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本編
12 糖度8 (大変甘いです)
しおりを挟む今日は最後のハプニングキスイベントであるハイキングの日です。
いよいよこの日がやってきました。
こんなにもディラン様が私に優しくしてくれるのも今日までなのかと思うと泣きたくなりますが、ディラン様と、この国の未来のためにもハイスペック令嬢であるナターシャ様が王妃になった方がいいのは明確なので私は今日を力いっぱい生きることにします!!
+++++
私たちは馬車の中で甘く楽しい会話をしながら、無事に王家の持ち物である洋館にたどり着いた。
洋館に用意されている私の部屋に案内され荷物の整理が終わった頃、ディラン様が私の部屋を訪ねて来た。
「キャメロン、今日は天気もいいし、早速バルコニーに出てみない?」
「はい」
私たちは湖が一望できる景観の優れたバルコニーに出てみることにした。
「鏡みたい!! 素敵!! 風景が湖に映ってまるで絵の中にいるみたいです!!」
私はバルコニーの手すりに寄ってうっとりと湖を眺めた。
「本当だ。綺麗だね」
するとディラン様が私の後ろから抱きしめるように手すりに置いていた私の手の上に手を重ねた。
ディラン様とくっつのにも慣れたとはいえ、さすがにこの体勢は恥ずかし過ぎた。
(ううっ!! ディラン様の心臓の音が聞こえるし、体温の感じるし、ディラン様の顔をすぐ近くに感じて、幸せだけど、恥ずかし~~~~!! しかもここって外だし!!)
私が悶えているとディラン様が少しだけ困った声を出した。
「何考えてたの?」
「え? あの、その……ディラン様の心臓の音を感じて、幸せだな~って思ったんですけど、ここが外だと思うと恥ずかしくて」
私は素直に思っていることを伝えた。すると突然ディラン様にぎゅっと抱きしめられた。
「ああ、もう♡ 可愛いな~~本当に♡ 大丈夫。まだみんな到着していなよ。それにここは岩影になってるから他の別荘や洋館からこちらは見えないようになっているんだよ? 安心した?」
ディラン様は丁寧に説明してくれた。
「そうなんですね!! それなら、ディラン様にたくさんくっついても大丈夫ですね!!」
私はほっとして、可笑しなことを言ってしまったことに気が付かなかった。
「え?! それって、つまり……キャメロンは、他の人に見られなければ僕とたくさんくっついていたいってこと?」
ディラン様の言葉に、ようやく私は自分の失言に気づいた。
「申し訳ありません!! 私ったら、淑女らしからぬことを!!」
チュッ♡
「ひゃぁう!!」
ディラン様に後ろから抱きしめられながら耳にキスをされて思わず酔狂な声が出てしまった。
「ふふふ。どうしてそんなに僕を煽っちゃうのかな……ここには僕と君しかいないんだよ? わかってるの?」
ディラン様が普段よりも妖艶さを増した声が耳のすぐ近くで聞こえて鼓膜を激しく刺激した。
(う……この声だけで、倒れそう……)
私は、この空気を変えるために慌てながらディラン様に話しかける話題を探した。
(ディラン様の声により一層甘さが増した気がする。この声を聞き続けていたら、確実に私の理性が持たない!! 考えるのよ!! この空気を変える話題……あ、そうだ)
「あっ!! そうだ!! ディラン様」
チュッ♡
「ふひゃう!!」
今度は耳の後ろにキスをされて私はまたおかしな声を上げてしまった。
「ん? どうしたの?」
私は耳を抑えながら、ディラン様の腕を押すとディラン様と向かい合った。
「あの!! ディラン様、雨具は持って来て頂けましたか?」
「……持ってきたよ。でも、キャメロン。雨が降ったら洋館から出ない方がいいと思うよ?」
(私ではなく……使うのはディラン様ですよ。例え必要な事とはいえディラン様に濡れてほしくないのです)
私はディラン様に心配をかけさせないように笑って見せた。
「はい」
するとディラン様が切なそうな顔をして、私の肩を抱き寄せた。
「そろそろ風が出てきたね。中に入ろうか」
私は風に吹かれて少しだけ乱れる髪を抑えながら「はい」と頷いた。
私たちが部屋の中に戻ると、執事が慌ただしく部屋を訪れた。何度か見たことがある人物だったので、きっとお城からディラン様のお世話に来ているのだろう。
「ディラン様。ご報告がございます。先程皆様が洋館にたどり着いたとのことですが、ナターシャ様が行方不明とのことです」
「何?! ナターシャが?!」
いつも冷静なディラン様が酷く動揺しながら執事に詰め寄った。
「はい。現在、男性教師と上級騎士のブルーノ様、学院の護衛、および皆様がご宿泊予定の洋館の護衛。総勢20名程でお探ししているとのことです」
(そんなに大勢で主人公を探してたんだ……)
ゲームではディラン様が見つけてくれたので、ディラン様だけが探してくれたのかと思っていたが、実際はこんなに大勢で探してくれていたようだった。
またしてもゲームの裏設定を知ってしまった。
「そうか。わかった、私も行こう。ヘンリーとカーターを呼べ!! その他の護衛は予定通りこの洋館の護衛を続けるようにと伝えろ」
ヘンリー様とカーター様はディラン様専属の護衛騎士で護衛の騎士の中でもエリート中のエリートだ。
「畏まりました」
執事は頭を下げると素早く扉の外に向かうと、すぐにディラン様が私の両手を握った。
「すまない。ちょっと行ってくる。キャメロンは決して洋館から出ないでほしい」
「わかりました」
(ああ、やっぱり探しに行かれるのね)
正直に言うと、私はこのまま、ディラン様が私と一緒にいてくれるのではないかと思っていた。
だが、やはりディラン様は探しに行かれるようだった。
(大丈夫。覚悟してたじゃない。大丈夫。絶対泣かない。笑顔で見送る。泣かない。泣かない。泣かない)
私は唇を噛むと、ディラン様の背中に向かって叫んでいた。
「ディラン様……あの!! 雨具を必ず持って行って下さい!! お願いします!!」
「ああ。わかった。持って行こう」
ディラン様が少し驚いた顔をしたが私の方を見て頷いてくれた。
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