異世界ヤンキー~気がついたら舎弟が増えてた、ヤッベ!!!!!~

たぬきち25番

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3 注)主人公は最強です。つまり……戦います。Are you OK?

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「ふ~ん、ふ~ん、ふ~ん、豆腐おいしいかったな~~らんらん♪ また食べたいな~~ああ、豆腐食べたい、豆腐~~大好き、好き、好き♪」

 ペロは隣で謎の鼻歌を歌いながら歩いている。ご機嫌に棒を振り回しながら歌う姿は幼児と変わらない。
 俺は手に持っていた鞄とドローンを見ながら尋ねた。

「なぁ、ペロ。この世界にドローンとか、スマホはあるのか?」

 ペロは楽しそうに言った。

「いえいえ、そのようなものはありませんよ。そうですね~~文明レベルで言うと、この星は地球の18世紀くらいでしょうか……」
「18世紀か」

 18世紀というと、日本では江戸時代。
 当然、スマホもなければドローンもない。

(…………へぇ……)

 そんな時だ。パカパカと馬の蹄のような音とカラカラと滑車が回るような音が聞こえた。
 振り向くと、荷台を布で覆われた移動用の荷馬車が見えた。

「お? あれ、荷馬車だな。頼んで乗せてもらうか」

 するとペロが全力で首を振った。

「き、き、き危険ですよ!! どう見ても怖そうな人たちじゃないですか!!」

 ペロに言われて目を凝らしてみたが、確かにガラが悪そうだ。

「人を見かけで判断できるのか……」

 俺のいた世界でも明らかにヤバそうなヤツラに絡まれていたので、てっきり危機感がないのかと思って尋ねると、ペロははっとした。

「はっ、人は見かけで判断してはいけませんね!」

(あ、そっちの方向に会話が流れるのか……今は時間がねぇな……こいつの危機管理能力については今度ゆっくり聞くか)

 俺は鞄とドローンを木の根元に置いて、ペロを抱えて荷物の横に置いて軽く肩を回した。

「いや、全然知らないヤツを前にした時、人は見た目でしか判断できない」
「え? え? 人を見かけで判断してはダメなのでは……?」

 俺は戸惑うペロを見て「まぁ、それは今度な。今はそこにいてぬいぐるみのふりでもしてろ」と言った後に大きく手を振った。

「お~~い、停まってくれ!!」
「ええ~~見た目で判断して、声かけるんですか!?」
「……黙ってろ」
「はい!!」

 ペロは素直に口に手を当てた。しばらく手を振っていると、馬車が近づいて来た。
 明らかに一般人ではない出で立ちだったが、俺の前の前で荷馬車を止めた。
 そして3人のうちの一番身体の大きなスキンヘッドの男が降りて来た。

「親分、こいつはなかなか上玉ですぜ」

 そして手綱を持つ男の隣に座っていた男が、馬車の上から俺を舐めるように見ながら言った。

「ああ。色んな嗜好のヤツに売れそうだ。傷は極力つけるなよ」
「へい」

 今の会話。
 どう考えても悪人の会話だ。

(うん、カメラもないし、相手は明らかに悪人……こりゃ、久々に遠慮はいらねぇな)

 俺はこちらに向かって来た大柄の男を足払いで転がして、倒れた隙に剣を奪った。
 いつもは証拠を残されないように最低限の動きで対処していたが、記録できる機械のない世界は随分と楽だ。
 そして起き上がろうとした男の後ろに回って首元に手刀を入れて気絶させた。

「こいつ!!」

 今度は、二人とも降りて来た。
 奪った剣で、先に下りて来た男の短剣を吹き飛ばした後に、拳で殴りつけ地面に倒した後に、もう一人の男の剣を払い落して、足蹴りで倒した。

「もう終わったな……」

 予想よりも随分あっさりと3人が地面に倒れたので物足りなく思っていると、ペロが大きな声を上げた。

「さすが!! お強いですね!! なるほど、見た目である程度倒してもいい相手とダメな相手を見極めろということだったのですね。なるほど、なるほど、さすがヤンキーですね」
「ヤンキー?」

 あまり日常で聞かない言葉が飛び出して首を傾けた。

「さて、荷物を荷台に入れましょう!! お持ちします……う、重い……」

 ペロが俺の鞄を持とうとして倒れた。

「ああ、鞄はいい。貸せ」

 俺は木の横に置いた荷物を持って、荷馬車の布を取ると愕然とした。

「はぁ~~あいつら……人さらいかよ……大丈夫か?」

 中には小さな子供が2人、こちらを見て怯えていた。
 一人は赤い目の女の子で、もう一人は右が金色で、左が緑の目の男の子だった。
 二人共酷く痩せているが、10歳くらいだろうか……
 口を閉じさせられていた布と、手の縄を切ってやったが、二人は怯えた目を俺を見て震えている。

(弱ったな……子供苦手なんだよな……)

 いつも子供には泣かれるので、どうしたものかと考えていると、ペロが荷台に飛びあがり、子どもたちの前で両手を広げた。

「ああ、怖かったですね。でもご安心を!! は子供や動物には決して手を出しません」

 子供たちは、きょとんとした顔をした後に首を傾けた。

「総長?」
「総長?」

 だが俺も彼らと一緒になって首を傾けた。

「……総長?」

 遠い異世界に来てまで、俺はなぜか総長と呼ばれることが不思議だった。
 だがペロはそんな俺に気付かず相変わらず楽しそうに声を上げていた。

「はい、そして私は総長の舎弟、ペロと申します」

 いつの間に俺に舎弟が出来たのだろうか?
 そもそも俺は舎弟を募集したことなど一度もない。

「総長は、ヤンキーという方々の頂点に立つお方で、大変お強く、あなた方をさらった男たちはすでに倒してしまわれました!! さぁ、もう家に戻ってもいいですよ!!」

 ヤンキーとか、総長とか、舎弟とか色々見解に相違点はあるが、子どもを家に戻すのが先なので、俺はひとまずこの場をペロに任せることにした。

 
 





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