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傭兵家業9
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「敵の方々はどう動いてくれるかな」
ハクロウは戦場となる予定地に可能な限りの罠を張った。
えらく防備の整った陣地からどうぞ襲ってくださいという陣地まで数十もの陣を作りだし罠はその数倍用意した。ハクロウにとってはこの兵力差では致し方ない備えであった。
奴隷の子供らは全員配置済みであり後は獲物が来るのを待つばかりの状態である。
そして、ついに王国軍が到着する。
「どれどれ」
双眼鏡で確認する。
予想どうりというか兵は稚拙としか言いようがなかった。いや、そんな言葉ですら甘いとしか言いようが無いほどに腐っていた。戦の前だというのに陣地に酒の臭いが充満していた。それ以外にも言いようの無い臭さ、女もいるようだった。まぁそういうことだろう。不恰好な進軍と不似合いに光る装備にウンザリしそうだったがさらに面白いことにまだ陣地を構築していないにも関わらずに悠然としている騎士らとそれの側で甲斐甲斐しく働く人たちの多いこと多いこと。
マジで自分のことすら出来ない愚か者の集団でしかない。
自分だって最初は野営なんて出来るとは思ってなかった。しかし自分より年下の子供が我慢してる事を年上の自分が我慢できないなどと言えるはずも無い。四苦八苦したが3ヶ月も経つ頃には自分の事は自分で出来るようになった。だけど相手はその努力すらしようとしない。最初から最後まで他人に命令している。
よくこれで誉れ高き騎士だとか正式な軍の兵士などと言えるな。正直言ってイラついて仕方が無い。
だが、自分が決着をつけることは出来ない。それは後から来る獣人国の兵らがやることだ。
正直に言えば敵を針の一刺しで壊滅状態まで追い込むだけなので何かの不注意で予想外の出来事が起こってもおかしくは無いと説明はしてある。しかしその後のことには一切の責任は持たないとも。
「(下手をするとここが別の意味で『地獄』に変わるかもしれないなぁ)」
自分にはある程度の予想は出来ているがそれは誰にも伝えていない。それが起こってもおかしくないからだ。その答えに行き着いていない神々のほうが馬鹿でしかない。戦の歴史の中に確実にある残酷さ、それを確認するにはいい機会なのかもしれないな。
「ハクロウ」
カインらが命令を終えて戻ってきていた。
「お疲れ様だけど状況は予想より有利だ、思う存分暴れてもらうよ」
「了解しました」
『ガーガス・オルタネイト・システムマスター』を起動し情報を更新する。敵の行動を計算し判断し対応し処理する、ただそれだけ。無機質で冷たいそれは戦闘のためだけに構築された処理装置。有用か無用かは意見が分かれるだろうがこの世界においては有用であった。
「各自、行動しろ」
後に起こることを予測していながら命令を下す。
この戦場はあと少しで死体で溢れかえるだろう、それだけに留まらずさらに地獄を生むかもしれない。
だけど、自分は指揮官でありその下にはどうなるのか分からない子供らが大勢控えている。その子らを戦わせておきながら綺麗事など口が裂けても言えないのだ。偽善だろうが身勝手だろうがこの世界で生き抜くには泥を被るしかない。
「(ハクロウ、敵は第1陣地と第2陣地に突入しました)」
「よし、そこはそのまま放置して第3陣地以降へと移れ」
この陣地には食料しかない、そう撒き餌なのだ。
一番最初の陣地なのに食料などしか無いと見れば先を競って奥深くまで進軍してくるだろう。
予想どうり敵は我先にと次の陣地へと進軍した。
「(敵は第3陣地から第6陣地まで突入しました)」
そこに用意してあるのは布地や金銀などだった。
高級そうなものはここに来る前にあらかた買っておいていたのだ。これは敵を釣り上げるための餌つきの釣り針、一度食らいついたら引き上げるだけである。
「(それにしてもよく食いつくなぁ、まぁ好き勝手に取ってくれって言ってるんだからそうだけどもうちょい疑うという事をもてないんだろうか。馬鹿みたいに飢えた群れ、いや、もうクズの群れといったほうがいいか)」
目先の私利私欲を満たす事しかないクズどもの姿を想像しながら戦の残酷さを思い知らせようと決意する。かなりの金額を出費したが前払いの報酬で元は取り返しているし敵の残していく物資を回収すれば大黒字は間違いない。
翌日となるとさらに望ましい状況となる。
「(うわ、将軍から一兵卒までどころか傭兵や従者まで陣地に入って取り合いを始めたよ。そんなに給金が悪いのかね?それとも戦争という状況下だからか。無秩序な軍勢は欲を煽ると無法者でしかない)」
敵はヴァトラー公爵とごく一部は統率されていたがそれ以外は全部欲に飢えた獣に成り下がった。これでは正規軍ではなく数が多い山賊としか見えないだろう。その姿を見てわずかばかりの良心が消え去ってしまった。
「(ハクロウ、敵は分散し手当たり次第に陣地を攻めるようです)」
予想どうりの報告、相手は味をしめて指揮系統は無くなっていた。大軍のままでは異変に気が付けば防備を固めてしまう、しかし分散させてしまえば個別に撃破出来る人数まで下がってしまう。これを待っていたのだ。
「全員、交戦を許可する。陣地の罠が作動を確認したら殲滅しろ!」
指示を出す、甘い夢はもう終わりだ、これからは悪夢を見てもらう。
まずは第7から第11陣地に侵入してくる敵を片付ける、先ほどの甘い罠など一つも無い。
~王国軍の名もなき兵士視点~
「おっ、宝箱発見!」
自分は天幕の中でまだ開けられていない箱を見つける。獣人国は多数の陣地を構築しており侵攻は難しいと思っていたが中には誰もいなかった、代わりにあったのは食料などの物資でありこれがかなりの量があった。それを知ると上位騎士らは我先にと群がり所有権を主張する。
だけどのその食料は相当な量があり下級騎士らまで分配してもなお余るほどだった。
そして次の陣地へと侵攻すると高価な布地か金銀がドッサリ。最初に入った連中の中には何があったのかを誤魔化すのが多数いた。どうせ騎士らは俺たちには何も渡さないだろうから誤魔化したって不思議じゃない。
何人かの兵士が隠し持っていたのを見つかり殺されたがこれだけ美味い状況なんだ、それを騎士ばかりに取られるのは面白く無い。
そして次の日は分散し目に映る全ての陣地を攻める事が決定される、馬鹿な指揮官がありがてぇ。これで略奪を咎められる事は無いだろう。
そして宝箱を見つけた時に戻る。
「おい、これは俺のだ」
後ろから騎士が来る。チッ、タイミングが悪い。残念だが兵士より騎士のほうが上なので渋々宝箱を諦める。
そして騎士は何の迷いもなく宝箱を開いた瞬間、
『チュドーン!』
猛烈な爆音が上がった。
「な、なんだぁ?」
宝箱に手をかけた騎士の全身が黒焦げになっていて絶命していた。
すると辺りじゅうから同じ爆発音が続けて上がる。急いで天幕の外に出ると、
「ギャァァア~!」「グフゥ!」「ヒィッ!」
四方八方から矢が飛んできていた、敵の伏兵だ!
「落ち着け、陣形を組んで耐えるのだ!」
指揮官の中位騎士は自分を含む生き残りを集めて防御陣形を組むが飛んでくる矢は盾や鎧を軽々と貫通する。一体どんな装備なのか全く分からない。王国軍でもこのような強力な装備は開発されていなかったからだ。絶え間なく続く矢の攻撃に仲間はあっと言う間に死んでいき残ったのは自分と騎士僅か30人ほどになる。
矢による攻撃がそこで止まる。
「?」
ワケの分からない状況で、子供が20人ほど現れる。全員が槍と皮鎧で身を固めていた。
「おお、よくぞ助けに来てくれた!」
どれだけ空気読めないんだお前は?こんな状況で都合良く助けが来るはずが無いだろう。しかも子供なんて来ている王国軍にはいない、どう考えても敵だろうが。多分降伏を言い渡しに来たのだろう。だが、この子供ら全員はこちらを醜い汚物でも見ているかのような視線をしているのはなぜだろうか?
「単刀直入に言う、降伏か?抵抗か?」
一人前に出てきた子供らから出る簡潔な言葉。
「早く我らを敵陣から連れて逃げるのだ!褒美は木札で出す」
その言葉と同時に子供らは全員が槍を構えた、つまりそういうことだ。俺には子供らが死神にしか見えなかった。
「な、何を考えておる!我らは王国の騎士だ!」
ほれ、さっさと助けろ、と。声高に言うが槍先はこちらを向いたままだ。
「話が分からないのか?」
子供らはひたすらに淡々とした口調だった。それで分かった。王国軍でも獣人国軍でもないからだ。何が目的か分からないがこの様子では大人をまるで信用して無いのをハッキリと感じる。
「このガキが!さっさと俺らを連れて逃げろってんだよぉ!」
一人の騎士が激昂しながら剣を抜いて襲いかかろうとした。
「降伏は不可能と判断」
武器を抜いた騎士の胴体を数人分の槍で突き刺す。それで騎士は血を口から噴き出して絶命した。
「な、何をするか!このクソガキが!」
それを切っ掛けに俺以外全員が殺気立つ。そして武器を抜く、オイオイこの状況でそんなことしたらどうなるかなんて一つしかねぇだろうが。
「警告を無視した、脅威と断言する」
馬鹿どもらが、装備を捨てて恥に耐えて命乞いすりゃ助かるかもしれないってのに。騎士どもは全員華美な装備を抜いて攻撃したがあっけなく武器を弾き飛ばされてしまう。槍を突きつけながら子供らは言った
「最後の言葉を聞く」
「ヒ、ヒィッ!偉大なる神よ、この愚かなる者に神罰を!」
恐怖に怯えながらの最後の言葉がそれか?今更神に祈って何になるんだろうなぁ。全員が恐怖に怯えてワケの分からない事を大声で叫ぶ。
生き残れるかもしれない可能性を放棄したのはこっちの方だ、これではどうしようもない。こいつらと一緒にいたばかりに生死の境目に立たされてると思うと王国はもうダメだって思うわ。
賄賂ばっか貰う事に熱中して訓練すらまともにしようとしない後ろ暗いヤツらに味方してくれる相手がいるとは思えねぇけどな。そうして武器を抜いた全員が槍衾で貫かれて死んでしまった。生き残ったのは俺だけだ。こりゃ人生終わったかねぇ。
「お前は、戦うか?降伏するか?」
血で濡れた槍先をこっちに向けてくる子供らしからぬ無機質な口調。こんな子供なのに戦闘経験が遥かに違う。殺人を犯しているにもかかわらず平然としている。ハッキリいって異常な光景でしかない。だが、まだ話しかけてくれるってことは何とかなるかもしれねぇ。人生最大の博打だが上手くいってくれ!
「あ~、俺はこいつら愚か者と同じことになりたくはねぇ、命だけは助けてくれねぇか。装備は全部外すしどんな命令でも従うからさ」
降伏する証として武器と防具を全部外してバンザイし心臓を相手の武器の前にさらす。王国軍式だが通じるだろうか?
