雪合戦までの25日間【図書委員長が兵法使ってみた】

たぬきち25番

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雪合戦まであと11日

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 月曜の最後の授業は学活だった。
 今日は誰がどの係になるのかを決めることになる。

「……というわけで、まずは自分の得意なことを活かせる場所を選んでもらうことになります」

 このクラスは、全員で38人。
 大将の平塚、軍師の俺、そして各将軍4人を抜いて残りは32人だが、川中と佐々木はすでに指令に行くことが決まっているので、のこり30人。
 3カ所に分かれることになるので、それぞれ大体10人ずつくらいに分かれてくれればバランスはいい。
 平塚が説明する間に俺は黒板を3分割した。
 そしてそれぞれに、【攻め】・【守り】・【作る】と書いた。

 平塚は説明が終わると、後ろを振り返り黒板を確認した。
 そして俺を見て小さく笑うと今度はみんなの方を見た。

「それじゃあ、それぞれ自分のやりたい担当に名前を書いてください。10分以内でお願いします」

 そして平塚がタイマーをセットすると、俺と平塚は窓際に移動した。

「上手く分かれるといいな」
「うん。大体10人くらいずつになると理想」
「だな」

 人数さえも決めずに、くじなども使わずに自由に選ぶというのは、賭けだ。
 なぜなら、人数がかなりばらける可能性もある。
 でも、俺と平塚はみんながそれぞれ、自分の力を発揮できる場所を選んでもらうことを優先して、自分で選んでもらった。

 少し緊張しながら、タイマーを見ていた。
 そして10分が経ってタイマーが鳴るとみんな自分の席に座った。

(やっぱりこうなったか……)

 俺は平塚と顔を見合わせた。
 実は、雪玉を作る人数が多いだろうとは予測していたので、今回の結果はおおむね予想の範囲内だった。
 
【担当希望結果】

 攻め  6+(1)《7》
 守り  9+(1)《10》
 作る 15+(1)《16》

 将軍を入れて、攻めは7人、守りは10人、雪玉作りが16人に決まった。
 俺は黒板のそれぞれの担当の横に人数を書いて行った。

「あ~~、平塚。口を出したくはないが……どうするつもりだ?」

 担任の原岡先生が平塚を見ながら尋ねた。
 平塚は打合せ通りに平然と答えた。

「これからの練習で、少し調整するかもしれませんが……これでいきます」

 途端にクラス内が騒がしくなった。

「攻めが少ないくないか?」
「作るの多すぎだろ……」
「バランス悪いって」

 皆は不安や不満を口にしていたが、平塚は堂々と声を上げた。

「それでは皆さん、それぞれの担当で集まって下さい。攻めは前の方の右側で、守りは前の方の左側。作る人たちは後ろで、指令は教壇の辺りに集まってください」

 全員がのろのろと移動する中、平塚が俺を見た。

「じゃあ、俺は人数の多い作るに行って、今後の説明するわ。攻めと、守り……あと、時間あったら指令もよろしくな」
「うん」

 俺は人数が少ないせいか、素早く集まった攻めの人たちが集まった場所に向かった。
 すると山岡が機嫌よく話かけてきた。

「おう、野沢!! 人数見た時どうなるかと思ったけど、面子見たら、かなりいいかも」

 男子5人、女子2人。いずれも野球やバスケ、ソフトボールやハンドボールの経験者ばかりだ。

「そっか、よかった。攻めは体育の時間に練習もできるし、後は雪玉担当と連携を取ることだけ考えてくれればいい」
 
 簡単に説明すると山岡が笑った。

「ああ、その辺りは平塚から聞いてるし、俺たちで配列とかどうするか話し合うわ。平塚に資料もらったし」
「じゃあ、山岡に任せてもいいかな?」
「いいよ」
「お願いします」

