オヤジが生まれ変わって?系救世主

無謀突撃娘

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エクリプス辺境伯家6

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 わしはミゴール・ルスード=ベンジュラム。南部諸侯連合の伯爵。一体なぜこうなったのか。

 いつもどおり酒盃に酒を注ぎゆったりとしていた。部下たちには労働をさせている。もちろん他の種族からすべてを奪い取るためだ。

 はっきりいってわしは他の種族が嫌いだ。容姿だけでなく若くていいヤツラばかりだからだ。領主であるわしの命令にも反抗的だ。

 重い税金に暴行などここではさして珍しくないし気にする必要もない。財産などはすべてわしら貴族の管理化におかれるべきもので食べ物から嗜好品までここではすべて揃う。ハインケル公爵などは公然とわしなどを非難するが軍事力でははるかに上だ。逆らうなど無意味だ。

 少し前に鬼族のシャナとかいう女を捕らえてきた。かなりの美女だが体は大きい。

「ほうほう、8大氏族のカグラ家の姫とは嬲りがいがありそうだな」

「貴様がルスード家の当主か。醜いとは聞いていたがこれほどとは。わらわにこんなことをしてただで済むとおもっておるのか?」

 わしは皮製の鞭で叩く。ひたすら叩く。

「ふん。わしらのような軍人がいるからこの国の治安が保たれているのだ。むしろありがたいと思え。こうして捕らえればなんとも無力だな」

「きさまらのようなクズが蔓延るとはもはやここはおしまいじゃな。天罰を食らうがいい」

 ひたすらに鞭で打ち据えて部下に連れて行かせる。

「まったく、このような輩がいるからこの国は良くならぬのだ。欲望のままに生きて何が悪い。伯爵であるわしに逆らうものなど滅んでしまえばいいのだ」

 完全な思い違いだが軍事力が強いこの国のほとんどは人間族というだけで優越感によっていた。

 その翌日シャナが脱走したとの報告が上がる。

「何をしていたのだ貴様たちは!」

「申し訳ありません!突然体が動かなくなり見張っていた3人ともいなくなりまして」

「もうよい!せっかくの酒がまずくなる!」

 酒盃を投げつけて追い返す。まったく、役立たずめ。それからしばらくして周囲がまるで砂のように風化していく。金で出来た酒盃も鋼鉄製の鎧も何もかもが砂となって消えていく、それが夢なのだと思っていたがどこからともなく音楽が聞こえてくる。どこかの楽士が奏でているのだろうか?それを聞いていると意識が朦朧としてくる。

「お前は誰だ?」

 気が付くとわしの目の前にはとてつもない美少女がいた。漆黒の長い髪と青黒の斬新な服装。容姿もまるで男たちの理想の中から飛び出してきたかのようだ。

 わしに愛想を振りまきにきたのか?やたら若そうだがそんなことはどうでもいい。これほどの容姿なら夜の相手として申し分なさすぎる。ベッドの上で良い声を出しそうだ。

「伯爵様?周りをご覧になってはどうですか?」

 稲妻が走るかのような外見に合う美しい声。あらゆる種族の女を見てきたがこの相手とつりあうものなどいなかった。それほどにすごい。

 同じ重さの金銀財宝などよりも重い極上の美酒。これを目の前にして味わわぬことなどできぬ。手を伸ばそうとして、

「?」

 それを止められる。

「わらわを覚えておるか?」

 こちらも目を見張るような美女。ほのかに甘い香りがする。夜の相手を交代でさせようと思う。

「ふふ~。まさかこんな相手がこの世にいたとは。部下たちめやるではないか」

 その言葉のすぐ後に現実に戻される。

「その言葉はそっくり返そうぞ。わらわはシャナ=カグラじゃ。先ほどまではよくも痛めつけてくれたな」

 なんだと!よく見ると面影はあるがここまで美しくはなかったはずだ。部下たちはどこにいる?

「残念ながら援護は来ぬよ。今頃は夢の世界に行っているはずじゃ」

「ふざけ・・る・・・な?」

 周りを見ると何もなかった。極上の酒に肉。金銀財宝。屋敷から城壁にいたるまで何もかもが。

「どうなっているのだ!?」

「だ・か・ら、すべて消し去ったの。わたしの力でね」

 目の前の美少女が極めて明るそうに。

「初めましてルスード伯爵様。わたしはここより北のディングル王国より開拓団団長を任されたリーヴリル=オギルといいます。お見知りおきを」

「これは一体何なのだ!」

「説明が必要ですか?ならば説明しましょうか。あなたたちの他種族に対する暴行や略奪などが見過ごせぬから南部の町や村を回り彼らの了解のもと北へと亡命させました。もうこの領地には人間族以外いません。さらに言うともう二度と彼らは戻ってはきません。以上です」