すると槍先を下に降ろした、どうやら上手くいったようだ。
「分かった、降伏を受け入れる。殺した相手から装備などを回収する作業を手伝ってもらう。物資の集まっている場所の情報も欲しい。それが終わったら包囲から脱出できる道を教える」
非情ではあるが無情ではない相手で助かった、俺は手持ちの情報を洗いざらいぶちまけて子供らの命令を聞く事にした。王国に戻ったら「わが身可愛さに味方を売った」と言われるだろうがこんな状況で抵抗なんて出来っこない。愛国心が無いわけじゃないがそれも生きていればこそだからな。
そうして生き残りの捕虜を集めて元仲間の大量の死体から装備などを剥ぎ取る作業を言い渡される。改めて確認すると死体がそこらじゅうにあるな、それだけ敵が優秀って事なのだと改めて納得する。そんな地獄をこんな子供らだけで作り出してるなんざ誰でも恐怖するな。
(死体漁りなんて誰もが嫌がることだがやるしかねぇなぁ)
俺以外にも生き残りがそれなりにいて同じように装備の剥ぎ取り作業をしている。周囲には監視役の子供らが多数いて逃げようが無い。改めて見ると見た事も聞いたことも無い装備をしている。物言わぬ死体からボロボロになりかけた装備を無心で回収する、正直言って吐き気がするがここで逆らおうものなら愚か者の後を追うことになる。そんなのは真っ平ら御免だ。
大量に死体があるため手が休まる事は無い、重い鎧を始め回収できるものは全て回収させられる。全員が疲れ果てるギリギリの所で装備を剥ぎ取り終え一箇所に集める。子供らが触れるとそれらは突然消えてしまった。魔術などによる【収納】か?なぜこんな子供らが使えるんだ。かなり高度なものだぞ。
しばらく休息し他の場所でも同じように死体漁りを行なっていく。ざっと数千人分の装備がそうして回収された。
「よくやった。約束のモノを出す」
それは紙に書かれた地図だった。だが、かなり良く出来ている。ハッキリいって王国軍が持っているのより遥かに緻密で詳細だ。絵には白い線と赤い線が書かれていた。
「白い線は生道、これを辿れば逃げられる。赤い線は死道、これを辿ると必ず死ぬ」
そうして子供らは去っていった、どうやら後はこっちで何とかしろと言う事か。
「お前ら、さっさと退却するぞ!もう勝敗は決まってるんだ。命が惜しかったらさっさと退くぞ!」
俺は生き残りの仲間らに号令をかけて地図に従って逃げた。子供らの言葉に嘘はなく何の攻撃も受けずに戦場から脱出する事に成功したのだった。
「なぁ、これからどうする?」
生き残った仲間は500人ほどだ。騎士身分の者は殆どおらず兵士階級が大半だった。他の仲間は奥に行っちまったから連絡を取りようがない。俺の判断だと死ぬか捕虜となるしか選択肢が無いだろうな。
そう考えていると後方から砂煙が見えた。
「おい、お前達は先に突入した兵士達だな?なぜこんな所にいる」
旗を見るとヴァトラー公爵様の軍勢と傭兵らだった。
「お、俺らは、その」
敵に命乞いをして助けられた事を簡単に説明した。
「そうか、詳細な報告をするから公爵様のところまで来て貰うぞ」
そうして公爵様のところまで行き自分らがどれだけ危険な状況であったのかを可能な限り説明した。
「・・・戦場はそれほど酷かったのか。恥と屈辱に耐え死線を潜り抜けてよくぞ生還した。そなたらは王国の勇士だ」
感激の言葉を送られた、捕虜として生かされたにもかかわらずどうも不自然だった。公爵様は敵が何者であるのか何か知っているのか?
「あの、俺らは、どうなりますか」
このまま帰れば罪を問われるのだが公爵様は、
「それほどの地獄から生還したのだ、悪いようにはせぬよ。此度の戦いは王国の傲慢から始まった事でありそれに巻き込まれたそなたらに罪は無い。ワシが王国に提出する資料を書き助命しよう。職を失ったのなら家族とともに来るが良い」
そう約束してくれた。
「あ、ありがとうございます!」
生き残り全員が涙と鼻水を流しながら生きて帰れたことを喜んだ。
「カイン、状況は?」
「ハクロウ、こちらは片付きました。次の戦場に向かいます」
「分かった。でも、回収できる物は全て回収するように」
「はっ」
仲間らに命令して捕虜とした者らを働かせて騎士や兵士の遺品の回収作業をし終えたとの報告。クロスボウの攻撃でボロボロだが鋳潰して装備や資源として再利用するそうだ。訓練どうり死体から装備を回収させていく。
冷酷無情に敵を殺したがカインにも人としての感情はある。奴隷が騎士を殺すのはこの上ない罪であり普通は出来ない、出来ないが今までの事から忌避感が薄くなっていた。ハクロウに出会うまで色々な人から暴力を受けたがそれが奴隷の普通なのだと諦めていた。ハクロウと出会って最初はただの玩具だと思った、金持ちの気まぐれと。
しかし、ハクロウはすぐさま傭兵となりモンスター討伐や護衛などを受けるようになる。自分らに武器や防具を与えて戦い方を教えてくれた。美味しい料理だって食べさせてくれたし負傷したら傷薬も出してくれた。水浴びだってさせてくれる。
日々の訓練は過酷だったがこの世界には脅威が満ち溢れている、それを考えればこの訓練は必要不可欠だ。
もうすでに奴隷から解放される金額を積み立てているが奴隷から解放されるという考えはどこにも無い。例え開放されたとしてもこんな子供では仕事にありつけずまた奴隷となるか山賊にでもなるしか無いだろう
カインは小さい頃から一軍を率いる優れた将になることを心の底から望んでいた。だけど平民出でありどれだけ活躍しようともそれには届くことは無い。しかし、ハクロウは違う。自分には「将としての才能がある」と言ってくれたのだ。
仮想戦場で戦いを続けていき最優秀に入ってはいたがハクロウ相手ではやはりまだまだ子供なので負けてしまう。
奴隷の子供らが増えていき、自分には小部隊長となり槍を装備した兵をある程度自分の裁量で動かす権限を与えられている。
「軍人と言うのは育成にとにかく手間と時間がかかる。高度な基礎教育と経験豊富な補佐する人がなければ100人ですら動かす事が出来ない。いきなり苛酷な道だけどがんばって」
奴隷に命令を出す『ガーガス・オルタネイト・システム』は有能なものが使えば凄いが無能であるのならこの上ないお荷物にしかならない。
実際カインは命令を出しても全てが必ずそう動く事ではない、何らかの理由によって齟齬が生じる事も分かってはいたが、相当に苦戦した。
初期の頃は散々であり無駄に負傷者が出てしまう始末。でもそれでもハクロウは、
「指揮官とはそういうものだから。一緒に前線に出るか、後方で指揮を出すか、それはまだ分からないけどこれを乗り越えられないなら一軍を率いるなんて夢の夢のそのまた夢。諦めたほうが幸せだともいえる」
死者や負傷者を出さずに戦を制するなど夢物語だと軽く笑っていた。それでもなおハクロウは戦死者どころか負傷者すら全く出していない。
そのことからカインはますますハクロウを尊敬するようになった。憧れていた姿に限りなく近い人物として。
「ハクロウ、自分にはどれぐらいの人数を統率できる指揮官になれますか」
「軍人は基礎教育と訓練と補佐する人間がいれば数百人を指揮できるようになるのはさほど難しくは無い、けど1000人以上だと高度な教育を受けていなければ不可能。さらに多く統率できるかは個人個人違うからどうなるかは判断が難しい。自分の教育を徹底的に受けて10年頑張れば最低1000人は統率できると考えている」
そのためのシステムは構築されていると断言した。
(まずは1000人を指揮出来る能力を手に入れることと優秀な部下の育成を最優先でやらないといけないな)
この言葉で自分の明確な未来が決まった。
今後ますます奴隷の仲間は増えていくだろう、自分らのように戦闘をするだけでなく装備製作や素材採集までやれる事は多い、別に戦闘が出来なくても良い。大人からの暴行で心に傷を負っている子供はかなり多いのだから。でも、今後を考えてある程度は大人を入れる事は考えておかなければいけないとも言ってた。
大多数の子供は貴族や大人を信用していない、でも貴族や大人でなければ教えられない事もあるとハクロウは言う。
そのあたりのことはまだ自分には分かりようが無い。それに、今はまだ500人ですら指揮出来るとは考えられなかったからだ。将来独立するにしても留まるにしてもまだ自分は子供、多少遠回りしても確実な結果を出す事が一番なのだ。もっとも一番の手柄を誰かに渡す気はこれっぽっちも無い。
(今のところギニーを貰ってもさほど必要性は感じない、衣食住は保障されているし文字の読み書きや計算も教えてもらえるし)
決まった金額を支給される騎士や兵士などと違って傭兵身分である自分に出される給金の評価は結果次第だからだ。無駄金は出せない。
(そうなると装備か個人的な特訓か。ハクロウは忙しいからお金出さないとなぁ)
ある程度の奴隷の仲間を纏めている立場なので色をつけてもらっているが将来のことを考えるといつかは自分のところまで来る相手は複数存在するのだ。そこから抜け出すには他人とは違う考えと行動をしなくてはいけないと嫌というほど知っている。
よし、この戦いが終わった後でいいからハクロウにお願い事をすることを決めるカインだった。まだまだ戦闘は続行中なので戦果を稼げるだけ稼ごうと決めてハクロウの指示に従った。
~第12陣地から15陣地近くに進軍している隊長補佐視線~
「進め進め!敵陣地には誰もおらず財宝があるぞ!」
発破を掛ける、どういうわけか敵陣地には誰もおらず物資が大量にあった、それを聞いて奥まで進軍する意見が圧倒的多数を占め偵察すら出さないまま進軍を続けていた。あれだけの物資を始めから放棄しているのだから奥にはさらにあるのだという考えである。
だが、あまりにもおかしいことを自分は薄々ながら感じていた。無秩序な軍勢でしかも欲望丸出しで進軍していく事は自殺行為なのだと。
「はぁ?お前は馬鹿だ。これだけの量の財宝が捨てられてるんだぞ!奥に行けばもっとあるに決まっている」
隊長である騎士はそう断言して無防備に突き進んでいる。
この人物はとある貴族の次男である。ハッキリいってクズでしかない。あらゆる物を親の金と圧力で買い漁り何人もの女を愛人としている。訓練にも全く顔を出さず好き勝手に飲み食らい遊びまわっていた。
取り巻きはおべっかを言うだけであり煽り立てるしか能が無いゴマすりだけしかせずそれがさらに横暴に拍車を掛けている。そんな愚か者の補佐官に任じられている自分はそこそこの経験しかないがこいつなんかより遥かにまともである。
見栄えだけの装備はしないし兵たちの心情にも気を配ってた。そこそこ人望もある。
だけどこの無能指揮官と取り巻きと配属された騎士らは『金で全てが解決できる』と勘違いのままに生きている。この戦いだって自分らの都合がよい戦功稼ぎとしか考えておらず危機感も無い。
「戦場に絶対などありませぬぞ」
いくら忠告しても右から左に通り抜けている始末、そして自分が都合の良いときだけ投げやりに動き都合が悪いときはこちらに全責任を押し付けてくるのだ。おかげで有望な若者が何名も潰されてしまったのだ。現在では除隊届けだけで数百通も積み重なっている。それすら見ようとしない。
「俺らがいりゃ王国は安泰!将来は将軍として国を動かすんだ!」
大声で笑いながら昼間から酒に溺れている姿はもはや破滅の未来を確定させていた。
自分もこんな相手とは関わるなど大嫌いだが王国の命令は絶対である、仕方なく獣人国に侵攻しているがこんな奴らばかりでどうしようというのか?
そうして進軍していると目の前に人影が現れた、だがえらく身長が低い。どうやら子供のようだが始めてみる装備を持っているな、人数は200人を少し超える程度でこちらは数千人。力任せに押しつぶせる相手である。
すると一人が剣を上に掲げ、
「攻撃を開始しなさい」
剣を振り下ろすと同時に地獄が生まれた。
ガガガガガ~!
