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第二章 霧のかかった未来
19 星祭りの腕輪(1)
しおりを挟むそれから、2つの季節を見送って、雪がちらつく季節になった。『ああ、またこの季節が来たのか』と、皆は懸命に冬を越える準備をする。
本格的な冬が来ると、雪深くなる王都では、雪と一緒に星の精霊がこの地に降り立つことに感謝して、星祭りが行われる。
皆は家の中を、飾り付けて、明るい雰囲気になり、その日は家族で御馳走を食べて、星まつりを祝うのだ。
そして、この日は、国王陛下をはじめ、多くの王族の方が星祭りの祭典に参加される。その様子は王都の有名な画家に描き出されて、教会に次の星まつりの時期まで飾られる。
王都に住む住人にとって、この絵を見るのも楽しみでもあるのだ。
そして、ホフマン伯爵家では、毎年、男性の王族の方が身に着ける腕輪である『シュテルンリング』を作っている。絵画でも目立つように描かれる星祭りの重要なアイテムだ。
ホフマン伯爵は、おそらく、国王陛下と、王太子殿下、王太子殿下の御子息の王子殿下の3名分のシュテルンリングを作るので大変忙しくなるのだろう。
そんなある日。私とハンスは、宝石の勉強をするためにホフマン伯爵を待っていた。
「きっと、おじい様は忙しいだろうから、当分宝石の勉強はお休みだろうな~~。ねぇ、シャル。宝石の勉強がなくなったら、いつもよりたくさん遊べるね」
ハンスは宝石の勉強があまり好きではないので、宝石の勉強がなくなることが嬉しいようだった。
だが、私も最近は、宝石の勉強も忙しくなったので、一度教わるの止めて、復習をしたい気持ちもあった。
「もちろん、遊ぶのもいいけど、復習もしましょうね。宝石の見極めは、やっぱり何度聞いても難しいと思ってしまうもの」
「うんうん。宝石の見極め、本当に難しいよ。僕、全然わからないもん。でも、シャルが難しいなら僕に、わかるかな?」
「そうね……。きっと、伯爵なら……」
私が伯爵の言葉を借りようとすると、先にハンスが口を開いた。
「『何事も始めなければ、成さない』でしょ? 聞き飽きたよ」
「ふふふ。ハンス、伯爵様の言い方にとってもよく似ているわ!!」
「そう? 似てた? もう一回言う?」
トントントン!!
私とハンスが笑い合っていると、ホフマン伯爵が扉をノックして、部屋に入って来た。
「2人共、待たせてすまないね。たった今、お城から戻って来たんだよ」
ホフマン伯爵はスタスタと歩いて来ると、私たちの前に座った。
そして、数十枚のシュテルンリングの図面を広げた。
私たちが、首を傾けていると、ホフマン伯爵は、嬉しそうに言った。
「ハンス、シャルロッテ。私は先程まで、国王陛下とシュテルンリングの打合せをしていたんだ。
2人とも、王太子殿下の御子息である、サフィール王子殿下が、2人と同じ歳なのは、知っているだろう?」
「はい、もちろんです」
「はい。存じております」
私はハンスは、すぐに答えた。貴族の基礎教育において、王族の方について学ぶのは当たり前のことだ。
「結構。では、話が早いな。王子殿下のお使いになるシュテルンリングリングの図面を引いて見るかい?」
ホフマン伯爵は真剣な顔で言った。
王子殿下のシュテルンリングの図面を私たちが引く?
一応、図面の引き方は教わっているが、私たちにはまだ、王族の方に見せれる程の技術はない。
「え?!」
ハンスが驚くと、ホフマン伯爵は少しだけ顔を緩ませた。
「まぁ、図面を引くのは家の職人にやらせるとして、2人には、アイディアを出して貰いたいんだ。 私も、2人の案が通らなかった時のために、一応図面を用意しておくから、選ばれるかどうかは、2人次第だけれどね」
王族の方がお使いになるシュテルンリングのアイディア?!
私とハンスはお互いに顔を見合わせ、頷き合った。
「やります!!」
「ぜひ」
私たちの言葉にホフマン伯爵は嬉しそうに笑った。
「これまで、教えた知識を総動員して、いいものを考えておくれ」
「はい」
「はい」
私とハンスはこの日から、とても忙しくなったのだった。
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