 なんだと!ほとんどの兵員は人間族以外が行っていた!それをすべて連れて行っただと。

「娘!そのようなことをしてただで済むと思っているのか!」

「まさか。ただで済ます気がないからこうして物理的に解決しただけだよ。正直金銀財宝は回収しようと思ったけどあなたのような汚れきった金など興味がない。そんなもの、いくらでも手に入るのだから」

 言っている事が頭に入らない。

「きさま~!」

 腰の剣を抜こうとするがそれすらもない。代わりにシャナが首に刃を当てる。

「こやつの首を跳ね飛ばしてよいか?」

「その人にはここの惨状を他の領地に伝えてもらう伝言役もしてもらう。殺さないで、もっとも罪は罪。キッチリ制裁を受けてもらう」

 そうして首輪を付けられる。

「これはなんだ」

「それは罪人に付ける特殊な物。外す方法は簡単だけどあなたたちには出来ないだろうね」

 木の板を立てて何かを書き込む。

「それじゃ、さようなら」

 光の中に入ると完全に消え去った。残されたのはただ呆然とする人間族だけであった。木の板の内容は『善行を積め』だった。

 時を少し進めて。

「だから北に進軍するべきだ!ディングル王国は明確な敵対行為をした!すぐさま兵を動員して攻撃するべきだ!」

 南部諸侯連合で伯爵であるわしの頼みを賛同する者、半信半疑で見る者、あからさまに嫌そうな顔をする者、無関心をよそおう者など様々だが半分以上は攻めるべきだと賛同した。これであいつはもう終わりだと確信したがそれを寸前で止められる。

「この問題はルスード伯爵個人の恨みです。うかつに南部軍を動かすことは出来ません」

 ハインケル公爵だ。代々豊かで貿易に最適な土地の場所なのでこの国では一番の金持ちだ。当然発言力が強く商業全般を統括している財務筆頭だった。

「なぜだ!わしのなにもかもが奪われたのだぞ!ここはその愚かさを思い知らせるべきではないか!」

 その者の名前を言うと表情を曇らせるハインケル公爵。

「なるほど、それほどの力を持っているのであればこちらの愚かさを謝罪して南部の開拓を頼みたいですな。正直軍部の膨大な予算で経済は下がっているのですから。
 あと、個人的に密偵を放ち調査したのですが彼の地は莫大な資源が溢れている肥沃的な地になっているとの報告が入っています。実際に見てみたいものだ」

 その話に軍部の人間だけでなく全員が食いつく。正直金や食料はいくらあっても困らないからだ。

「だったらすぐにでも手に入れるべきでは?」

他の何人かが質問する。ハインケル公爵は静かに答える。

「わたしの予想ではかの者は『四鋼公』『五勇候』『『7傑伯』に匹敵する人物だと睨んでいる。それほどの人物が突然近場に領地を持っていることが気がかりなのだ。そのような人物が最底辺の王国に現れた。普通ならば負けるはずなどない。だが、予測できぬ相手はいつでも存在する。もしわたしの予測道理なのだとしたら多種族の大量亡命はこの南部の統治が天に逆らっているのだという警告なのではないかと」

「・・・・・・」

 正直他の種族差別は酷すぎると感じている南部貴族は黙ってしまう。

「ふん!そんなことなどどうでもいい、戦に勝てばすべてが正しいのだからな!いくらハインケル公爵といえど偉大なるお方の名前を出して士気を下げるのは困りますぞ」

 ナタリー公爵がその言葉を却下する。

「・・・お前たちは勝てるとでも思っているのか?うぬぼれもたいがいにせい!」

 珍しくハインケル公爵が大声を上げる。はっきりと数字にすればこちらは人間族だけでも5万の兵をすぐさま送れる、向こうは防衛戦だが開発途中の領地と非戦闘員の多さから物の数ではない。たとえ王国がすべての戦力を動員したとしてもせいぜい2千。勝敗ははっきりと数字として現れている。

 ルスード伯爵は無理矢理出兵に賛否を取る。5割ほどが賛同して3割が反対し残りが様子見という結果だった。

「ハインケル公爵。すでに出兵が決まりました。あなたはせいぜい後ろで大人しく眺めているといいです。豊かな土地を手に入れれば我らが正しいことが分かりますから」

 軍部の横暴さを見てハインケル公爵たちは悩む。どうか一人でも少なく戦死者が出ないようにと。
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