視認出来ないほどの大量の矢が前から飛んでくる、前衛の者が盾で防ごうとしたが「はぎゃっ!」一息で事切れた。盾も鎧すらも貫通し後ろの者まで貫通するほどの強力な矢を何も無い場所でひたすらに食らう。
その攻撃は途絶えることなく続きバタバタと死んでいく者が続出、かろうじて留まった者がいるが、
「剣兵は抜刀し敵に切り込みます」
敵は無慈悲な追い討ちを仕掛けてきた。
ただでさえ先手の攻撃で混乱しているのも関わらず接近戦に持ち込んできたのだ。瞬時に間合いを詰めてきた子供らはこちらが武器を構えるのすら四苦八苦している隙を見逃さなかった。手当たり次第になで斬りにされる。
前衛となる者は全て死んでいてあとに残ったのは甘えきっていた愚か者ばかり、戦いになどなるはずがなかった。抵抗の意思を示す者は獲物となり次々と殺されていく。子供らがこちらを制圧してしまうのに大した時間はかからなかった。
「降伏してこちらに従いますか?」
指揮を取っていたであろう一人の少女が発言した。
「ふざけるな!俺らは王国の騎士でしかも貴族の子だ!未来の将軍だぞ!このような屈辱にあわせておいて絶対に許さんぞ」
生き残りは僅か400人にまで減らされてしまった、それでも指揮官は反抗する。
「あなたがこの部隊の指揮官ですか?」
そうだ、と答える。
「なら、この状況になったのにはあなたに全責任がありますね」
その責任を取ってもらいましょう、と。
「右手か左手の手の甲を上にして地面に置きなさい」
「?」
意味が分からないがそうすると少女は持っていた剣で「グサッ!」と剣先を手に突き刺した。
「ぎゃあああああぁぁぁ!」
指揮官は悲鳴を上げるが少女は気にする事もなく剣をグリグリと動かしさらなる苦痛を与える。
「あがががががぁあぁ!」
痛みのあまり指揮官は失禁してしまうが少女は何も気にせず平然としている、なぜこのような子供がこんな事が出来るのだ?手に突き刺した剣を動かすのを止めて再び質問してくる。
「降伏しますかしませんか答えてください」
「このクソガキが!殺してやる、犯してやるぞ!」
怒りに満ちた指揮官だがこの状況では何の意味もない。また同じように剣をグリグリと動かす。そして同じように悲鳴がこだまする。それを三回ほど繰り返した。
「言葉が通じるなら素直が一番ですよ」
「ぐぞぉ、グゾォ」
涙をとめどなく流しながらも指揮官からは降伏の意思を示そうとしない事に少女らの嫌悪と殺気は膨れ上がる一方だった。
「仕方がありませんね」
少女は側にいた数人の子供に命令して指揮官を拘束して剣を持つ少女の前に顔を突き出させる。
「な、なにを、する気だ?」
拘束した子供らは兜を脱がす、そして地べたに押さえつける。
「あらあら、そこそこ良い顔ですね。ですが、邪魔な物が付いていますね」
「な、なに、を」
少女は剣先を顔に向けている
「まずはその耳を切り落としましょうか」
「!?」
あまりのことに周囲の全員が絶句する。
「や、止めろ!」
「大丈夫ですよ、この剣凄く切れ味がいいんですから」
サクッ、ボトッ。アッサリと右耳が落とされた。
「がぁぁぁあああ!」
痛みのあまり暴れようとするが子供らに押さえつけられて身動きが取れない。
「片耳だけではバランスが悪いですねぇ」
軽く剣を振るって血を落とすと再び残った片方の耳の所まで刃を向ける。
「やめろ、止めてくれ!」
「捕虜のくせに何を言っているのですか?反論などで出来るとでも?この無駄に死んだ者たちの責任を取るのなら切り落としませんが」
「ふ、ふふ、ふざけるな!この極悪人が!」
罵詈雑言を上げるが少女の表情はこの上なく冷め切っていた、処置無しと。
「反抗的過ぎますねぇ、残りの耳も必要ないでしょう」
そうしてもう片方の耳も落とされた。
「ひぁっ!ヒァッ!」
耳が無いことは王族から奴隷まで大きな罪を犯した者への罰だ、これをされると問答無用で誰からも相手にされなくなる。少女とその仲間はうっすらと笑みを浮かべながらこちらを見ていた。切り落とした耳を持ちながら。
「装備を全部外しこちらの命令に従うなら生かしておきます。しかし、逆らったら全員の耳を落とします。それでも抵抗するなら死んでもらいます。どうしますか?」
この少女らが本気である事を目の前でマザマザと見せ付けられもはや抵抗など無駄だと判断した。もう打てる手は一つしかなかった。
「降伏いたします」
「副隊長!」
かろうじてワシを信じてくれる者らを無意味に死なせる事は出来ない。
「我らが助かる余地はもう無い、ならばどのような形でも生き延び王国に帰還する事が最優先だ」
こちらが逆らわない限りは生きて帰れる可能性が残っているのだ、それをむざむざ捨てるなど許されない。
「俺は降伏などせんぞ!我らにこのようなことをするこいつらをみな」
言葉が最後まで続く事はなかった。少女が剣を指揮官の口に突っ込んだのだ。バキンと歯が何本も折れる音がした。
「うるさい。黙れゴミ主が」
ここにいる全員が少女らはまるで悪魔のようにしか見えなかった。
「みんな、こいつは拒絶しかしません」
次の言葉は子供が発するなど想像など出来ないモノだった。
「まずは指を一本ずつ切り落としなさい。次に肘と膝と切り落とし最後に全員武器でメッタ切りにします。顔は原形を留めないほどに潰しましょう」
人体を効率的に解体する勉強だと。少女は年相応の優しく愛らしい表情を浮かべながら宣言した。
「ひゃ、ひゃめ、れぇ」
そうして生き残りが見守る中見せしめとして少女の言葉どうりとなっていく。
「あぐがきごがれこらぱ」
もはや支離滅裂な声しか聞こえなくなった。
「中々しぶといですねぇ」
この子らの目には何が映っているのだ?貴族をここまで痛めつければ死罪だと王国法で定められてるのだがそんなことなど全くお構い無しに殺していく。そこにあるのは怒り以外の何者でもなかった。
「全員武器構え」
剣を持った子供ら全員が号令と共に指揮官をメッタ切りにして肉の塊となり最後を終えた。
「・・・・・・」
全員が物言わぬ元指揮官を放心したまま見ている、このようなことなど始めて見たのだ。自分ですら何がなんだか分からなかったがこの子供らが本気である事は嘘偽りなかった。
「さて、生き残っている人たちは付いてきなさい」
少女とその仲間が血塗れの武器を持ちながら軽く明るい声で。全員がただただ首を縦に振るしか出来なかった。
そうして生き残りは元仲間の死体から装備などの回収作業を言い渡される。あれほど残酷に殺された指揮官を見て反抗などすれば同じ末路は目に見えている。全員無言で言われた事をひたすら行なって装備を回収し終えると魔術によるものか一瞬でどこかに消えてしまった。地図を渡され書いてある通りに逃げれば助かると言い渡される。
「あの愚か者のような目に遭いたくなかったら早く戦場から離脱しなさい」
愛らしい微笑を浮かべながら子供らは去っていった。
「副隊長」
部下が心配そうな顔で話しかけてくる、呆けている時間など戦場には存在しない事を思い出した。
「他に生き残りがいないかを確認しつつ地図どうりに引くぞ、死んだ騎士らが連れてきた従者らと出来る限り早く王国に帰還する」
何かをしようにも装備が無いのだ、これ以上居続ければ助かった命が無駄になってしまう。すばやく仲間を纏め後方にいるヴァトラー公爵の軍勢と合流することを最優先とした。
「エレン様、あれでよろしかったのですか」
「正直言ってこれぐらいで貴族などへの怒りが鎮火するとは思えませんけど多少は風通しが良くなると思います。ハクロウの指示に従い次の戦場に向かいましょう」
仲間らは全員頷く。
エレンは仲間らと共に移動していた。
エレンとその指揮下にある子供には非常に強い共通点があった。
『横暴な貴族などへの殺意と憎悪』
エレンを筆頭に構成された部隊はその感情に満ち溢れていた。
(はぁ・・・、間違いなくハクロウは分かっててやっている。理不尽な仕打ちをする人物への敵意がそう簡単に消えないってことをそしてそれが人を歪ませることを。それを少しでも解消させるために残酷な方法で殺す事を仕向けたしそれを咎める気も無いんだろうなぁ。大人よりも子供が傷つきやすい事を良く知っている)
エレンを始め仲間らには喜びだけがあった。
エレンはとある村の農家の子として生まれた、両親と弟が一人。
暮らしは貧しかったがそれに耐えて暮らしていた、しかしそれを完全に破壊するものが現れたのだ。
周辺警備と称して貴族と騎士らが村に来た。
彼らはそこで好き放題可能な限りの欲望を吐き出した、食料や酒の強奪から始まり、暴行に移り、見せしめの処刑まで、それでも耐えた村人達だった。最後に残ったのは女子供だけだった。・・・・・・後は説明するまでも無いだろう。そうして父も母も失い弟と共に奴隷商人に売られたのだ。そこそこ可愛い部類だったがこの世界は残酷であり何度か買い手が変わり最後に出会ったのがハクロウだった。
もう少し年が上だったなら一生男らの欲望の捌け口になるしか無かっただろう、最初はただの気まぐれなのだと思っていた。
『気弱そうな青年』
ハクロウを見たとき最初に抱いた印象はそれだった。
どこにでもいそうでひ弱い人間なのだと。力仕事を生業としていた父とは違っていた。この人は何を考えているのか?こんな子供ばかりで一体何をするのかと思った。
【奴隷化】され証拠となるサークレットを付けさせられた。
「奴隷使い?」
「そうだね、そうとしか言いようがないね」
あらゆる職業の中で最悪の評価であり最低の存在であり誰からも嫌われる誰からも評価されない相手だった。
「私達をどうするのですか?」
他に買われた子らも不安の色を隠せない。
「取って食ったりはしないよ、自分は奴隷を働かせる者だけどもう一つの姿がある」
そう、指揮官という姿が。そう明言した。
「まずはこの世界の状況を把握して自分らでも戦える場所を探そう」
そうして傭兵ギルドに行く事になった。
傭兵の審査項目は非常に雑だ、リーダーとなるものと呼称さえ書けばいいというだけ。もっとも有名となれば監視などがつくだろうが現時点では何も気にするような事などなかった。
「戦闘能力など最初は有り得ないから買うのは素材などを取れる道具くらいだな、調理道具とかは最低限揃えるとして・・・」
ブツブツと何か考えながら動くハクロウは非常に現実的だった。
最初から出来る事を一つずつ確認させて覚えていく事だけを望んだ。戦闘が出来ないなら出来る事で働けとも言った。美味しい食事も出してくれるし水浴びだってさせてくれるし服なども与えてくれるし安らかに眠れる場所も与えてくれる。
訓練は苛酷だがそれもこの世界で生き抜くために必要なもの、それに反論したりはしないがどうも甘いように感じてしまうのはどうしてなのだろうか?使い潰そうとしたりしないし面倒もちゃんと見てくれる、だけどなぜそこまでしてくれるのか?奴隷などただの道具程度なのがこの世界の常識なのに。
「質問があります」
率直に意見をぶつけてみる事にした。隠し事はできないが言わないといけないだろう。
「今後私達をどうするつもりですか?」
「支払った金を回収するまで有効活用する」
「支払い終わったら?」
「ここに部隊長として留まるか自分の道を探してもらう」
「奴隷などいくらでもいますが」
「可能な限り買う」
「貴族になりたいとか?」
「あんな夢物語しか見えない人種と一緒にしないで」
恐ろしく単純明快な答えが返ってくる。
「貴方の望みはなんですか?」
「手の中に納まる平和だけだよ」
「このご時世に平和など言葉だけです」
「もし言葉だけでなくなったらどうする?」
この世界がどれだけ荒れているのか分かっているはずなのに平和を願っている?そんなことなど有り得ない!
