我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

文字の大きさ
12 / 145
共通ルート

10 クリストフside1

しおりを挟む
公爵家のベルナデットとは彼女が生まれた時から結婚することが決まっていた。

婚約ではなく結婚だ。
兄は数人の候補から婚約者を選び、婚約期間を経て、結婚となるらしいが、
私には他の候補者はいないし、彼女と結婚しないという選択肢もなかった。
つまり、結婚することが絶対に確定した婚約者だったのだ。

元々そう言い聞かされて育ってきたので、異論はないし、
ベルナデットの兄であるエリックとは物心ついてから共に過ごしてきた、兄以上に
兄のような存在だったので、エリックの妹なら問題ないだろうと思っていた。

初めて会ったのは、ベルナデットが3歳、私は4歳の時だった。

まるで天使のようなぱっちりとした大きな目からは、
エメラルドよりも綺麗な瞳がキラキラと輝き、
小さな唇はバラの花のように鮮やかであまりにも美しい容姿で一目で恋に落ちた。
丹精な顔立ちのエリックやアトルワ公爵とも似ていなかったので
きっと会ったことのない公爵夫人に似たのだろう。
完全な政略結婚だが、ベルナデットとの結婚を選んでくれた父である国王陛下に
感謝した。

だが、現実はそんなに甘くはなかった。
ベルナデットは、非常に我儘な令嬢だった。
彼女は気まぐれに現れて、いつでも私の邪魔をした。
最近では、毎日のようにお茶の時間を強要し(私の予定もあるのだが・・。)
顔を見れば、イノシシのように突進してきて、私の片腕にまとわりつき、
私の世話をしてくれていた侍女には色目を使ったと騒ぎ立てた。
だが、それはまだ、許容範囲内だった。
まだ許せる。

ベルナデットは大事な社交相手にも迷惑を掛けた。
一番ヒヤリとしたのは、隣国の使者の令嬢に嫉妬し、暴言を吐いたことだ。
相手の令嬢が大人で事無きを得たが、下手すれば外交問題だった。

ベルナデットは私の人間関係もことごとく破壊していった。
彼女は使用人や従者などからの評判もかなり悪かった。
ずっと仲のよかったエリックもベルナデットの素行をいつも私に詫びていた。
側近候補筆頭であり、優秀なエリックは本来なら絶対に側近候補から外れることは
ないが、ベルナデットの行いの責任を感じ、側近候補を辞退したいとの相談を
受けるほどエリックは憔悴していた。

私もベルナデットには疲れ切っていた。
以前は好きだった顔も今は見たくもない顔になった。

そこで、私はアトルワ公爵にお願いして、
しばらくベルナデットを城に立ち入らせないようにしてもらうことにした。
責任を感じていたエリックは、城で私の側近候補として学ぶのをストップして(なんとか辞退ではなく休暇ということにした)ベルナデットの監視役として共に公爵家に籠ることになった。


ベルナデットが城に来なくなって4ヶ月、私は本当に平和だった。

ただ時折、ベルナデットがいつもくっついていた片腕が寂しい気もしたが、
あの我儘な令嬢から解放されたときの清々しさは形容しがたいものだった。
月に1度のお茶会は城に招こうと考えていたのだが、ベルナデットの妨害によって
溜まっていた雑務を優秀な側近候補のエリックの抜けた状態で、片付けていたら
いつの間にか月日が流れていたのだ。

「殿下。来月はアトルワ令嬢のお誕生日がありますが、
流石に一度お招きした方が良いのではないでしょうか?」

側近候補筆頭であるローベルがふと目をあげ、至極真っ当な提案をしてきた。
丁度滞っていた雑務が全て片付いたタイミングだった。

「ああ。そうか。もうそんな時期か・・・。
エリックに任せっきりで放置していたから、怒っているだろうな。
ベルナデットは。」

ベルナデットの険しい顔を思い出すと頭が痛くなった。

「殿下。では、エリックもこの執務室にお呼びするのはどうですか?」
「エリックもか・・。
確かにそろそろエリックの息抜きもさせてあげないと可哀そうだな。」

何カ月もベルナデットの監視を一人で請け負ってくれているエリックの名前を
出されると諦めるしかなかった。

「ええ。ですから、こちらにアトルワ令嬢をお招きすれば、
私もエリックもお傍に控えられます。
他の場所ですと人目もありますから、婚約者とのお茶会に私やエリック様が同席すると、影口を叩く者も現れるかもしれません。」
「そうだな・・。エリックの息抜きはしてやらないと、可哀そうだよな。
では、手配を頼む。」
「わかりました。」

ベルナデットのためというより、エリックのために重い腰を上げたのだった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~

放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」 最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!? ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

処理中です...