我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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11 クリストフside2

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久しぶりにあったベルナデットは別人のようになっていた。

散々文句を言われることを覚悟していたが、恨み言一つ言われなかった。
いつも不機嫌そうに寄せていた眉や、不満そうに下げられていた口元が変化し、
大きく開かれた目は、エメラルドの瞳の美しさが際立ち、口角が上がり、
穏やかな表情をした美しい令嬢になっていた。少し、おどおどとしていたが、
そんなことは問題がないくらい美しく見えた。

(エリックは一体どんな魔術を使ったのだ?)

エリックとずっと手を繋いでいたのは気になったが、あまりの顔の変化に心拍数が上がるのを感じた。
ベルナデットが掴むであろう腕を準備して、待っていると、いつもは顔を見るなり腕にくっついてくる彼女が、今日はエリックと手を離そうとはせずに、エリックの隣に座った。

「ベルナデット。座るのはそこでいいのですか?」

思わず口から出てきた言葉に自分でも驚いていた。

「は、はい。」

彼女の口から出てきた言葉に軽く絶望した。
なんとなく行き場を無くした腕が冷たくなったように感じた。

(隣に座って、腕をとってほしい。)

普段は見ない正面からみるベルナデットは本当に綺麗で、思わず目をそらして、
気を紛らわせるようにエリックに話を振った。
ベルナデットの様子が気になって視線が彼女を追ってしまうのが止められなかった。

(人は表情一つでこんなにも顔が変わるのだな・・。)

すると、ベルナデットがこちらとは逆の方を見て微笑んだ。
彼女の視線の先には、驚いて少し顔を赤くしたロベールがいた。
自分の中に黒い感情が湧き上がるのがわかった。

「どうしたの?ベルナデット?」

ベルナデットの瞳に自分以外がうつるのが嫌で声を掛けた。
すると、突然体調を崩したというベルナデットとエリックが早々に執務室から
出て行った。
部屋から出た2人を追いかけようと、扉を開けると、
ベルナデットがエリックに抱きかかえられて、仲睦まじい様子で城を去っていった。
その様子をロベールと2人で見ていた。
2人はまるで恋人同士のように見えた。
少なくともエリックはベルナデットに夢中になっていた。

(まさかベルナデットの変わった理由は、エリックに恋をしたからなのか?
まさか。でもエリックは確実に・・・。)

執務室に戻ると、自分でも信じられないほど冷たい声が出た。

「早急にベルナデットについて調べろ。半日以内だ。」
「は。」


優秀な諜報員はわずか数時間でベルナデットことを調べてきた。
調べてきた内容はとても信じられるものではなかったが、
実際に自分の目でベルナデットの変化を見てしまったので納得しないわけには
いかなかった。

(記憶喪失・・・。そんなことが本当にあるのか?
それで私にあの態度だったのか。
いつもなら私の腕に来るのに、ずっとエリックと手を繋いで・・・。)

そこで重要なことに気付きた。

(記憶を無くしたベルナデットにとって、身近な男性は今はエリック!
4ヶ月も放置したせいで、情がすべてエリックに移ってしまったのか。
しかも、今のベルナデットは誰が見ても好意を抱くような令嬢だ。
しかも、あの2人は・・・・)

報告書を手の中で思わず握り潰し、ロベールに視線を移した。

「報告書によると、毎日ベルナデットは、エリックとお茶の時間をとっているんだろう?」
「そのようですね。」
「それを明日、確実に邪魔しよう。」
「え?邪魔ですか?」

ロベールは普段から気が利くので、あまり疑問を投げかけて来ることは少ない。
あまり見れないロベールの困惑した表情は貴重だ。

「そう。きっと明日辺り、エリックが婚約破棄を言い出す可能性がある。」
「まさか。殿下とアトルワ令嬢の結婚を破棄するなんて、そんな愚かなことを、
エリックが言い出すとは思えません。」
「どうかな。そうならいいけど・・。」
「・・・。」

きっとロベールなら今の発言を全てを察してくれただろう。
椅子から立ち上がり、扉に向かいなら早口で指示をだす。

「予定よりも早くベルナデットの王妃教育を始めるように父上に進言してくる。」
「今からですか?」
「ああ。数日は執務室に籠られると聞いた。お会いできるはずだ。
ロベールは、城でのベルナデットの拠点を準備するように話を通してくれ。」
「はい。」
「エリックも数日中に城に呼び戻し、側近候補としての役目を再開させる。」
「エリックの復帰は、助かりますが・・。
来月のアトルワ令嬢の誕生祝賀会の準備が終わってからでもよいのでは?」
「そんなに待てない。すぐだ。エリックが自分の感情に自覚する前に。」
「自覚って、まさか。」

ロベールの表情が曇った。そうだ。ロベールも私と同じく、アトルワ兄妹の実情を知る一人なのだ。

「そう。そのまさかだ。」
「確かに、自覚されては厄介ですね。特にあの2人は・・。」

少しの時間も惜しいと思えたのはいつ振りだろうか。
いつになく回転する頭はまるで自分のものではないように思えた。
必死になっていた。
ただ一人の少女を逃がさないために。

「今から陛下に打診してくる。
明日、彼らのお茶の時間に確実に公爵家に行けるように予定を調整してくれ。」
「はい。」
「じゃあ、行ってくる。」
「ふふふ。」
「なんだ?」
「殿下も人の子だったのですね。」

ロベールの言葉に方眉をあげて、苦笑する。

「・・・・そうだな。」

自分でも湧き上がってくる、不安や焦燥感を持て余し、
初めて感じる感情に戸惑いながら、足を早めた。
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