「子供だから分かりづらいかもしれないけど面倒を見るのは手の中にいる人たちだけ、他の人は利用しあう関係だけだよ」
「だからといってこの大人数をずっと面倒を見るとでも?」
「自由になれる金額を稼ぎ終わっても留まるというならそれはそれでかまわない」
もうすでに1000人を越えているのだ。戦闘行為の可能性が出ない子供らには裁縫などを教えているぐらいだから一生面倒を見るという答えも現実味がある。
「ん~、エレンの怒りももっともだと思うよ。理不尽に扱われた家族も不幸だと思える。でも、こんなご時世だからどこでもそんなことが当たり前に存在する理不尽だね。それを嘆いても仕方が無い」
だったら、そういって一呼吸入れる。
「誰も咎められない方法で復讐しないか?」
この上なく魅力的な言葉が飛び出した。
そうして私と貴族らに家族を崩壊させられた面々を率いて敵対者を一部生かしその眼前で公開処刑という方法を言い出した。
『誰にも咎められずに貴族を殺せるの?』
その言葉を聞いて戦いに参加している子供らは奮い立ったのだ。私も半信半疑だったがその機会が来るのは早かった。
「これから王国軍と戦闘をする。依頼主は王族でも貴族でも傭兵でも市民でも無い。報酬は約束されてるしこちらの命令に従うなら咎める者などどこからも出ない。敵を一人でも多く殺せ。ただし相手から降伏を言い出したのなら装備を回収させてから地図を渡せ」
そうして指揮を執ることになったが子供らからドス黒い何かが上がっているように感じてしまった。
そしてさっきの場面に戻る。
「ほら、サクサク動いて死体から装備を剥ぎ取る!」
「し、死体漁りだなんて、悪党のやる事だ」
こいつらは何を甘いことを言っているのだろうか?そりゃ遺品なら回収して遺族に渡すのが普通だが情報ではこの侵攻に正統性など無い。だけど、それでは戦った私達に報酬が無い。それなら目の前の死体から装備剥ぎ取ってもかまわないはずだ。殺した敵の装備を回収する事なんて遅かれ早かれやる事だろう。捕虜なのだから言う事を聞かなければどうなるのか分かっているのか?
今だったら腐臭がしないので手早く済むだろうし墓場に埋める必要性もない、そんなのは後から来た人たちでやって欲しい。
「死人とはいえ装備を剥ぎ取るなんて」
大人の癖にグチグチと不満ばかり漏らす。お前らだって獣人国に侵攻して略奪しようともどこかで考えていたはずだ、ただそれが逆になっただけだ。これだから甘い世界に浸りきっているお前らが最悪なのだ、負けたくせに文句など言えると思っているのか。
別に回収しなくてもかまわないが奴隷の子供らを一人でも多く買うには金が必要なのだ。どうせ私達の攻撃でまともな状態である装備など少ない。鋳潰すにしても直すにしても手間とお金がかかりすぎる。なら私達の手で回収し現金化したほうがよっぽど役に立つ。
「ウダウダいわずサクサク動く!あの指揮官の貴族のようになりたいのですか?」
私の命令で仲間全員が武器を構える。この武器の殺傷能力は折り紙付きで装備を剥ぎ取られたこの人たちには防ぐ手段など有り得ない。もし仮にでも戦おうとするならば死体の仲間入りをさせてから連れてきた仲間と死体漁りを行なえば済む話だ。捕虜全員の顔が恐怖一色に染まる。
「反論して死ぬか働いて生かされるか、どちらがお好みですか?」
『ヒ、ヒィッ!従う、従うから武器を下げてくれ!』
「よろしい、手早くお願いしますね。なにぶん戦闘はまだ続行中ですので」
口調はやさしめだがかなり残酷な命令である。
元仲間から装備を剥ぎ取って敵に差し出して自己防衛した、と。どう見てもそうとしか表現できないがこちらもお金が必要なのだ。回収できるのなら全て回収する方針である。私にはよく分からないが『奴隷予備軍』だとか『生活難民』だとかの言葉はハクロウからよく聞いている。
「まぁ、簡単に言うとそういう状態だってこと。前者は大半が子供で後者は大人が多いってことぐらい、かな。戦いなどで手足を欠損すればそれだけで生活が難しくなるだろうし口減らしのため売られることもある」
中にはそういう職業もあるのだとか。
「奴隷使いは最底辺だって認知されてるけど表現を変えれば身分を偽り非合法に手を染める輩も多いんだよね。戦乱の時代だと特に。それも一種の救済だと本人は思っている」
それで救済できるのならこんなに奴隷は溢れていない、と。
「意図的に奴隷が出来やすい世の中に動かしている輩がいるのかも」
「それに何の利益が?」
「単純に労働賃金の値下げ、とか?もしくは苛酷な働きを強制される、なのか?まぁ、その辺りの事はまだ出てこないけど普通に奴隷が売買されるという事は誰が儲かるかな。そして奴隷の価値が上がれば誰に金が入ると思う」
奴隷を売買する商人か!
「あいつら・・・」
「止めてよ!そこらにいる奴隷商人たちを切り捨ててもどうしようもないんだよ」
「でも!」
「君の怒りは分かるんだけどそれならやる事をはっきりさせようよ」
ね、と。その仮面からは表情は見えなかったが私には救世主に見えたのだった。
一人でも奴隷を買い育て自立させる。
その目標への到達には越えなければいけない巨大な壁が無数にある。それは英雄や勇者ですらいくら挫折しても足りない難行でも、
「(この人なら越えられるかもしれない)」
私はそう信じて進む事にした
「エレン、状況は?」
ハクロウからの連絡である。
「遺体からの装備の回収作業は終わりました」
負傷者はゼロと付け加える。
「『命令どうり』殺したんだね?」
「はい」
あの生贄となった貴族の指揮官への殺し方は絶対だと。あの後子供の多くが晴れやかな感情に溢れていたのをハッキリと分かる。
「あれは本当に必要な事だったのですか?」
後になって思うがやりすぎなのでは、と。
「いいんだよあれぐらいで。戦場に出てくるというのは『いつでも殺し合いをします』と明言してるんだから。生きて帰れるかなんて保障など誰もしてくれない。王族とか貴族だとかは身代金を要求できるから手荒には扱われないけどそれはあくまで『慣例』だからでしかない。状況と場合によっては理不尽な要求を出されても文句は無いってことさ」
自分らの依頼主は王国軍の排除さえすれば咎めないということしか言わなかったそうだ。その後のことなど面倒は見ないと約束している。
このままハクロウの指示どうりに次の戦場に仲間らと向かう事にした
「(敵は予想以上に突き進んでいるな。撒いた餌が美味しいとはいえここまで見境なく突撃してくるとはどこまで愚かなんだ?これでは軍隊ではなくただの馬鹿者らでしかない。こっちは好都合だけど)」
自分は状況を全て把握してそう判断した。
「(ミリオン)」
「(はい、なんでしょうか)」
ミリオンら魔術師部隊に命令を伝える。
「(新しく創り出した『新魔術』は設置し終わったか)」
「(全て完了しています)」
これでほぼ敵は詰んだことになるな。
「(ハクロウ、この『新魔術』は恐ろしくすごいのですが、その・・・)」
どうやら何か思うところがあるらしい。
「(どうした)」
「(助けられる騎士や兵士はどうしますか?)」
「(装備などは全部剥ぎ取れ)」
「(そうではなくこの『新魔術』を使えば助かる見込みが無いと思いますが)」
確かにそうだろうな、単純で簡単そして凄まじく強力だから。
「(敵に情けをかけろとでも?)」
「(どうにかならないでしょうか)」
「(敵が追い詰められて捨て身で反抗してきたらどうするつもりだ)」
「(・・・)」
反論が出てこないだろうな、どんな敵でも最後まで足掻く敵は多いのだから。だからこそ徹底的に叩き潰さないといけない。
「(ミリオン、気持ちは分かるがこの残酷な世界で誰かを救うには力が必要だ。君だって奴隷として売られている同胞を救いたいという願いがあることも知っている。それならばどうすればいいか答えはもう言っているはずだ)」
何かを飲みこむような気持ちだろうな、この世界の状況はそれほど酷いのだから。
「(敵の中に君の同胞はいない、ならば殺しても問題は無いはずだ)」
「(・・・分かっております、おりますが)」
彼女の苦悩も理解はしている。ただ彼女は少しばかり綺麗すぎる。それはそれで悪くない。平和な時代ならば良きリーダーとなれると思っている。だけど世界中で魔物が溢れ軍が役立たずのこの時代では自分の考えが甘いことも理解しているのだ。
一人でも多くの仲間を救いたいなら揺ぎ無い力が必要なのだ。
ミリオンらエルフなどは争いごとを嫌う考えの者が多い。自分のように容赦なく敵を殺しまくる考え方には賛同しづらいだろうな。だけど敵を見逃したからといってそれで終わりなど有り得ない。再び牙を剥いてくる可能性のほうが圧倒的に高いのだから。
力なき正義でも正義なき力でもこの世界の現実はどうしようもないのだ、奴隷の子供らに与えられる救いなど一握りの水と同じですぐさまこぼれ落ちてしまう。
(ハクロウの言っている事は誰よりも正しく強い、それ以外の方法が無いことも分かっている)
ミリオンら魔術師部隊は敵を迎え撃つ場所で待っていた。
同胞の仲間もそこそこいる、全員奴隷だ。エルフは長寿で見た目が良いのが圧倒的なので奴隷狩りに遭いやすい。そして欲望を満たす道具にもなりやすいという事だ。ハクロウに買われた人達も理不尽に捕まえられたのだ。
幸か不幸かハクロウに買われて共にいる。
「ミリオン、私達はどうなるのでしょうか?」
全員に不安の色が見えていた。
「ハクロウの指示に従いなさい、それ以外に与えられるものなどありません」
進軍してくる敵と戦えという命令。
「でも、私達は」
平和に暮らしていければいい、と。それだけのささやかな願い。それが叶えられればいい。だけど現実にはそんなことなど有り得ない。
エルフが住まう森などは戦火にさらされ維持していく事も困難な状態なのだ。ここに居る全員がそれを理解している上で故郷の森に帰りたいと願ってる気持ちも分かる。
だけどそんな自由はどこにも無い、それどころかもっと悲惨な未来が待ち受けているだろう。
『それならなぜ奴隷としてここに居る?』
すべては自分らの弱さと甘さからこうなっただけだ。平和主義は否定しないがそれならば自分らを守れる力を持ってから言えとハクロウは断言した。
「今ここで開放したとしてその後どうする?金も無い、力も無い、住む場所すらないお前達に与えられる選択肢など容易に想像がつくだろう」
仲間らが残酷に敵を殺す事に嫌悪しているのを見て「年齢高いくせに何子供のように駄々こねてるの?」と一蹴した。
「あんたらに神様はいるの?」
もちろんいる、森と自愛の神だ。
「その神様に頼んだら平和になるの?誰も傷つかず誰も失わず平和になる?お前らの奇跡には代償が無い、それは身勝手で夢物語の妄想だ」
「なんだと!」
「奇跡とは無条件に降りてくるものではない。お前達に奇跡が降りたらそれ以外に降りてくる奇跡は残酷なものだけだ。救いの無い弱者を食い潰して叶えるだけ。それが奇跡の正体だ」
いかなる教義にも書かれていない答えを言い放った。
「そこにお前らの仲間が入らないとは限らない。いや、入らなかったら他にいくだけだな」
「・・・・・・」
全員が絶句している。
