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共通ルート
27 これは夢ですか?
しおりを挟む(眩しい・・・ああ。遮光カーテンならゆっくり寝れるのに・・・。
あれ?眩しい??)
目を開けると、もう日がだいぶ高く昇っていた。
「あ!!ヴァイオリンの練習!!それより遅刻?!誰も起こしてくれなかった??」
チリンチリン
ベットの脇の呼び鈴を鳴らしてマリーを呼んだ。
すると、すぐにマリーがやってきた。
「お嬢様、お身体の具合はどうですか?」
「お身体?どうにもないわ。それより遅刻じゃない?早く準備しなきゃ。」
マリーはにっこりと笑い、おでこに手を当てた。
「お嬢様失礼致します。・・・もう熱は下がりましたね。
お嬢様、本日より2週間の休暇だそうです。よかったですわ。
まだ幼いお嬢様がお休みもなく毎日お城でお勉強なんて、私も心が痛んでいたのです。
2週間。ゆっくりされて下さいね。」
マリーの言葉を聞いて頭が真っ白になった。
「え?休暇?」
「はい。昨日、疲労で倒れられたのです。当然です。」
「何日?」
「2週間です。」
「2週間?・・・14日間?」
「はい。」
「・・・・・。」
マリーが黙り込む私の顔を覗き込んできた。
「お嬢さま・・。やはりお加減が・・。」
「マリー!!!やったわ!!!」
私は思いっきりマリーに抱き着いた。
マリーは驚きながらも抱きしめ返してくれた。
「2週間の休暇なんて!!最高だわ!!ねぇ、マリーもちろん、その間、家に家庭教師が派遣されるなんて野暮なこと言わないでしょ?」
「もちろんです。完全な休暇だとお伺い致しましたわ。」
「熱も出てみるものね!」
(2週間なんて!!まるで夏休みだわ!!しかも宿題無しの!!降って沸いた幸運にどう感謝すればいいのかしら!!)
浮かれていると、トントンと扉がノックされ、兄が入ってきて、眉をひそめた。
「ベル・・。朝から侍女と抱き合って何をしているんだ?」
マリーと顔を見合わせて、2人でくすりと笑うと、兄の方に寄って行った。
「おはようございます。お兄様。」
「ああ。具合はどうだ?」
「もうすっかりいいですわ。」
兄がふんわりと微笑んだ。
「そうか・・。よかった。医者も疲労だと言っていた。あと、運動不足だろうとも言っていた。
子供は適度に身体を動かす必要があるらしいぞ?」
「・・・確かに。私、週に1度のダンスの時間しか動いていませんわ・・。」
(小学生の頃は、登校と下校で歩いて、体育もあったし、昼休みは校庭を走り回っていたわ。)
「体調がいいなら、今日はベルの好きに過ごせ。」
「好きにですか!!」
(わ~好きに過ごすなんて、何しようかしら。)
そこでふと疑問に思って兄の顔を見た。
「ところでお兄様は、お城に行かなくてもよろしいのですか?」
「ああ。私も5日の休暇を頂いた。」
「お兄様も休暇を・・・。」
(兄も休暇?あれ?さっき、確か・・・。『今日は好きに過ごせ』と言ったわね・・。『今日は』?)
嫌な予感がして、背中に汗が流れた。
「今日は好きに過ごすということは、明日はそうではないのですか?」
「そうだな。ベルの体調が良ければ、明日か明後日にハイキングにでも行くか?」
「ハイキングですか!!行きたいです。」
(よかった。てっきり、兄のことだから、運動不足解消のために剣の修行とか、ダンスとか言い出すかと思ったわ!!)
「昼食は景色のいいところで食べるか。」
「はい!嬉しいです。」
(景色のいいところでお弁当。凄く楽しみ。お弁当ってわくわくするわよね。)
「ところで今日は何をするんだ?」
兄に聞かれて考えてみた。
(ん~。突然のお休みだからな・・。何・・。あ!!)
「先日頂いた、新譜の練習をします。少し丁寧に時間をかけて練習したかったんです。」
すると、兄が目を丸くした後、楽しそうに笑い出した。
「ははは。やはり休日はヴァイオリンなんだな。」
「はい。本当に時間がいくらあっても足りないのです。」
今度は泣きそうな顔で笑った。
「そうか・・。羨ましいな。」
(兄もヴァイオリンが弾きたいのかしら?)
「もしよろしけれ・・・・。」
ヴァイオリンを兄に教えることを提案しようとすると、兄に言葉を遮られた。
「サミュエルに断られるのを覚悟で声をかけるか?あいつも忙しいだろうからな。」
「え?サミュエル先生を呼んで頂けるのですか?」
「ああ。」
(嬉しいわ!!最近の指導はクリスとのミーティングの前の数分と、週に一度、王妃教育が終わったあとに宮廷楽団で30分程見て頂くだけだったから、ゆっくり音楽のお話もできないのよね。)
気が付くと、兄に抱き着いていた。
「お兄様、ありがとうございます。ハイキングもサミュエル先生にお声がけして頂けるもの嬉しいです。幸せです。ありがとうございます。」
兄は優しい手付きで頭を撫でなでた。
「ああ。喜んでくれてよかった。」
私は、兄の顔を見てにっこりと微笑むと、兄から離れて着替えをするためにマリーのところに向かった。
「マリー今日は、ヴァイオリン三昧だから、シンプルな服がいいわ。」
マリーも嬉しそうに微笑んだ。
「はい。畏まりました。」
「では、私はサミュエルに連絡を取ってみる。」
「ありがとうございます。お兄様。」
兄はゆっくりと部屋の扉に向かった。
「私は何がしたいんだろうな。」
私は着替えることに集中して、兄の呟きは聞こえなかった。
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