堕ちてゆく兄と弟。愛?淫欲? 禁断のLove

コバひろ

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その18 カフェにいた女

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その日曜日。

孝介は彼女を家へ連れて来ると家族に紹介した。既に彼女の両親のところへは挨拶に行き大歓迎されていた。

彼女の名前は “冬木敦子” といい、以前付き合っていた島村久子のように目を見張る美人ではないが、穏やかで優しい笑顔の家庭的な女性だ。
父と母は彼女のことを大変気に入り嬉しそうだ。お互いの家族にとってとてもいい話であり祝福される婚約?

「お義父さんも、お義母さんも優しそうで安心しました。でも、孝介さんの弟さんにも会いたかったな...」

父と母の顔が一瞬曇ったが、それでも彼女がトランスジェンダーに理解ある女性であることを知り、ほっと胸をなでおろすのだった。

「ほんと、弟のことは恥ずかしいことで敦子がどう思うか心配だったけど、理解があって安心したよ」

「そんな、、恥ずかしいなんて言っちゃだめよ。写真を見ると私なんかよりずっと美人で嫉妬するほど(笑)」

その冗談でみんなが笑った。

「今夜、家で食事していかない?陽介も帰って来るかもしれないし...」

母が敦子を夕食に誘う。

「はい。でも、今夜は色々やることがあって、今度ご馳走になります」

こうして、冬木敦子を両親に紹介することが出来た。
これから結婚の準備でふたりは忙しくなって行くだろう。
小林孝介26才、冬木敦子24才である。

「じゃ、駅まで送っ行くよ。駅前のカフェでお茶でも飲もう」



家から駅までゆっくり歩いても15分程の距離。駅前のカフェに入った。

「弟の陽介にも敦子と会ってほしいと話したんだけど、今朝になって急に用があるって出掛けたんだ。あいつシャイなところがあるから女装姿を見られたくないなら男の格好でいいじゃないか!って言ったんだけど...」

「楽しみはあとにとっておくわ...」

取り留めのない話をした。

「じゃ、そろそろ出ようか? その前にちょっとトイレに行って来る」

店のトイレに向かうと、なにか妙な視線を背後から感じた。ドアを開けながら背後にチラッと目をやると、白地に花柄のタイトなワンピース姿の女が孝介をジッと見ている。


見覚えのあるワンピース。

それにあれは明らかに陽介だ。


(陽介は出掛けたのではないのか? 何をしているのだ...)

用を足してトイレを出ると、孝介は陽介がいた席に目を向けた。
しかし、そこに陽介の姿はなかった。

孝介は頭を傾げながら席に戻ると敦子が店の出入り口の方に目を向けながら妙な顔をしている。

「どうしたんだ?」

「ええ、、さっき、あそこの席にいた女の人が、孝介さんがトイレに入って行くのをジッと見ていたの。そして、立ち上がると私を凄い顔で睨みつけて店を出ていった。とても美人だったけど、なんだか怖い...」

「・・・・・・」

孝介はイヤぁ~な不安を覚えた。
その女が自分の弟であることを敦子に言うことは出来なかった。
弟とのことは過去の過ち、男同士でそれも血の繋がった兄弟なのだ。
何かの間違いで禁断の壁を超えてしまうこともあるだろう。そうだとしても絶対に結ばれることはないのだ。
それは陽介だって分かっているはず。
(敦子とのことは、陽介にも祝福してもらいたい。分かってくれるはずだ...)


その夜。

父、母と楽しく食卓を囲んだ。
ふたりとも、敦子の穏やかで家庭的な雰囲気が大変気に入ったようで機嫌が良い。いつもは無口で仏頂面ばかりの父が、珍しくお酒を飲み愉快そうに声を上げて笑っている。

「ただいまぁ~!」

夜9時を過ぎた頃、玄関から陽介の声が聞こえるとリビングに顔を出した。
女装は家の中だけという約束の手前、
男姿ではあるが中性的に見える。
近所でも陽介の女装に気付いている者は多く公然の秘密となっていた。

孝介は昼間カフェで見た陽介のワンピースはどこで着替えたか?メークはどこでしたのか考えていた。家を出る時も男姿だったからだ。
(カフェで俺を見ていた女、敦子を睨みつけた女は陽介ではないかも...)

「陽介! 孝介の婚約者に会えば良かったのに、素晴らしい女性だったぞ!」

機嫌良さそうに、父は陽介に声をかけた。陽介は俯いたままだ。

「外で友達と食事してきたのでいりません。疲れたので休みます...」

陽介は二階の自部屋に消えた。


そのまま何事もなく一週間が過ぎた。

その週の土曜日は仕事は休み。
今日は敦子とのデートの約束があり、午後になると身支度を整え家を出る前にリビングに顔を出した。
父と母は留守だったが、ソファーに腰掛けている陽介の姿にドキッとした。

「よ、ようすけ! お、おまえ、、」

白地に花柄のタイトなワンピース。
それにこのメークと髪型は明らかにカフェにいた女そのものだ。

「ど、どうしたのお兄ちゃん。僕の格好可笑しいかな?」

「お、おまえ、あの時、俺と敦子のあとを尾行してたのか?」

「うん。お兄ちゃんの彼女、敦子さんと言ったっけ? とても優しそうで性格の良さそうな女性だね」

「なんだって、尾行なんか...」

「直接会うのは恥ずかいいからだよ。それよりお兄ちゃん、結婚しても僕との関係続くよね? 男同士だから子どもは出来ないし、兄弟だから不倫にもならないよね? セックスしよ」

「陽介!それはいけないことなんだ。
過ちだった。俺は家庭を持つ、お前はおまえで彼女か彼氏でも作った方がいいと思うよ。な、兄弟で異常だろ? 敦子とのことは祝福してほしい...」 

「お兄ちゃん、それ、本気で言ってるの? 僕を裏切るの?」

「裏切るって、おまえ、、今日はこれから出かける。また相談しよう。今日は尾行するんじゃないぞ」

埒が明かないので、孝介は弟を振り切るようにして家を出た。



“お兄ちゃんを奪った冬木敦子という女を僕は絶対ゆるさないよ”

陽介は嫉妬の炎を燃やした。

事態はとんでもない方向へ。

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