「差別の無い救いは夢物語、公平な正義など存在しない。誰もが自分とその周りだけしか保護できない世の中なんだよ」
「・・・では、我らは・・・」
救われないのか、と。
「ここで生活して現実を見ていけ。そしてどうすればいいのか考えろ」
ハクロウはそれだけしか言わなかった。
「敵は目前まで迫っています。嫌だろうとなんだろうと戦わなければわが身すら守れません。『命令』のとうり敵を壊滅させるのです。それ以外に脱出できる方法はありませんし帰る場所もありません」
今の生活を奪われれば明日すら来ないかもしれない。ミリオンらは仲間ら共に敵を殺す覚悟を決めた。
ハクロウは戦場となる予定地に可能な限りの罠を張った。
えらく防備の整った陣地からどうぞ襲ってくださいという陣地まで数十もの陣を作りだし罠はその数倍用意した。ハクロウにとってはこの兵力差では致し方ない備えであった。
奴隷の子供らは全員配置済みであり後は獲物が来るのを待つばかりの状態である。
そして、ついに王国軍が到着する。
「どれどれ」
双眼鏡で確認する。
予想どうりというか兵は稚拙としか言いようがなかった。いや、そんな言葉ですら甘いとしか言いようが無いほどに腐っていた。戦の前だというのに陣地に酒の臭いが充満していた。それ以外にも言いようの無い臭さ、女もいるようだった。まぁそういうことだろう。不恰好な進軍と不似合いに光る装備にウンザリしそうだったがさらに面白いことにまだ陣地を構築していないにも関わらずに悠然としている騎士らとそれの側で甲斐甲斐しく働く人たちの多いこと多いこと。
マジで自分のことすら出来ない愚か者の集団でしかない。
自分だって最初は野営なんて出来るとは思ってなかった。しかし自分より年下の子供が我慢してる事を年上の自分が我慢できないなどと言えるはずも無い。四苦八苦したが3ヶ月も経つ頃には自分の事は自分で出来るようになった。だけど相手はその努力すらしようとしない。最初から最後まで他人に命令している。
よくこれで誉れ高き騎士だとか正式な軍の兵士などと言えるな。正直言ってイラついて仕方が無い。
だが、自分が決着をつけることは出来ない。それは後から来る獣人国の兵らがやることだ。
正直に言えば敵を針の一刺しで壊滅状態まで追い込むだけなので何かの不注意で予想外の出来事が起こってもおかしくは無いと説明はしてある。しかしその後のことには一切の責任は持たないとも。
「(下手をするとここが別の意味で『地獄』に変わるかもしれないなぁ)」
自分にはある程度の予想は出来ているがそれは誰にも伝えていない。それが起こってもおかしくないからだ。その答えに行き着いていない神々のほうが馬鹿でしかない。戦の歴史の中に確実にある残酷さ、それを確認するにはいい機会なのかもしれないな。
「ハクロウ」
カインらが命令を終えて戻ってきていた。
「お疲れ様だけど状況は予想より有利だ、思う存分暴れてもらうよ」
「了解しました」
『ガーガス・オルタネイト・システムマスター』を起動し情報を更新する。敵の行動を計算し判断し対応し処理する、ただそれだけ。無機質で冷たいそれは戦闘のためだけに構築された処理装置。有用か無用かは意見が分かれるだろうがこの世界においては有用であった。
「各自、行動しろ」
後に起こることを予測していながら命令を下す。
この戦場はあと少しで死体で溢れかえるだろう、それだけに留まらずさらに地獄を生むかもしれない。
だけど、自分は指揮官でありその下にはどうなるのか分からない子供らが大勢控えている。その子らを戦わせておきながら綺麗事など口が裂けても言えないのだ。偽善だろうが身勝手だろうがこの世界で生き抜くには泥を被るしかない。
「(ハクロウ、敵は第1陣地と第2陣地に突入しました)」
「よし、そこはそのまま放置して第3陣地以降へと移れ」
この陣地には食料しかない、そう撒き餌なのだ。
一番最初の陣地なのに食料などしか無いと見れば先を競って奥深くまで進軍してくるだろう。
予想どうり敵は我先にと次の陣地へと進軍した。
「(敵は第3陣地から第6陣地まで突入しました)」
そこに用意してあるのは布地や金銀などだった。
高級そうなものはここに来る前にあらかた買っておいていたのだ。これは敵を釣り上げるための餌つきの釣り針、一度食らいついたら引き上げるだけである。
「(それにしてもよく食いつくなぁ、まぁ好き勝手に取ってくれって言ってるんだからそうだけどもうちょい疑うという事をもてないんだろうか。馬鹿みたいに飢えた群れ、いや、もうクズの群れといったほうがいいか)」
目先の私利私欲を満たす事しかないクズどもの姿を想像しながら戦の残酷さを思い知らせようと決意する。かなりの金額を出費したが前払いの報酬で元は取り返しているし敵の残していく物資を回収すれば大黒字は間違いない。
翌日となるとさらに望ましい状況となる。
「(うわ、将軍から一兵卒までどころか傭兵や従者まで陣地に入って取り合いを始めたよ。そんなに給金が悪いのかね?それとも戦争という状況下だからか。無秩序な軍勢は欲を煽ると無法者でしかない)」
敵はヴァトラー公爵とごく一部は統率されていたがそれ以外は全部欲に飢えた獣に成り下がった。これでは正規軍ではなく数が多い山賊としか見えないだろう。その姿を見てわずかばかりの良心が消え去ってしまった。
「(ハクロウ、敵は分散し手当たり次第に陣地を攻めるようです)」
予想どうりの報告、相手は味をしめて指揮系統は無くなっていた。大軍のままでは異変に気が付けば防備を固めてしまう、しかし分散させてしまえば個別に撃破出来る人数まで下がってしまう。これを待っていたのだ。
「全員、交戦を許可する。陣地の罠が作動を確認したら殲滅しろ!」
指示を出す、甘い夢はもう終わりだ、これからは悪夢を見てもらう。
まずは第7から第11陣地に侵入してくる敵を片付ける、先ほどの甘い罠など一つも無い。
~王国軍の名もなき兵士視点~
「おっ、宝箱発見!」
自分は天幕の中でまだ開けられていない箱を見つける。獣人国は多数の陣地を構築しており侵攻は難しいと思っていたが中には誰もいなかった、代わりにあったのは食料などの物資でありこれがかなりの量があった。それを知ると上位騎士らは我先にと群がり所有権を主張する。
だけどのその食料は相当な量があり下級騎士らまで分配してもなお余るほどだった。
そして次の陣地へと侵攻すると高価な布地か金銀がドッサリ。最初に入った連中の中には何があったのかを誤魔化すのが多数いた。どうせ騎士らは俺たちには何も渡さないだろうから誤魔化したって不思議じゃない。
何人かの兵士が隠し持っていたのを見つかり殺されたがこれだけ美味い状況なんだ、それを騎士ばかりに取られるのは面白く無い。
そして次の日は分散し目に映る全ての陣地を攻める事が決定される、馬鹿な指揮官がありがてぇ。これで略奪を咎められる事は無いだろう。
そして宝箱を見つけた時に戻る。
「おい、これは俺のだ」
後ろから騎士が来る。チッ、タイミングが悪い。残念だが兵士より騎士のほうが上なので渋々宝箱を諦める。
そして騎士は何の迷いもなく宝箱を開いた瞬間、
『チュドーン!』
猛烈な爆音が上がった。
「な、なんだぁ?」
宝箱に手をかけた騎士の全身が黒焦げになっていて絶命していた。
すると辺りじゅうから同じ爆発音が続けて上がる。急いで天幕の外に出ると、
「ギャァァア~!」「グフゥ!」「ヒィッ!」
四方八方から矢が飛んできていた、敵の伏兵だ!
「落ち着け、陣形を組んで耐えるのだ!」
指揮官の中位騎士は自分を含む生き残りを集めて防御陣形を組むが飛んでくる矢は盾や鎧を軽々と貫通する。一体どんな装備なのか全く分からない。王国軍でもこのような強力な装備は開発されていなかったからだ。絶え間なく続く矢の攻撃に仲間はあっと言う間に死んでいき残ったのは自分と騎士僅か30人ほどになる。
矢による攻撃がそこで止まる。
「?」
ワケの分からない状況で、子供が20人ほど現れる。全員が槍と皮鎧で身を固めていた。
「おお、よくぞ助けに来てくれた!」
どれだけ空気読めないんだお前は?こんな状況で都合良く助けが来るはずが無いだろう。しかも子供なんて来ている王国軍にはいない、どう考えても敵だろうが。多分降伏を言い渡しに来たのだろう。だが、この子供ら全員はこちらを醜い汚物でも見ているかのような視線をしているのはなぜだろうか?
「単刀直入に言う、降伏か?抵抗か?」
一人前に出てきた子供らから出る簡潔な言葉。
「早く我らを敵陣から連れて逃げるのだ!褒美は木札で出す」
その言葉と同時に子供らは全員が槍を構えた、つまりそういうことだ。俺には子供らが死神にしか見えなかった。
「な、何を考えておる!我らは王国の騎士だ!」
ほれ、さっさと助けろ、と。声高に言うが槍先はこちらを向いたままだ。
「話が分からないのか?」
子供らはひたすらに淡々とした口調だった。それで分かった。王国軍でも獣人国軍でもないからだ。何が目的か分からないがこの様子では大人をまるで信用して無いのをハッキリと感じる。
「このガキが!さっさと俺らを連れて逃げろってんだよぉ!」
一人の騎士が激昂しながら剣を抜いて襲いかかろうとした。
「降伏は不可能と判断」
武器を抜いた騎士の胴体を数人分の槍で突き刺す。それで騎士は血を口から噴き出して絶命した。
「な、何をするか!このクソガキが!」
それを切っ掛けに俺以外全員が殺気立つ。そして武器を抜く、オイオイこの状況でそんなことしたらどうなるかなんて一つしかねぇだろうが。
「警告を無視した、脅威と断言する」
馬鹿どもらが、装備を捨てて恥に耐えて命乞いすりゃ助かるかもしれないってのに。騎士どもは全員華美な装備を抜いて攻撃したがあっけなく武器を弾き飛ばされてしまう。槍を突きつけながら子供らは言った
「最後の言葉を聞く」
「ヒ、ヒィッ!偉大なる神よ、この愚かなる者に神罰を!」
恐怖に怯えながらの最後の言葉がそれか?今更神に祈って何になるんだろうなぁ。全員が恐怖に怯えてワケの分からない事を大声で叫ぶ。
生き残れるかもしれない可能性を放棄したのはこっちの方だ、これではどうしようもない。こいつらと一緒にいたばかりに生死の境目に立たされてると思うと王国はもうダメだって思うわ。
賄賂ばっか貰う事に熱中して訓練すらまともにしようとしない後ろ暗いヤツらに味方してくれる相手がいるとは思えねぇけどな。そうして武器を抜いた全員が槍衾で貫かれて死んでしまった。生き残ったのは俺だけだ。こりゃ人生終わったかねぇ。
「お前は、戦うか?降伏するか?」
血で濡れた槍先をこっちに向けてくる子供らしからぬ無機質な口調。こんな子供なのに戦闘経験が遥かに違う。殺人を犯しているにもかかわらず平然としている。ハッキリいって異常な光景でしかない。だが、まだ話しかけてくれるってことは何とかなるかもしれねぇ。人生最大の博打だが上手くいってくれ!
「あ~、俺はこいつら愚か者と同じことになりたくはねぇ、命だけは助けてくれねぇか。装備は全部外すしどんな命令でも従うからさ」
降伏する証として武器と防具を全部外してバンザイし心臓を相手の武器の前にさらす。王国軍式だが通じるだろうか?
