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幕間 ハンス SIDE
45 ハンスSIDE 1
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【ハンスSIDE】
「ハンス~~お誕生日おめでとう~~!!」
お母様がぎゅっと抱きしめてくれた。
「ハンスも、もう5歳かぁ~~。大きくなったな~~」
お父様が優しく頭を撫でてくれた。
5歳の誕生日はホフマン伯爵領で迎えた。お父様とお母様、そしておじい様の笑顔に囲まれて、今思えば、あの時が一番幸せだったのかもしれない。
お父様と、お母様が宝石の勉強をされる関係で、幼い頃は、領内の屋敷に家族4人で住んでいた。
いつも、お母様と庭を散歩して、お父様とお母様が宝石の勉強をしている時は、同じ部屋で積み木をしたり、絵本を眺めて、少しの休憩時間に「ハンスは静かに遊べていいこね~」とお母様や、お父様、おじい様にやさしく頭を撫でられるのが嬉しかった。
貴族学院に入学するまでは、ホフマン伯爵領で家族で過ごすはずだった。
――そう、家族で過ごすはずだったんだ。
あの、家族をバラバラにする原因になったマッローネダイアさえなければ……。
☆==☆==
私にとっての厄災の日は、突然訪れた。
その日は、採掘場から寄せられる地層確認の石を使った勉強をしていた。私もいつものように部屋の隅で絵本を読んでいた。
「ん? なんだ? この光は?」
おじい様が、採掘場から寄せられる地層の確認として寄せられる石を検品していると、突然ルーペを外して、石を眺めた。
「どうしたのです?」
お父様が尋ねると、おじい様がこれまで見たこともないような真剣な顔で言った。
新しい鉱石の発掘技術がもたらされて、これまでとは見つからなかった宝石が見つかるようになった。加えて、おじい様の慧眼は、見落としていた宝石さえも見逃さなかったのだ。
おじい様は真剣な顔をして、お父様と、お母様に白い石を見せた。
「白い石のようですが…」
「そうですね…白い石です」
私も歩いて行って石を見たが、お父様とお母様が言われるように、ただの白い石に見えた。
「わからないのか?! ジャック!! ジャックを呼べ!! すぐにだ!!」
おじい様は、執事に向かって大きな声をあげて、急いで他の石を調べ出し、数個の白い石を取り出していった。
「お呼びですか? 旦那様」
宝石彫刻師のジャックが慌てて姿を見せた。
「すまないが、この場で、この石を磨いてくれ」
ジャックは石を手に取った。
「はい」
「いいか、磨き過ぎるな。中の黄色が少し見える位で構わない」
「はい」
ジャックは、一度、領主の館内にある宝石加工室に戻り、道具を持ってくると、おじい様の目の前で、宝石を磨いてみせた。すると、淡く輝く黄色が次第に大きな光を放つようになった。
「そこまででいい。他のも頼む」
「はい」
お父様と、お母様と、私は意味もわからずに、ただ、おじい様たちのやり取りを見ていた。
「仕事中にすまなかった。戻って構わない」
「はい、旦那様」
ジャックは、仕事場へと戻って行き、部屋にはまた4人になった。
すると、おじい様が力なく、ソファーに沈み込んだ。
「なんということだ……まさか、この宝石が、我が領で採取されるとは……」
おじい様が、額に手を置いて、呟いた。
「どうされたのです?」
お父様が、尋ねるとおじい様が、真剣な顔をして、こちらを見た。
「これは、恐らくマッローネダイアだ」
「マッローネダイア?! あの、ここからずっと離れた国のリーアベシ地方でしか取れないと言われているあの?!」
「ああ、きっとこの国の鑑定士では、断定は出来まい。これから、陛下にご相談に行ってくる。マッローネダイアなど……私でさえ、恐ろしい。騎士団に連絡して護衛を頼もう。私設の護衛では何かあった時に、責任が取れない」
「わかりました。では、私はすぐに騎士団に連絡を」
お父様がバタバタと走って、出て行った。
「では、私は王都まで移動の準備と、王都滞在の連絡を」
