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第1章 幼少期を変える!!
14 3人で一緒に
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私が執事に案内された場所は、いつもの応接室ではなかった。
(何? ここ?)
私は初めて案内された部屋に戸惑ったが廊下に立っているわけにもいかないので部屋に入った。
部屋の中には大人が3人は眠ることが出来そうな大きなベッドに、豪華なテーブルとソファーが置いてあった。
(ここって……宿泊用の客間……だよね?)
私はなぜ宿泊用の客間に通されたのかわからなくて首を傾けた。
すると、ノックの音がして執事が私に「私が対応してもよろしいでしょうか?」と尋ねたので「お願いします」と答えた。執事は扉を開けると私を見ながら言った。
「アルフレッド殿下と、ランベール殿下がお見えです」
「え? すぐにお通しして下さい」
「かしこまりました」
そして勢いよく扉が開くと二人が駆け込んできた。
「ジェイド。痛みはあるか?」
「治療は終わったのか??」
私は二人に向かって「治療は終わりましたが……なぜ私はここにいるのでしょうか?」と尋ねた。するとアルフレッド殿下が心配そうに口を開いた。
「ジェイドの家には、『今日は城に泊まる』と連絡を入れた。今夜は熱が出ると言っていた。……一緒に過ごしたい」
真剣な瞳を向けるアルフレッド殿下に私は思わず叫んでいた。
「ええ!? そんな、いいですよ!! そこまでご迷惑かけられません」
熱が出るかもしれないとは言われたが、薬も貰ったし、二人だって色々あって疲れただろうからゆっくり休んでほしい。
私の言葉に今度はランベール殿下が口を開いた。
「何を言ってる!? 迷惑なものか!!」
二人の真剣な顔を見て、私の方が根負けした。
「わかりました……では……今日はお世話になります」
その後、私は3人でこの部屋で夕食を食べた。そして、二人の王子殿下はそれぞれの部屋で入浴を済ませたが、私はお湯と布を借りて身体を拭いた。
そしていよいよ寝る時間になったが……
私にベッドに入るように言った後に、アルフレッド殿下とランベール殿下は、ベッドの横に椅子を置いて私をじっと見ていた。
私は、恐る恐る尋ねた。
「あの……まさか、私が眠るまでそこに座って様子を見る……なんて言いませんよね?」
するとランベール殿下が当たり前のように言った。
「安心しろ。眠るまではなく、一晩中ジェイドの様子を見ているつもりだ」
「本気で止めて下さい。気になります。とてつもなく気になります!!」
私はベッドから起き上がると、二人に向かって懇願した。
こんなところで王子殿下二人に見張られるなんてどんな罰ゲームだろうか?
本気で願い下げだ。
私の心からの叫びを聞いて、アルフレッド殿下が困ったように言った。
「だが……今夜は熱が出ると言っていただろう? どうしても側を離れたくないのだ。寝てしまえば気にならないはずだ。だから、頼む。ジェイドの側にいたい」
しゅん、と音が聞こえそうなほど二人はこの場を離れたくないという表情で私を見ていた。
(王族をベッドの横に座らせて、自分だけこんなに豪華なベッドに寝る?? いや~~何度考えても有り得ない!!)