すると槍先を下に降ろした、どうやら上手くいったようだ。
「分かった、降伏を受け入れる。殺した相手から装備などを回収する作業を手伝ってもらう。物資の集まっている場所の情報も欲しい。それが終わったら包囲から脱出できる道を教える」
非情ではあるが無情ではない相手で助かった、俺は手持ちの情報を洗いざらいぶちまけて子供らの命令を聞く事にした。王国に戻ったら「わが身可愛さに味方を売った」と言われるだろうがこんな状況で抵抗なんて出来っこない。愛国心が無いわけじゃないがそれも生きていればこそだからな。
そうして生き残りの捕虜を集めて元仲間の大量の死体から装備などを剥ぎ取る作業を言い渡される。改めて確認すると死体がそこらじゅうにあるな、それだけ敵が優秀って事なのだと改めて納得する。そんな地獄をこんな子供らだけで作り出してるなんざ誰でも恐怖するな。
(死体漁りなんて誰もが嫌がることだがやるしかねぇなぁ)
俺以外にも生き残りがそれなりにいて同じように装備の剥ぎ取り作業をしている。周囲には監視役の子供らが多数いて逃げようが無い。改めて見ると見た事も聞いたことも無い装備をしている。物言わぬ死体からボロボロになりかけた装備を無心で回収する、正直言って吐き気がするがここで逆らおうものなら愚か者の後を追うことになる。そんなのは真っ平ら御免だ。
大量に死体があるため手が休まる事は無い、重い鎧を始め回収できるものは全て回収させられる。全員が疲れ果てるギリギリの所で装備を剥ぎ取り終え一箇所に集める。子供らが触れるとそれらは突然消えてしまった。魔術などによる【収納】か?なぜこんな子供らが使えるんだ。かなり高度なものだぞ。
しばらく休息し他の場所でも同じように死体漁りを行なっていく。ざっと数千人分の装備がそうして回収された。
「よくやった。約束のモノを出す」
それは紙に書かれた地図だった。だが、かなり良く出来ている。ハッキリいって王国軍が持っているのより遥かに緻密で詳細だ。絵には白い線と赤い線が書かれていた。
「白い線は生道、これを辿れば逃げられる。赤い線は死道、これを辿ると必ず死ぬ」
そうして子供らは去っていった、どうやら後はこっちで何とかしろと言う事か。
「お前ら、さっさと退却するぞ!もう勝敗は決まってるんだ。命が惜しかったらさっさと退くぞ!」
俺は生き残りの仲間らに号令をかけて地図に従って逃げた。子供らの言葉に嘘はなく何の攻撃も受けずに戦場から脱出する事に成功したのだった。
「なぁ、これからどうする?」
生き残った仲間は500人ほどだ。騎士身分の者は殆どおらず兵士階級が大半だった。他の仲間は奥に行っちまったから連絡を取りようがない。俺の判断だと死ぬか捕虜となるしか選択肢が無いだろうな。
そう考えていると後方から砂煙が見えた。
「おい、お前達は先に突入した兵士達だな?なぜこんな所にいる」
旗を見るとヴァトラー公爵様の軍勢と傭兵らだった。
「お、俺らは、その」
敵に命乞いをして助けられた事を簡単に説明した。
「そうか、詳細な報告をするから公爵様のところまで来て貰うぞ」
そうして公爵様のところまで行き自分らがどれだけ危険な状況であったのかを可能な限り説明した。
「・・・戦場はそれほど酷かったのか。恥と屈辱に耐え死線を潜り抜けてよくぞ生還した。そなたらは王国の勇士だ」
感激の言葉を送られた、捕虜として生かされたにもかかわらずどうも不自然だった。公爵様は敵が何者であるのか何か知っているのか?
「あの、俺らは、どうなりますか」
このまま帰れば罪を問われるのだが公爵様は、
「それほどの地獄から生還したのだ、悪いようにはせぬよ。此度の戦いは王国の傲慢から始まった事でありそれに巻き込まれたそなたらに罪は無い。ワシが王国に提出する資料を書き助命しよう。職を失ったのなら家族とともに来るが良い」
そう約束してくれた。
「あ、ありがとうございます!」
生き残り全員が涙と鼻水を流しながら生きて帰れたことを喜んだ。
「カイン、状況は?」
「ハクロウ、こちらは片付きました。次の戦場に向かいます」
「分かった。でも、回収できる物は全て回収するように」
「はっ」
仲間らに命令して捕虜とした者らを働かせて騎士や兵士の遺品の回収作業をし終えたとの報告。クロスボウの攻撃でボロボロだが鋳潰して装備や資源として再利用するそうだ。訓練どうり死体から装備を回収させていく。
冷酷無情に敵を殺したがカインにも人としての感情はある。奴隷が騎士を殺すのはこの上ない罪であり普通は出来ない、出来ないが今までの事から忌避感が薄くなっていた。ハクロウに出会うまで色々な人から暴力を受けたがそれが奴隷の普通なのだと諦めていた。ハクロウと出会って最初はただの玩具だと思った、金持ちの気まぐれと。
しかし、ハクロウはすぐさま傭兵となりモンスター討伐や護衛などを受けるようになる。自分らに武器や防具を与えて戦い方を教えてくれた。美味しい料理だって食べさせてくれたし負傷したら傷薬も出してくれた。水浴びだってさせてくれる。
日々の訓練は過酷だったがこの世界には脅威が満ち溢れている、それを考えればこの訓練は必要不可欠だ。
もうすでに奴隷から解放される金額を積み立てているが奴隷から解放されるという考えはどこにも無い。例え開放されたとしてもこんな子供では仕事にありつけずまた奴隷となるか山賊にでもなるしか無いだろう
カインは小さい頃から一軍を率いる優れた将になることを心の底から望んでいた。だけど平民出でありどれだけ活躍しようともそれには届くことは無い。しかし、ハクロウは違う。自分には「将としての才能がある」と言ってくれたのだ。
仮想戦場で戦いを続けていき最優秀に入ってはいたがハクロウ相手ではやはりまだまだ子供なので負けてしまう。
奴隷の子供らが増えていき、自分には小部隊長となり槍を装備した兵をある程度自分の裁量で動かす権限を与えられている。
「軍人と言うのは育成にとにかく手間と時間がかかる。高度な基礎教育と経験豊富な補佐する人がなければ100人ですら動かす事が出来ない。いきなり苛酷な道だけどがんばって」
奴隷に命令を出す『ガーガス・オルタネイト・システム』は有能なものが使えば凄いが無能であるのならこの上ないお荷物にしかならない。
実際カインは命令を出しても全てが必ずそう動く事ではない、何らかの理由によって齟齬が生じる事も分かってはいたが、相当に苦戦した。
初期の頃は散々であり無駄に負傷者が出てしまう始末。でもそれでもハクロウは、
「指揮官とはそういうものだから。一緒に前線に出るか、後方で指揮を出すか、それはまだ分からないけどこれを乗り越えられないなら一軍を率いるなんて夢の夢のそのまた夢。諦めたほうが幸せだともいえる」
死者や負傷者を出さずに戦を制するなど夢物語だと軽く笑っていた。それでもなおハクロウは戦死者どころか負傷者すら全く出していない。
そのことからカインはますますハクロウを尊敬するようになった。憧れていた姿に限りなく近い人物として。
「ハクロウ、自分にはどれぐらいの人数を統率できる指揮官になれますか」
「軍人は基礎教育と訓練と補佐する人間がいれば数百人を指揮できるようになるのはさほど難しくは無い、けど1000人以上だと高度な教育を受けていなければ不可能。さらに多く統率できるかは個人個人違うからどうなるかは判断が難しい。自分の教育を徹底的に受けて10年頑張れば最低1000人は統率できると考えている」
そのためのシステムは構築されていると断言した。
(まずは1000人を指揮出来る能力を手に入れることと優秀な部下の育成を最優先でやらないといけないな)
この言葉で自分の明確な未来が決まった。
今後ますます奴隷の仲間は増えていくだろう、自分らのように戦闘をするだけでなく装備製作や素材採集までやれる事は多い、別に戦闘が出来なくても良い。大人からの暴行で心に傷を負っている子供はかなり多いのだから。でも、今後を考えてある程度は大人を入れる事は考えておかなければいけないとも言ってた。
大多数の子供は貴族や大人を信用していない、でも貴族や大人でなければ教えられない事もあるとハクロウは言う。
そのあたりのことはまだ自分には分かりようが無い。それに、今はまだ500人ですら指揮出来るとは考えられなかったからだ。将来独立するにしても留まるにしてもまだ自分は子供、多少遠回りしても確実な結果を出す事が一番なのだ。もっとも一番の手柄を誰かに渡す気はこれっぽっちも無い。
(今のところギニーを貰ってもさほど必要性は感じない、衣食住は保障されているし文字の読み書きや計算も教えてもらえるし)
決まった金額を支給される騎士や兵士などと違って傭兵身分である自分に出される給金の評価は結果次第だからだ。無駄金は出せない。
(そうなると装備か個人的な特訓か。ハクロウは忙しいからお金出さないとなぁ)
ある程度の奴隷の仲間を纏めている立場なので色をつけてもらっているが将来のことを考えるといつかは自分のところまで来る相手は複数存在するのだ。そこから抜け出すには他人とは違う考えと行動をしなくてはいけないと嫌というほど知っている。
よし、この戦いが終わった後でいいからハクロウにお願い事をすることを決めるカインだった。まだまだ戦闘は続行中なので戦果を稼げるだけ稼ごうと決めてハクロウの指示に従った。
~第12陣地から15陣地近くに進軍している隊長補佐視線~
「進め進め!敵陣地には誰もおらず財宝があるぞ!」
発破を掛ける、どういうわけか敵陣地には誰もおらず物資が大量にあった、それを聞いて奥まで進軍する意見が圧倒的多数を占め偵察すら出さないまま進軍を続けていた。あれだけの物資を始めから放棄しているのだから奥にはさらにあるのだという考えである。
だが、あまりにもおかしいことを自分は薄々ながら感じていた。無秩序な軍勢でしかも欲望丸出しで進軍していく事は自殺行為なのだと。
「はぁ?お前は馬鹿だ。これだけの量の財宝が捨てられてるんだぞ!奥に行けばもっとあるに決まっている」
隊長である騎士はそう断言して無防備に突き進んでいる。
この人物はとある貴族の次男である。ハッキリいってクズでしかない。あらゆる物を親の金と圧力で買い漁り何人もの女を愛人としている。訓練にも全く顔を出さず好き勝手に飲み食らい遊びまわっていた。
取り巻きはおべっかを言うだけであり煽り立てるしか能が無いゴマすりだけしかせずそれがさらに横暴に拍車を掛けている。そんな愚か者の補佐官に任じられている自分はそこそこの経験しかないがこいつなんかより遥かにまともである。
見栄えだけの装備はしないし兵たちの心情にも気を配ってた。そこそこ人望もある。
だけどこの無能指揮官と取り巻きと配属された騎士らは『金で全てが解決できる』と勘違いのままに生きている。この戦いだって自分らの都合がよい戦功稼ぎとしか考えておらず危機感も無い。
「戦場に絶対などありませぬぞ」
いくら忠告しても右から左に通り抜けている始末、そして自分が都合の良いときだけ投げやりに動き都合が悪いときはこちらに全責任を押し付けてくるのだ。おかげで有望な若者が何名も潰されてしまったのだ。現在では除隊届けだけで数百通も積み重なっている。それすら見ようとしない。
「俺らがいりゃ王国は安泰!将来は将軍として国を動かすんだ!」
大声で笑いながら昼間から酒に溺れている姿はもはや破滅の未来を確定させていた。
自分もこんな相手とは関わるなど大嫌いだが王国の命令は絶対である、仕方なく獣人国に侵攻しているがこんな奴らばかりでどうしようというのか?
そうして進軍していると目の前に人影が現れた、だがえらく身長が低い。どうやら子供のようだが始めてみる装備を持っているな、人数は200人を少し超える程度でこちらは数千人。力任せに押しつぶせる相手である。
すると一人が剣を上に掲げ、
「攻撃を開始しなさい」
剣を振り下ろすと同時に地獄が生まれた。
ガガガガガ~!