 俺は攻めを山岡に任せると【守り】のところに向かった。

「的は10個あって、それぞれ一人ずつ守りに付けそうだ」
「誰がどこを守るか、実際の配置を見て決めたいよな~~やっぱ鈴木は中央だよな」

【守り】の担当が集まっているところに向かうと、すでに鈴木と相沢を中心にどうやって守るのかの話し合いが行われていた。

「あ、野沢。この資料何? めちゃめちゃいいじゃん!!」

 守り担当に近づくと、相沢が俺の肩を組んで来た。

「そう? ありがとう」
  
 お礼を言うと、鈴木が口角を上げた。

「わかりやすい。ここは任せてくれてかまわない」

 相沢も楽しそうに「うんうん。お任せあれ~~」と言ってくれたので、俺はここは2人に任せて【指令】に向かった。

「野沢~~遅い!!」

 西田が俺の姿を見ると、大きな声を上げた。

「ごめん」
「それで、私たちは何をすればいいの?」

 俺は3人にまとめた紙を渡した。

「……は? 暗号?」
「うん。例えば、右が集中攻撃を受けるとか、過去の作戦で例の多い作戦は暗号にするのはどうかな、と思って」

 佐々木が眉を寄せながら言った。

「例えば?」
「例えば……?」

 俺は、過去に一番多かった例を出しすことにした。

「例えば、雪玉を作ってるのは、実際に中にいる人たちには見えないから、右で作ってる人が多いとかどこかに不自然に偏りがあったら、【特盛デラックス弁当、右】……とか?」

 川中が俺をじっと見つめて呆れた顔をした。

「は? どうして、トクエツの弁当??」
「あ、いや……ほら、あの特盛デラックス弁当って他のお弁当とは一緒になくて、少し離れた場所に大量に置かれるから……暗号にいいかなって……ところで、川中さん特盛デラックス弁当の存在知ってたんだ」
「は? そんなのみんな知ってるし……」
「この辺で知らない人とかいるの? 超有名じゃん」

 どうやら、川中も佐々木もスーパーの特盛デラックス弁当の存在を知っているらしい。

「そうなんだ……」

(俺はつい数日前まで知らなかった……)

「……いいね、それ」

 するとずっと黙っていた西田が顔を上げた。

「みんな特盛デラックス弁当とかいきなり言われたら、頭の中にあのお弁当を思い浮かべてさらに『何言ってんだ?』ってなるじゃん。暗号にはかなりいいかも」
「確かに!!」

 俺は、西田たちを見た。

「3人には練習の指示出しとか、問題点を見つけたりとか、暗号作成を頼みたい。あ。練習風景の撮影でタブレットでの撮影許可はもらってるから」

 佐々木は「わかった」と言ってうなずいた。
 その後チャイムが鳴るまで俺たちは、雪合戦の話し合いをした。
 そのままHRになり、放課後になると平塚に声をかけられた。

「野沢。ちょっと、生徒会室来れる?」
「うん」
 
 俺は平塚に連れられて、生徒会室に向かった。
 この後は執行部の話し合いがあるらしく、平塚は鍵を持っていたので俺たちは鍵を開けてすぐに生徒会室に入った。すると入った途端に平塚に詰め寄られた。

「【作る】担当、少し問題かも」
「何があった?」

 俺が尋ねると、平塚が困ったように言った。

「みんな雪玉作りをバカにしてる」
「そうなんだ……」

 実はこれは危惧していたことではあった。行事などを「めんどくさい」や「やる意味がない」と言って真面目にやろうとしない人はどうしてもいる。
 
「最悪、真面目にやってくれるの2人とか3人くらいかも。後はやる気ないから一番楽そうな雪玉作りを選んだとか言ってる。策が必要かも……」
「策か……」

 ガラリと扉が開くと、1年の書記の男子生徒が入って来て怪訝な顔をした。

「図書委員長と副会長? 図書委員長……今日の集まりは執行部だけですが……それに何か近くないですか?」

 そう言って俺たちのすぐ近くにいる電気を付けて席に座った。

「俺、帰るな」
「うん。またな」

 そして俺は生徒会室を出た。

(士気を上げるか……何かあるかな……)

 俺は急いで帰って再び兵法を見直すことにした。

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