「ああ、すまない」
「いえ」
お母様も、急いで部屋を出ていた。
おじい様は、残りの宝石をもう一度、真剣な顔で見直し始めた。
幼いながらに『何か大変なことが起こったのだろう』とは思っていたが、その時の私は、これから訪れる未来をまだ想像してはいなかった。
☆==☆==
「父上が王都に常在?!」
王都から戻ってきたおじい様に、向かってお父様が信じられないと言った顔をした。
「ああ、鑑定の問題もあるし、保管の問題もあるし、この宝石をどう分配するかで、内乱、または周辺諸国との戦が起きるレベルの貴重な宝石だ。数年は、陛下とご相談して、流通を管理しなければならない」
「では? 仕分けの引き継ぎはどうします?」
「数年、様子を見るか……私だけが王都に行こう。ハンスが貴族院に入学する数年前には、私もこの領に戻れるだろう。それまで、仕分けは王都で行う。騎士団が毎回護衛をしてくれると陛下の許可も頂いた」
「騎士団が毎回護衛を……それは、有難いですな」
「ああ。では、後は任せた」
「はい」
そう言って、おじい様は、1人王都に向かった。
おじい様と離れるのは寂しいが、お父様とお母様が近くにいてくれるので、私にとっては少し寂しい日常くらいの変化だった。
それが大きく変わったのは、6歳になったばかりの頃だった。
☆==☆==
「領主様!! 王都から連絡です。至急とのことです」
王都からの連絡が入り、父上が手紙を読むと顔色を変えた。
「どうされたの?」
お母様が、心配そうに顔をお父様に寄り添った。
「父上が、倒れた」
「え?!」
「私は、急いで王都に向かう」
「え、ええ。気を付けて」
その後父は王都に向かった。王都に向かうお父様を、お母様と一緒に見送った。
「ねぇ、お母様。おじい様、大丈夫?」
すると涙を浮かべたお母様が、私をきつく抱きしめて涙を流した。
「大丈夫、大丈夫よ」
そんなお母様に抱きしめられながら、私は不安で胸が押しつぶされそうになったのだった。
☆==☆==
その後、王都から疲れた顔でお父様が戻られた。
そして、つらそうな顔で、私とお母様に告げた。
「父上の命は、もって、あと数年とのことだ。
ここ数年の……無理が……原因……。
くっ!! 母上が亡くなって、父上は、宝石の仕事と領主の仕事を兼任していた!! だから私が、貴族学院を辞めて手伝うと言ったのに!! 卒業しろと言って聞き入れてはもらえなかった!!
今回だって、倒れるまで放置して!!」
「そんな……お義父様……」
お母様が信じられないと言ったように、涙を流しながら両手で口を押さえた。
「しかも、未だにマッローネダイアの価格が安定しない。マッローネダイアの影響で他の宝石の流通にも大きな変化が出ている。きっとこのまま数年は、父上はこの領には……戻れない」
「では、宝石の仕分けの勉強は?」
お母様が、顔色を変えながら言った。すると、お父様が、跪いて私の両肩を握りなら、涙を浮かべながら言った。
「ハンス……すまない。王都に行って、おじい様から宝石の知識を学んでほしい」
「え?」
私は目の前が真っ暗になった。そして、お父様を見た。
「お父様や、お母様も一緒にいらっしゃるのでしょ?」
「すまない。私たちは……一緒には行けない」
私は、すぐにお母様を見上げた。
「お母様は、一緒ですよね?」
精一杯の希望を込めて見上げたが、お母様がつらそうな顔をして首を振った。
「わかってくれ、ハンス。私はこの家を離れて、鉱石場に行くことも多い。だが、この領には多くの民が生活している。宝石ばかりに構っていれない。領民の暮らしは、お母様にかかっているんだ」
そう。わかっていた。ホフマン伯爵家は代々、男性は宝石関係の仕事をして、女性が領の運営を任されていた。だからこそ、我が家には貴族学院を優秀な成績で卒業し、領の運営などを中心に学んだ、お母様がこの家に入られたのだ。
「では……私は……1人で、王都に……行くのですか?」
「すまない……ハンス」
私の目からは、涙が流れていた。
――イヤだ!! 離れたくない。
でも、お父様やお母様を困らせてくはない。