視認出来ないほどの大量の矢が前から飛んでくる、前衛の者が盾で防ごうとしたが「はぎゃっ!」一息で事切れた。盾も鎧すらも貫通し後ろの者まで貫通するほどの強力な矢を何も無い場所でひたすらに食らう。
その攻撃は途絶えることなく続きバタバタと死んでいく者が続出、かろうじて留まった者がいるが、
「剣兵は抜刀し敵に切り込みます」
敵は無慈悲な追い討ちを仕掛けてきた。
ただでさえ先手の攻撃で混乱しているのも関わらず接近戦に持ち込んできたのだ。瞬時に間合いを詰めてきた子供らはこちらが武器を構えるのすら四苦八苦している隙を見逃さなかった。手当たり次第になで斬りにされる。
前衛となる者は全て死んでいてあとに残ったのは甘えきっていた愚か者ばかり、戦いになどなるはずがなかった。抵抗の意思を示す者は獲物となり次々と殺されていく。子供らがこちらを制圧してしまうのに大した時間はかからなかった。
「降伏してこちらに従いますか?」
指揮を取っていたであろう一人の少女が発言した。
「ふざけるな!俺らは王国の騎士でしかも貴族の子だ!未来の将軍だぞ!このような屈辱にあわせておいて絶対に許さんぞ」
生き残りは僅か400人にまで減らされてしまった、それでも指揮官は反抗する。
「あなたがこの部隊の指揮官ですか?」
そうだ、と答える。
「なら、この状況になったのにはあなたに全責任がありますね」
その責任を取ってもらいましょう、と。
「右手か左手の手の甲を上にして地面に置きなさい」
「?」
意味が分からないがそうすると少女は持っていた剣で「グサッ!」と剣先を手に突き刺した。
「ぎゃあああああぁぁぁ!」
指揮官は悲鳴を上げるが少女は気にする事もなく剣をグリグリと動かしさらなる苦痛を与える。
「あがががががぁあぁ!」
痛みのあまり指揮官は失禁してしまうが少女は何も気にせず平然としている、なぜこのような子供がこんな事が出来るのだ?手に突き刺した剣を動かすのを止めて再び質問してくる。
「降伏しますかしませんか答えてください」
「このクソガキが!殺してやる、犯してやるぞ!」
怒りに満ちた指揮官だがこの状況では何の意味もない。また同じように剣をグリグリと動かす。そして同じように悲鳴がこだまする。それを三回ほど繰り返した。
「言葉が通じるなら素直が一番ですよ」
「ぐぞぉ、グゾォ」
涙をとめどなく流しながらも指揮官からは降伏の意思を示そうとしない事に少女らの嫌悪と殺気は膨れ上がる一方だった。
「仕方がありませんね」
少女は側にいた数人の子供に命令して指揮官を拘束して剣を持つ少女の前に顔を突き出させる。
「な、なにを、する気だ?」
拘束した子供らは兜を脱がす、そして地べたに押さえつける。
「あらあら、そこそこ良い顔ですね。ですが、邪魔な物が付いていますね」
「な、なに、を」
少女は剣先を顔に向けている
「まずはその耳を切り落としましょうか」
「!?」
あまりのことに周囲の全員が絶句する。
「や、止めろ!」
「大丈夫ですよ、この剣凄く切れ味がいいんですから」
サクッ、ボトッ。アッサリと右耳が落とされた。
「がぁぁぁあああ!」
痛みのあまり暴れようとするが子供らに押さえつけられて身動きが取れない。
「片耳だけではバランスが悪いですねぇ」
軽く剣を振るって血を落とすと再び残った片方の耳の所まで刃を向ける。
「やめろ、止めてくれ!」
「捕虜のくせに何を言っているのですか?反論などで出来るとでも?この無駄に死んだ者たちの責任を取るのなら切り落としませんが」
「ふ、ふふ、ふざけるな!この極悪人が!」
罵詈雑言を上げるが少女の表情はこの上なく冷め切っていた、処置無しと。
「反抗的過ぎますねぇ、残りの耳も必要ないでしょう」
そうしてもう片方の耳も落とされた。
「ひぁっ!ヒァッ!」
耳が無いことは王族から奴隷まで大きな罪を犯した者への罰だ、これをされると問答無用で誰からも相手にされなくなる。少女とその仲間はうっすらと笑みを浮かべながらこちらを見ていた。切り落とした耳を持ちながら。
「装備を全部外しこちらの命令に従うなら生かしておきます。しかし、逆らったら全員の耳を落とします。それでも抵抗するなら死んでもらいます。どうしますか?」
この少女らが本気である事を目の前でマザマザと見せ付けられもはや抵抗など無駄だと判断した。もう打てる手は一つしかなかった。
「降伏いたします」
「副隊長!」
かろうじてワシを信じてくれる者らを無意味に死なせる事は出来ない。
「我らが助かる余地はもう無い、ならばどのような形でも生き延び王国に帰還する事が最優先だ」
こちらが逆らわない限りは生きて帰れる可能性が残っているのだ、それをむざむざ捨てるなど許されない。
「俺は降伏などせんぞ!我らにこのようなことをするこいつらをみな」
言葉が最後まで続く事はなかった。少女が剣を指揮官の口に突っ込んだのだ。バキンと歯が何本も折れる音がした。
「うるさい。黙れゴミ主が」
ここにいる全員が少女らはまるで悪魔のようにしか見えなかった。
「みんな、こいつは拒絶しかしません」
次の言葉は子供が発するなど想像など出来ないモノだった。
「まずは指を一本ずつ切り落としなさい。次に肘と膝と切り落とし最後に全員武器でメッタ切りにします。顔は原形を留めないほどに潰しましょう」
人体を効率的に解体する勉強だと。少女は年相応の優しく愛らしい表情を浮かべながら宣言した。
「ひゃ、ひゃめ、れぇ」
そうして生き残りが見守る中見せしめとして少女の言葉どうりとなっていく。
「あぐがきごがれこらぱ」
もはや支離滅裂な声しか聞こえなくなった。
「中々しぶといですねぇ」
この子らの目には何が映っているのだ?貴族をここまで痛めつければ死罪だと王国法で定められてるのだがそんなことなど全くお構い無しに殺していく。そこにあるのは怒り以外の何者でもなかった。
「全員武器構え」
剣を持った子供ら全員が号令と共に指揮官をメッタ切りにして肉の塊となり最後を終えた。
「・・・・・・」
全員が物言わぬ元指揮官を放心したまま見ている、このようなことなど始めて見たのだ。自分ですら何がなんだか分からなかったがこの子供らが本気である事は嘘偽りなかった。
「さて、生き残っている人たちは付いてきなさい」
少女とその仲間が血塗れの武器を持ちながら軽く明るい声で。全員がただただ首を縦に振るしか出来なかった。
そうして生き残りは元仲間の死体から装備などの回収作業を言い渡される。あれほど残酷に殺された指揮官を見て反抗などすれば同じ末路は目に見えている。全員無言で言われた事をひたすら行なって装備を回収し終えると魔術によるものか一瞬でどこかに消えてしまった。地図を渡され書いてある通りに逃げれば助かると言い渡される。
「あの愚か者のような目に遭いたくなかったら早く戦場から離脱しなさい」
愛らしい微笑を浮かべながら子供らは去っていった。
「副隊長」
部下が心配そうな顔で話しかけてくる、呆けている時間など戦場には存在しない事を思い出した。
「他に生き残りがいないかを確認しつつ地図どうりに引くぞ、死んだ騎士らが連れてきた従者らと出来る限り早く王国に帰還する」
何かをしようにも装備が無いのだ、これ以上居続ければ助かった命が無駄になってしまう。すばやく仲間を纏め後方にいるヴァトラー公爵の軍勢と合流することを最優先とした。
「エレン様、あれでよろしかったのですか」
「正直言ってこれぐらいで貴族などへの怒りが鎮火するとは思えませんけど多少は風通しが良くなると思います。ハクロウの指示に従い次の戦場に向かいましょう」
仲間らは全員頷く。
エレンは仲間らと共に移動していた。
エレンとその指揮下にある子供には非常に強い共通点があった。
『横暴な貴族などへの殺意と憎悪』
エレンを筆頭に構成された部隊はその感情に満ち溢れていた。
(はぁ・・・、間違いなくハクロウは分かっててやっている。理不尽な仕打ちをする人物への敵意がそう簡単に消えないってことをそしてそれが人を歪ませることを。それを少しでも解消させるために残酷な方法で殺す事を仕向けたしそれを咎める気も無いんだろうなぁ。大人よりも子供が傷つきやすい事を良く知っている)
エレンを始め仲間らには喜びだけがあった。
エレンはとある村の農家の子として生まれた、両親と弟が一人。
暮らしは貧しかったがそれに耐えて暮らしていた、しかしそれを完全に破壊するものが現れたのだ。
周辺警備と称して貴族と騎士らが村に来た。
彼らはそこで好き放題可能な限りの欲望を吐き出した、食料や酒の強奪から始まり、暴行に移り、見せしめの処刑まで、それでも耐えた村人達だった。最後に残ったのは女子供だけだった。・・・・・・後は説明するまでも無いだろう。そうして父も母も失い弟と共に奴隷商人に売られたのだ。そこそこ可愛い部類だったがこの世界は残酷であり何度か買い手が変わり最後に出会ったのがハクロウだった。
もう少し年が上だったなら一生男らの欲望の捌け口になるしか無かっただろう、最初はただの気まぐれなのだと思っていた。
『気弱そうな青年』
ハクロウを見たとき最初に抱いた印象はそれだった。
どこにでもいそうでひ弱い人間なのだと。力仕事を生業としていた父とは違っていた。この人は何を考えているのか?こんな子供ばかりで一体何をするのかと思った。
【奴隷化】され証拠となるサークレットを付けさせられた。
「奴隷使い?」
「そうだね、そうとしか言いようがないね」
あらゆる職業の中で最悪の評価であり最低の存在であり誰からも嫌われる誰からも評価されない相手だった。
「私達をどうするのですか?」
他に買われた子らも不安の色を隠せない。
「取って食ったりはしないよ、自分は奴隷を働かせる者だけどもう一つの姿がある」
そう、指揮官という姿が。そう明言した。
「まずはこの世界の状況を把握して自分らでも戦える場所を探そう」
そうして傭兵ギルドに行く事になった。
傭兵の審査項目は非常に雑だ、リーダーとなるものと呼称さえ書けばいいというだけ。もっとも有名となれば監視などがつくだろうが現時点では何も気にするような事などなかった。
「戦闘能力など最初は有り得ないから買うのは素材などを取れる道具くらいだな、調理道具とかは最低限揃えるとして・・・」
ブツブツと何か考えながら動くハクロウは非常に現実的だった。
最初から出来る事を一つずつ確認させて覚えていく事だけを望んだ。戦闘が出来ないなら出来る事で働けとも言った。美味しい食事も出してくれるし水浴びだってさせてくれるし服なども与えてくれるし安らかに眠れる場所も与えてくれる。
訓練は苛酷だがそれもこの世界で生き抜くために必要なもの、それに反論したりはしないがどうも甘いように感じてしまうのはどうしてなのだろうか?使い潰そうとしたりしないし面倒もちゃんと見てくれる、だけどなぜそこまでしてくれるのか?奴隷などただの道具程度なのがこの世界の常識なのに。
「質問があります」
率直に意見をぶつけてみる事にした。隠し事はできないが言わないといけないだろう。
「今後私達をどうするつもりですか?」
「支払った金を回収するまで有効活用する」
「支払い終わったら?」
「ここに部隊長として留まるか自分の道を探してもらう」
「奴隷などいくらでもいますが」
「可能な限り買う」
「貴族になりたいとか?」
「あんな夢物語しか見えない人種と一緒にしないで」
恐ろしく単純明快な答えが返ってくる。
「貴方の望みはなんですか?」
「手の中に納まる平和だけだよ」
「このご時世に平和など言葉だけです」
「もし言葉だけでなくなったらどうする?」
この世界がどれだけ荒れているのか分かっているはずなのに平和を願っている?そんなことなど有り得ない!