私は、小さく息を吐くと二人に苦肉の策を提案した。
「……では、一緒に寝ませんか? このベッドかなり大きいですし……」
すると、アルフレッド殿下とランベール殿下は一瞬顔を見合わせた後に頷くと私を挟んで、ベッドに入って来た。
右からアルフレッド殿下が……左からランベール殿下が……
「え? どうして私が真ん中?」
思わず呟くと、アルフレッド殿下が口を開いた。
「両方から見ていた方が状況に気付けるだろう?」
私はあまりにもアルフレッド殿下が真剣なので「そうですか」と言ってこの状況を受け入れた。
今の私は、殿下たちにとっては同性の友人なのだ。
一緒に寝るからと言って特に深い意味などない。
ただ純粋に私を心配してくれているだ。
そして私たちは3人でベッドに寝っ転がった。
「私はきっと、今日のことを生涯忘れることはないと思う。私は……まだまだ何も知らないのだ、と思い知った」
ふとアルフレッド殿下が天井を見ながら呟いた。
「私もだ……知らないことばかりだ……」
ランベール殿下も呟くように言った。
私としては知らないことがあると素直に自分の現状を受け入れ、自覚できる二人はとても素晴らしいと思えた。
するとアルフレッド殿下が肘を立てて、手の平に自分の頭を乗せ、私たちの方を見ながら楽しそうに口を開いた。
「いつか……もっと強くなって、市井に詳しくなったら……3人でこの国を見て周らないか? 自分の住む国がどんな国なのか、どんな人が住み、どんな場所があるのか、この目で見てみたい」
アルフレッド殿下の未来を映す瞳がとても美しく思えた。
するとランベール殿下も呟いた。
「3人で国中を周るか……いいな……視察を口実にすれば比較的早くに実現できそうだ」
「ランベール、冴えているな。それはいい考えだ」
アルフレッド殿下が明るい声を上げた。
「キーゾク学園を卒業したら、すぐにでも行きたいな……」
「ああ、いいな!! 視察ということで話を進めよう」
私は嬉しそうに話しをする二人を目を細めながら見ていた。
きっと二人はこれからこの国だけではなく、隣国や、海を越えた先にも行けるかもしれない。
たくさんの人と話をし、たくさんの風景に出会い、たくさんのかけがえのない経験をするだろう。
しかし……
その未来に、私はきっと……いない。
(ああ、私はどうして……女の子に転生してしまったんだろう……)
せめて男だったら、必死で努力して二人の護衛になったり、側近になったり……二人と一緒に歩んで行ける道もあったかもしれないのに……
私は悲しさを隠して笑顔で言った。
「ふふふ、実現するのが楽しみですね」
アルフレッド殿下とランベール殿下はとても綺麗な笑顔で言った。
「ああ」
「そうだな」
その後、3人で色々な話をしたのだった。
◇
「それで、フレッドはどうなんだ?」
「……」
「……フレッド?」
話は尽きなかったが余程疲れていたのか、ランベール殿下の問いかけにアルフレッド殿下の返事がなくて、横を向くとアルフレッド殿下が目を閉じて寝息を立てていた。寝ている顔はあどけなくてとても可愛いと思った。
「アルフレッド殿下、寝ちゃったみたいですね」
私はランベール殿下の方を見ながら言った。
ランベール殿下と目が合うと、ランベール殿下が優し気に言った。
「ああ、疲れたのだろうな……」
「そうですね……」
きっとランベール殿下だって疲れているだろう。
そろそろ話を終わらせて寝た方がいいかもしれないと思って天井を見た。
すると、ランベール殿下が口を開いた。
「なぁ、ジェイド……」
「はい?」
私は、ランベール殿下を見つめた。
月明かりで見えるランベール殿下の真剣な顔はとても綺麗で……心臓が跳ねた。
「俺とフレッド。どちらかしか選べないとしたら……どちらを選ぶ?」
私はとてつもなく難しい質問をされて、ランベール殿下から視線をそらして天井を見ながら答えた。
「そうですね~~。ランベール殿下の前では、『ランベール殿下』と答えて、アルフレッド殿下の前では『アルフレッド殿下』と答えますね」
「ふっ、ズルい答えだな」
ランベール殿下が笑ったので、私は顔だけランベール殿下の方を見ながら言った。
「私がズルくなるような質問をするからですよ。つまり、答えられない。答えなんてない質問だったというわけです。きっと状況によると思いますので……」
「状況か……確かに……困らせる質問だったな……忘れてくれ」
ランベール殿下も私から視線をそらせて天井を見た。
私はそんなランベール殿下に尋ねた。
「……でも、そんな質問をするということは……ランベール殿下の中でそんな風に聞きたくなるような心境になったということでしょう? どうしてそんな質問をしたのか、理由は知りたいかもしれません」
「理由……何だろうな……ジェイドを……いや、たいした理由はないのかもしれないな」
ランベール殿下はそう言った後に、私に背を向けると「ジェイド……おやずみ」と言った。私もランベール殿下の背中に向かって「おやすみなさい」と言ったのだった。
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