「わかりました。王都に行きます」
そして、私はおじい様から宝石の知識を学ぶために、王都で暮らすことになったのだった。
「ハンス~~お誕生日おめでとう~~!!」
お母様がぎゅっと抱きしめてくれた。
「ハンスも、もう5歳かぁ~~。大きくなったな~~」
お父様が優しく頭を撫でてくれた。
5歳の誕生日はホフマン伯爵領で迎えた。お父様とお母様、そしておじい様の笑顔に囲まれて、今思えば、あの時が一番幸せだったのかもしれない。
お父様と、お母様が宝石の勉強をされる関係で、幼い頃は、領内の屋敷に家族4人で住んでいた。
いつも、お母様と庭を散歩して、お父様とお母様が宝石の勉強をしている時は、同じ部屋で積み木をしたり、絵本を眺めて、少しの休憩時間に「ハンスは静かに遊べていいこね~」とお母様や、お父様、おじい様にやさしく頭を撫でられるのが嬉しかった。
貴族学院に入学するまでは、ホフマン伯爵領で家族で過ごすはずだった。
――そう、家族で過ごすはずだったんだ。
あの、家族をバラバラにする原因になったマッローネダイアさえなければ……。
☆==☆==
私にとっての厄災の日は、突然訪れた。
その日は、採掘場から寄せられる地層確認の石を使った勉強をしていた。私もいつものように部屋の隅で絵本を読んでいた。
「ん? なんだ? この光は?」
おじい様が、採掘場から寄せられる地層の確認として寄せられる石を検品していると、突然ルーペを外して、石を眺めた。
「どうしたのです?」
お父様が尋ねると、おじい様がこれまで見たこともないような真剣な顔で言った。
新しい鉱石の発掘技術がもたらされて、これまでとは見つからなかった宝石が見つかるようになった。加えて、おじい様の慧眼は、見落としていた宝石さえも見逃さなかったのだ。
おじい様は真剣な顔をして、お父様と、お母様に白い石を見せた。
「白い石のようですが…」
「そうですね…白い石です」
私も歩いて行って石を見たが、お父様とお母様が言われるように、ただの白い石に見えた。
「わからないのか?! ジャック!! ジャックを呼べ!! すぐにだ!!」
おじい様は、執事に向かって大きな声をあげて、急いで他の石を調べ出し、数個の白い石を取り出していった。
「お呼びですか? 旦那様」
宝石彫刻師のジャックが慌てて姿を見せた。
「すまないが、この場で、この石を磨いてくれ」
ジャックは石を手に取った。
「はい」
「いいか、磨き過ぎるな。中の黄色が少し見える位で構わない」
「はい」
ジャックは、一度、領主の館内にある宝石加工室に戻り、道具を持ってくると、おじい様の目の前で、宝石を磨いてみせた。すると、淡く輝く黄色が次第に大きな光を放つようになった。
「そこまででいい。他のも頼む」
「はい」
お父様と、お母様と、私は意味もわからずに、ただ、おじい様たちのやり取りを見ていた。
「仕事中にすまなかった。戻って構わない」
「はい、旦那様」
ジャックは、仕事場へと戻って行き、部屋にはまた4人になった。
すると、おじい様が力なく、ソファーに沈み込んだ。
「なんということだ……まさか、この宝石が、我が領で採取されるとは……」
おじい様が、額に手を置いて、呟いた。
「どうされたのです?」
お父様が、尋ねるとおじい様が、真剣な顔をして、こちらを見た。
「これは、恐らくマッローネダイアだ」
「マッローネダイア?! あの、ここからずっと離れた国のリーアベシ地方でしか取れないと言われているあの?!」
「ああ、きっとこの国の鑑定士では、断定は出来まい。これから、陛下にご相談に行ってくる。マッローネダイアなど……私でさえ、恐ろしい。騎士団に連絡して護衛を頼もう。私設の護衛では何かあった時に、責任が取れない」
「わかりました。では、私はすぐに騎士団に連絡を」
お父様がバタバタと走って、出て行った。
「では、私は王都まで移動の準備と、王都滞在の連絡を」
「ああ、すまない」
「いえ」
お母様も、急いで部屋を出ていた。
おじい様は、残りの宝石をもう一度、真剣な顔で見直し始めた。