「子供だから分かりづらいかもしれないけど面倒を見るのは手の中にいる人たちだけ、他の人は利用しあう関係だけだよ」
「だからといってこの大人数をずっと面倒を見るとでも?」
「自由になれる金額を稼ぎ終わっても留まるというならそれはそれでかまわない」
もうすでに1000人を越えているのだ。戦闘行為の可能性が出ない子供らには裁縫などを教えているぐらいだから一生面倒を見るという答えも現実味がある。
「ん~、エレンの怒りももっともだと思うよ。理不尽に扱われた家族も不幸だと思える。でも、こんなご時世だからどこでもそんなことが当たり前に存在する理不尽だね。それを嘆いても仕方が無い」
だったら、そういって一呼吸入れる。
「誰も咎められない方法で復讐しないか?」
この上なく魅力的な言葉が飛び出した。
そうして私と貴族らに家族を崩壊させられた面々を率いて敵対者を一部生かしその眼前で公開処刑という方法を言い出した。
『誰にも咎められずに貴族を殺せるの?』
その言葉を聞いて戦いに参加している子供らは奮い立ったのだ。私も半信半疑だったがその機会が来るのは早かった。
「これから王国軍と戦闘をする。依頼主は王族でも貴族でも傭兵でも市民でも無い。報酬は約束されてるしこちらの命令に従うなら咎める者などどこからも出ない。敵を一人でも多く殺せ。ただし相手から降伏を言い出したのなら装備を回収させてから地図を渡せ」
そうして指揮を執ることになったが子供らからドス黒い何かが上がっているように感じてしまった。
そしてさっきの場面に戻る。
「ほら、サクサク動いて死体から装備を剥ぎ取る!」
「し、死体漁りだなんて、悪党のやる事だ」
こいつらは何を甘いことを言っているのだろうか?そりゃ遺品なら回収して遺族に渡すのが普通だが情報ではこの侵攻に正統性など無い。だけど、それでは戦った私達に報酬が無い。それなら目の前の死体から装備剥ぎ取ってもかまわないはずだ。殺した敵の装備を回収する事なんて遅かれ早かれやる事だろう。捕虜なのだから言う事を聞かなければどうなるのか分かっているのか?
今だったら腐臭がしないので手早く済むだろうし墓場に埋める必要性もない、そんなのは後から来た人たちでやって欲しい。
「死人とはいえ装備を剥ぎ取るなんて」
大人の癖にグチグチと不満ばかり漏らす。お前らだって獣人国に侵攻して略奪しようともどこかで考えていたはずだ、ただそれが逆になっただけだ。これだから甘い世界に浸りきっているお前らが最悪なのだ、負けたくせに文句など言えると思っているのか。
別に回収しなくてもかまわないが奴隷の子供らを一人でも多く買うには金が必要なのだ。どうせ私達の攻撃でまともな状態である装備など少ない。鋳潰すにしても直すにしても手間とお金がかかりすぎる。なら私達の手で回収し現金化したほうがよっぽど役に立つ。
「ウダウダいわずサクサク動く!あの指揮官の貴族のようになりたいのですか?」
私の命令で仲間全員が武器を構える。この武器の殺傷能力は折り紙付きで装備を剥ぎ取られたこの人たちには防ぐ手段など有り得ない。もし仮にでも戦おうとするならば死体の仲間入りをさせてから連れてきた仲間と死体漁りを行なえば済む話だ。捕虜全員の顔が恐怖一色に染まる。
「反論して死ぬか働いて生かされるか、どちらがお好みですか?」
『ヒ、ヒィッ!従う、従うから武器を下げてくれ!』
「よろしい、手早くお願いしますね。なにぶん戦闘はまだ続行中ですので」
口調はやさしめだがかなり残酷な命令である。
元仲間から装備を剥ぎ取って敵に差し出して自己防衛した、と。どう見てもそうとしか表現できないがこちらもお金が必要なのだ。回収できるのなら全て回収する方針である。私にはよく分からないが『奴隷予備軍』だとか『生活難民』だとかの言葉はハクロウからよく聞いている。
「まぁ、簡単に言うとそういう状態だってこと。前者は大半が子供で後者は大人が多いってことぐらい、かな。戦いなどで手足を欠損すればそれだけで生活が難しくなるだろうし口減らしのため売られることもある」
中にはそういう職業もあるのだとか。
「奴隷使いは最底辺だって認知されてるけど表現を変えれば身分を偽り非合法に手を染める輩も多いんだよね。戦乱の時代だと特に。それも一種の救済だと本人は思っている」
それで救済できるのならこんなに奴隷は溢れていない、と。
「意図的に奴隷が出来やすい世の中に動かしている輩がいるのかも」
「それに何の利益が?」
「単純に労働賃金の値下げ、とか?もしくは苛酷な働きを強制される、なのか?まぁ、その辺りの事はまだ出てこないけど普通に奴隷が売買されるという事は誰が儲かるかな。そして奴隷の価値が上がれば誰に金が入ると思う」
奴隷を売買する商人か!
「あいつら・・・」
「止めてよ!そこらにいる奴隷商人たちを切り捨ててもどうしようもないんだよ」
「でも!」
「君の怒りは分かるんだけどそれならやる事をはっきりさせようよ」
ね、と。その仮面からは表情は見えなかったが私には救世主に見えたのだった。
一人でも奴隷を買い育て自立させる。
その目標への到達には越えなければいけない巨大な壁が無数にある。それは英雄や勇者ですらいくら挫折しても足りない難行でも、
「(この人なら越えられるかもしれない)」
私はそう信じて進む事にした
「エレン、状況は?」
ハクロウからの連絡である。
「遺体からの装備の回収作業は終わりました」
負傷者はゼロと付け加える。
「『命令どうり』殺したんだね?」
「はい」
あの生贄となった貴族の指揮官への殺し方は絶対だと。あの後子供の多くが晴れやかな感情に溢れていたのをハッキリと分かる。
「あれは本当に必要な事だったのですか?」
後になって思うがやりすぎなのでは、と。
「いいんだよあれぐらいで。戦場に出てくるというのは『いつでも殺し合いをします』と明言してるんだから。生きて帰れるかなんて保障など誰もしてくれない。王族とか貴族だとかは身代金を要求できるから手荒には扱われないけどそれはあくまで『慣例』だからでしかない。状況と場合によっては理不尽な要求を出されても文句は無いってことさ」
自分らの依頼主は王国軍の排除さえすれば咎めないということしか言わなかったそうだ。その後のことなど面倒は見ないと約束している。
このままハクロウの指示どうりに次の戦場に仲間らと向かう事にした
「(敵は予想以上に突き進んでいるな。撒いた餌が美味しいとはいえここまで見境なく突撃してくるとはどこまで愚かなんだ?これでは軍隊ではなくただの馬鹿者らでしかない。こっちは好都合だけど)」
自分は状況を全て把握してそう判断した。
「(ミリオン)」
「(はい、なんでしょうか)」
ミリオンら魔術師部隊に命令を伝える。
「(新しく創り出した『新魔術』は設置し終わったか)」
「(全て完了しています)」
これでほぼ敵は詰んだことになるな。
「(ハクロウ、この『新魔術』は恐ろしくすごいのですが、その・・・)」
どうやら何か思うところがあるらしい。
「(どうした)」
「(助けられる騎士や兵士はどうしますか?)」
「(装備などは全部剥ぎ取れ)」
「(そうではなくこの『新魔術』を使えば助かる見込みが無いと思いますが)」
確かにそうだろうな、単純で簡単そして凄まじく強力だから。
「(敵に情けをかけろとでも?)」
「(どうにかならないでしょうか)」
「(敵が追い詰められて捨て身で反抗してきたらどうするつもりだ)」
「(・・・)」
反論が出てこないだろうな、どんな敵でも最後まで足掻く敵は多いのだから。だからこそ徹底的に叩き潰さないといけない。
「(ミリオン、気持ちは分かるがこの残酷な世界で誰かを救うには力が必要だ。君だって奴隷として売られている同胞を救いたいという願いがあることも知っている。それならばどうすればいいか答えはもう言っているはずだ)」
何かを飲みこむような気持ちだろうな、この世界の状況はそれほど酷いのだから。
「(敵の中に君の同胞はいない、ならば殺しても問題は無いはずだ)」
「(・・・分かっております、おりますが)」
彼女の苦悩も理解はしている。ただ彼女は少しばかり綺麗すぎる。それはそれで悪くない。平和な時代ならば良きリーダーとなれると思っている。だけど世界中で魔物が溢れ軍が役立たずのこの時代では自分の考えが甘いことも理解しているのだ。
一人でも多くの仲間を救いたいなら揺ぎ無い力が必要なのだ。
ミリオンらエルフなどは争いごとを嫌う考えの者が多い。自分のように容赦なく敵を殺しまくる考え方には賛同しづらいだろうな。だけど敵を見逃したからといってそれで終わりなど有り得ない。再び牙を剥いてくる可能性のほうが圧倒的に高いのだから。
力なき正義でも正義なき力でもこの世界の現実はどうしようもないのだ、奴隷の子供らに与えられる救いなど一握りの水と同じですぐさまこぼれ落ちてしまう。
(ハクロウの言っている事は誰よりも正しく強い、それ以外の方法が無いことも分かっている)
ミリオンら魔術師部隊は敵を迎え撃つ場所で待っていた。
同胞の仲間もそこそこいる、全員奴隷だ。エルフは長寿で見た目が良いのが圧倒的なので奴隷狩りに遭いやすい。そして欲望を満たす道具にもなりやすいという事だ。ハクロウに買われた人達も理不尽に捕まえられたのだ。
幸か不幸かハクロウに買われて共にいる。
「ミリオン、私達はどうなるのでしょうか?」
全員に不安の色が見えていた。
「ハクロウの指示に従いなさい、それ以外に与えられるものなどありません」
進軍してくる敵と戦えという命令。
「でも、私達は」
平和に暮らしていければいい、と。それだけのささやかな願い。それが叶えられればいい。だけど現実にはそんなことなど有り得ない。
エルフが住まう森などは戦火にさらされ維持していく事も困難な状態なのだ。ここに居る全員がそれを理解している上で故郷の森に帰りたいと願ってる気持ちも分かる。
だけどそんな自由はどこにも無い、それどころかもっと悲惨な未来が待ち受けているだろう。
『それならなぜ奴隷としてここに居る?』
すべては自分らの弱さと甘さからこうなっただけだ。平和主義は否定しないがそれならば自分らを守れる力を持ってから言えとハクロウは断言した。
「今ここで開放したとしてその後どうする?金も無い、力も無い、住む場所すらないお前達に与えられる選択肢など容易に想像がつくだろう」
仲間らが残酷に敵を殺す事に嫌悪しているのを見て「年齢高いくせに何子供のように駄々こねてるの?」と一蹴した。
「あんたらに神様はいるの?」
もちろんいる、森と自愛の神だ。
「その神様に頼んだら平和になるの?誰も傷つかず誰も失わず平和になる?お前らの奇跡には代償が無い、それは身勝手で夢物語の妄想だ」
「なんだと!」
「奇跡とは無条件に降りてくるものではない。お前達に奇跡が降りたらそれ以外に降りてくる奇跡は残酷なものだけだ。救いの無い弱者を食い潰して叶えるだけ。それが奇跡の正体だ」
いかなる教義にも書かれていない答えを言い放った。
「そこにお前らの仲間が入らないとは限らない。いや、入らなかったら他にいくだけだな」
「・・・・・・」
全員が絶句している。
「差別の無い救いは夢物語、公平な正義など存在しない。誰もが自分とその周りだけしか保護できない世の中なんだよ」
「・・・では、我らは・・・」
救われないのか、と。
「ここで生活して現実を見ていけ。そしてどうすればいいのか考えろ」
ハクロウはそれだけしか言わなかった。
「敵は目前まで迫っています。嫌だろうとなんだろうと戦わなければわが身すら守れません。『命令』のとうり敵を壊滅させるのです。それ以外に脱出できる方法はありませんし帰る場所もありません」
今の生活を奪われれば明日すら来ないかもしれない。ミリオンらは仲間ら共に敵を殺す覚悟を決めた。
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ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
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第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
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2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
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※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
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