


3年も過ぎれば、私と王子との仲は、大親友と呼べるものになっていた。
友達のように喧嘩したり、馬鹿なことをしたり、言い合ったり……時には王子と一緒に怒られたりと、毎日刺激のある充実した日々。
その中で変わったことが1つだけあった。それは、実力で王子の護衛騎士となったことだ。王子と仲がよかった私は、常に貴族の子息達に妬まれ、地味にいじめられていた。だが、全騎士対象のトーナメントで3位に入った時から何も言われなくなった。王子の隣にいていいのだと認められたのだ。
私はその日から、王子と一緒にこの国を、未来を守っていくのだと、強く心に誓った。


……そう、ずっと変わらないと、こんな日々が続くのだと信じて疑わなかった。


数年後、小さな事が原因で隣国との戦争が始まった。
理由は、王子の婚約者である隣国の姫。隣国の姫が結婚をしたくないと我が儘を言ったことから始まり、最終的には王子から酷いことをされたと嘘をついた。その嘘を隣国の王が信じ、戦争が勃発。
初めは優勢だったが、隣国と仲のよい国が戦争に加勢し、次第に我が国は劣勢となった。
そして、あの日……深夜に近い時間帯に不意に襲撃され、城を落とされる一歩手前に陥った。


敵はすぐ目の前まで迫ってきている。私は王子を城から逃がすため、秘密通路である城の裏側へ王子達と向かった。
秘密通路に繋がっているこの扉は特殊だ。
王子の側近と騎士は私を含め3人。私を省いた内の2人は王子にとっての右腕、左腕と呼ばれる優秀な奴らだ。
私は覚悟を決め、王子の右腕と左腕に「王子を頼む」と小声で告げると、王子達が秘密通路に入った瞬間、扉を素早く閉めた。
ガチャリ、ガチャンガチャ、ガッゴン、ガチャリ、ガゴンと聞いたことのない音で扉に鍵が閉まる。
この扉は一度閉めるとちょっとやそっとの時間では開かないからくりになっている。しかもからくりの設計上、城側、要するに、内側からしか開け閉めが出来ない。
閉めて数秒、微かだが扉の向こうから、ドンドンと叩く振動と私の名を呼ぶ王子の叫び声がうっすらと聞こえてきた。
目に熱いものが込み上がってくる。が、感情に浸る余裕はない。こちらに向かってくる敵の地響きと大声がすぐ近くに迫ってきていた。

「タダで、死んでたまるか」

ギリと歯を食い縛り、敵に向かって思いっきり爆弾を投げつけた。ドオーンと音と共に強い風が襲う。次第に感情が高ぶり、思い浮かぶできる限りの攻撃をした。


どのぐらい経っただろう。持っていた爆弾もなくなり、後は我が身ひとつだけ。
敵の前に出て剣を構えた瞬間、前方から矢が降ってきた。予想していたので数個は防げたが、それ以降は矢が体に突き刺さっていく。
痛い、死にたくない……でも、ここは絶対に守る!という感情が脳内でごちゃまぜになり、涙が溢れてくる。
矢を体に受けてなお、微動だにせず立ちふさがる私に一瞬敵が怯んだ。が、敵は勢いよく私にめがけ剣を刺した。

「……はぁっ、ごほっ」

ごほっと咳と共に血を吐き出し、意識が次第に遠退いていく中、頭上からピュルールルールルルールという鳥の音が聞こえ、私は思わず笑った。
この鳥は王子の飼い鳥で、私と王子が苦労して鳥に教えた『近くにいる』という合図だ。王子のことだ、あの後頭を切り替え冷静になり、救援を呼んだのだろう。その証拠に『うぉぉぉぉぉ!』と威勢のいい声が聞こえ、敵と救援が戦い始めた。





「救援が来ると分かった時、守り抜いたんだ!と喜んだ。だが、私はもう、死ぬ寸前。私は死ぬ間際、王子との思い出が脳裏に巡り、色々な思いが、感情が溢れ、涙が止まらなくなった。
『あぁ……生きたい……死に、たくない。王子の国を、側で……見守っていたかった……。もし、生まれ変わることが出来るのなら……来世でも……』
私は最後に、そう思いながら死んだ……」

スウェンの目から静かに涙がこぼれ落ちる。どこか遠くを見つめるような、光のない目を俺に向けて、スウェンはクスリと笑った。

「あなたは運がいい。私も前世を思い出した時から、あの世界に帰りたいと何度強く願ったことか……。あの世界が恋しくて、いつでも帰れるように、私は知識を、武術をたくさん身に付けた。あの世界にはなかった魔法もたくさん覚え取得した。……なのに、なぜ、私は、帰れないのだろう……」

俯き、顔を両手で隠すスウェンに胸がズキリと痛む。
わかる……スウェンの気持ちが痛いほど……。俺もあの頃、頭がおかしいと思われていた幼い頃、「どうして帰れないんだ!」と泣き叫んでいたことを思い出し、ズキズキと胸が痛んだ……。






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