幼いながらに『何か大変なことが起こったのだろう』とは思っていたが、その時の私は、これから訪れる未来をまだ想像してはいなかった。
☆==☆==
「父上が王都に常在?!」
王都から戻ってきたおじい様に、向かってお父様が信じられないと言った顔をした。
「ああ、鑑定の問題もあるし、保管の問題もあるし、この宝石をどう分配するかで、内乱、または周辺諸国との戦が起きるレベルの貴重な宝石だ。数年は、陛下とご相談して、流通を管理しなければならない」
「では? 仕分けの引き継ぎはどうします?」
「数年、様子を見るか……私だけが王都に行こう。ハンスが貴族院に入学する数年前には、私もこの領に戻れるだろう。それまで、仕分けは王都で行う。騎士団が毎回護衛をしてくれると陛下の許可も頂いた」
「騎士団が毎回護衛を……それは、有難いですな」
「ああ。では、後は任せた」
「はい」
そう言って、おじい様は、1人王都に向かった。
おじい様と離れるのは寂しいが、お父様とお母様が近くにいてくれるので、私にとっては少し寂しい日常くらいの変化だった。
それが大きく変わったのは、6歳になったばかりの頃だった。
☆==☆==
「領主様!! 王都から連絡です。至急とのことです」
王都からの連絡が入り、父上が手紙を読むと顔色を変えた。
「どうされたの?」
お母様が、心配そうに顔をお父様に寄り添った。
「父上が、倒れた」
「え?!」
「私は、急いで王都に向かう」
「え、ええ。気を付けて」
その後父は王都に向かった。王都に向かうお父様を、お母様と一緒に見送った。
「ねぇ、お母様。おじい様、大丈夫?」
すると涙を浮かべたお母様が、私をきつく抱きしめて涙を流した。
「大丈夫、大丈夫よ」
そんなお母様に抱きしめられながら、私は不安で胸が押しつぶされそうになったのだった。
☆==☆==
その後、王都から疲れた顔でお父様が戻られた。
そして、つらそうな顔で、私とお母様に告げた。
「父上の命は、もって、あと数年とのことだ。
ここ数年の……無理が……原因……。
くっ!! 母上が亡くなって、父上は、宝石の仕事と領主の仕事を兼任していた!! だから私が、貴族学院を辞めて手伝うと言ったのに!! 卒業しろと言って聞き入れてはもらえなかった!!
今回だって、倒れるまで放置して!!」
「そんな……お義父様……」
お母様が信じられないと言ったように、涙を流しながら両手で口を押さえた。
「しかも、未だにマッローネダイアの価格が安定しない。マッローネダイアの影響で他の宝石の流通にも大きな変化が出ている。きっとこのまま数年は、父上はこの領には……戻れない」
「では、宝石の仕分けの勉強は?」
お母様が、顔色を変えながら言った。すると、お父様が、跪いて私の両肩を握りなら、涙を浮かべながら言った。
「ハンス……すまない。王都に行って、おじい様から宝石の知識を学んでほしい」
「え?」
私は目の前が真っ暗になった。そして、お父様を見た。
「お父様や、お母様も一緒にいらっしゃるのでしょ?」
「すまない。私たちは……一緒には行けない」
私は、すぐにお母様を見上げた。
「お母様は、一緒ですよね?」
精一杯の希望を込めて見上げたが、お母様がつらそうな顔をして首を振った。
「わかってくれ、ハンス。私はこの家を離れて、鉱石場に行くことも多い。だが、この領には多くの民が生活している。宝石ばかりに構っていれない。領民の暮らしは、お母様にかかっているんだ」
そう。わかっていた。ホフマン伯爵家は代々、男性は宝石関係の仕事をして、女性が領の運営を任されていた。だからこそ、我が家には貴族学院を優秀な成績で卒業し、領の運営などを中心に学んだ、お母様がこの家に入られたのだ。
「では……私は……1人で、王都に……行くのですか?」
「すまない……ハンス」
私の目からは、涙が流れていた。
――イヤだ!! 離れたくない。
でも、お父様やお母様を困らせてくはない。
「わかりました。王都に行きます」
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