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29 よくある勘違い
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「ベル。足元、気をつけろ。」
「・・・はい。」
皆様、御機嫌よう。
休暇2日目。
私は兄と2人で、楽しい(はずの)楽しい(そう思いたかった)ハイキングに来ています。
やはり、私は無知でした。
皆様はご存知でした?
ハイキングって、登山のことだったんですの。
そうです!!
登山です。
今、私は山に登ってます!!
目の前の私の兄(エリック9歳)は上機嫌です。
「ベル。見てみろ。この花はここでしか育たない貴重な花だ。」
「はぁ~。」
「ベル。足元、気をつけろ。その辺りの地盤はゆるいぞ。」
「ひぃ~。」
「ベル。もう少しでこの橋を渡り切る。気を抜くな!」
「ふぅ~。」
「ベル。あの鳥は、非常に珍しい鳥だ。出会えるなんて運がいいぞ!」
「へぇ~。」
「ベル。この木は香木としても有名な木だぞ。」
「ほぉ~。」
人って、疲れると『はひふへほ』だけでも会話できるんですね。
大発見です。
私は時々立ち止まり、疲れて両ひざに手を付き、ハァハァと息をした。
しかし、対照的に兄は普段通りだった。思わず兄に恨みがましい視線を送ってしまった。
「足を止めなければ、目的地に着く!問題ない。」
「・・・・。」
(確かにお医者様に『運動を生活に取り入れましょう。』とは言われたわよ?でも、いきなり登山はハードル高いわ!!我が兄はスパルタ鬼教官だわ!!)
私は心の中で悪態をつきながら、兄の背中を見ながら、ひたすら目的地へと向かった。
(なぜ、私はここにいるんだろう?)
何度も自分に問いかけ、ひたすら答えることのできない問いを胸に抱きながら山を登った。
ふと兄が立ち止まり、私の手を掴むと大きめの石の上に引き上げた。
「・・・うわ~~・・・。」
眼下にはいつも過ごしている城や街が見えた。あそこが王都だろう。
そして、視線を動かすと、遠くに海と王都と同じくらい栄えた町が見えた。
ところどころに集落が見えるが、やはり、王都は大きかった。
だが遠くに見える海の横の町は、その王都と同じくらい、いや見方によっては王都より栄えて見えた。
(あの海の隣の町大きいわね・・。もしかして隣国かしら?でも隣国にしては近いような・・?)
「ベル、2時の方向に大きな湖が見えるだろ?」
「え?湖??あれが?」
(海じゃなかった!!湖!?まるで、海のようだわ!!ん~でも、琵琶湖を初めて見た時、海だと思ったから・・・そんな感じかしら?)
「そうだ。あれが、隣国との国境でもあるラルジュ湖だ。」
「ラルジュ湖・・。大きいですね。どのくらいの広さがあるのですか?」
「5千平方キロメートルだと言ってわかるか?」
(5000㎢?!琵琶湖って確か、ろくろ首もびっくりな669㎢でしょ?それは、海に見えるわよね~。)
「大変大きな湖だということは理解しました。」
すると、兄が優しく微笑んだ。
「充分だ。」
そして、兄は、さらに解説を続けるようだった。
私は正直、遠くまで広がるの美しい景色をゆっくり堪能したかった。
(こんな綺麗な景色の中で授業だなんて、兄も物好きね・・。
この素晴らしい空気と、景色を堪能すればいいのに。)
兄の話を軽く聞き流しながら、大きく深呼吸して新鮮な空気を胸一杯に取り込んだ。
(身体の中が綺麗になる気がするわ~。)
そう思っていると、耳の中に恐ろしい言葉が飛び込んできた。
「あの湖のほとりの街が我がアトルワ公爵領で一番大きな街だ。」
「は?」
さらに兄はショッキングな内容を続けた。
「人口、税収など、王都よりも我が領土が上だ。」
「へ?」
(え?王様の治める土地が家臣の治める土地よりも小さいの??いいのかしら?)
「数年前に我が領は隣国の協力を得て、大規模な開拓を行った。」
「ほ~。」
(大規模な開拓?それって、いいのかしら?王家に知られたら怒られるんじゃ!!)
「一応断っておくが、陛下から開拓の許可は貰っているぞ?」
「ふ~。」
(ああ。よかった。王家への反乱分子と勘違いされて、お咎めがあることはないわね・・。)
「ベル、これから大切なことをおまえに伝える。
・・いいか?」
兄は元々とても美しい顔だが、決意ある横顔は身内びいきを差し引いても、とてもかっこよくて、頬が赤くなるように思えた。
兄はゆっくりと視線を向けると、真剣な目で見つめられた。
「私たちの行動や判断があの街すべての人々の命に繋がっているんだ。」
「・・・・。」
(私たちの行動や判断があの街すべての人々の命に繋がる・・・。)
「ひ~~~~!!!!」
ずっと実感できなかった『公爵家』の立場や存在を初めて実感した気がした。
(重い・・。重いわ!公爵家!!)
_______________
一部、修正致しました。
kenkanokka 様ありがとうございました♪
手違いで感想に掲載出来ず申し訳ありません。
「・・・はい。」
皆様、御機嫌よう。
休暇2日目。
私は兄と2人で、楽しい(はずの)楽しい(そう思いたかった)ハイキングに来ています。
やはり、私は無知でした。
皆様はご存知でした?
ハイキングって、登山のことだったんですの。
そうです!!
登山です。
今、私は山に登ってます!!
目の前の私の兄(エリック9歳)は上機嫌です。
「ベル。見てみろ。この花はここでしか育たない貴重な花だ。」
「はぁ~。」
「ベル。足元、気をつけろ。その辺りの地盤はゆるいぞ。」
「ひぃ~。」
「ベル。もう少しでこの橋を渡り切る。気を抜くな!」
「ふぅ~。」
「ベル。あの鳥は、非常に珍しい鳥だ。出会えるなんて運がいいぞ!」
「へぇ~。」
「ベル。この木は香木としても有名な木だぞ。」
「ほぉ~。」
人って、疲れると『はひふへほ』だけでも会話できるんですね。
大発見です。
私は時々立ち止まり、疲れて両ひざに手を付き、ハァハァと息をした。
しかし、対照的に兄は普段通りだった。思わず兄に恨みがましい視線を送ってしまった。
「足を止めなければ、目的地に着く!問題ない。」
「・・・・。」
(確かにお医者様に『運動を生活に取り入れましょう。』とは言われたわよ?でも、いきなり登山はハードル高いわ!!我が兄はスパルタ鬼教官だわ!!)
私は心の中で悪態をつきながら、兄の背中を見ながら、ひたすら目的地へと向かった。
(なぜ、私はここにいるんだろう?)
何度も自分に問いかけ、ひたすら答えることのできない問いを胸に抱きながら山を登った。
ふと兄が立ち止まり、私の手を掴むと大きめの石の上に引き上げた。
「・・・うわ~~・・・。」
眼下にはいつも過ごしている城や街が見えた。あそこが王都だろう。
そして、視線を動かすと、遠くに海と王都と同じくらい栄えた町が見えた。
ところどころに集落が見えるが、やはり、王都は大きかった。
だが遠くに見える海の横の町は、その王都と同じくらい、いや見方によっては王都より栄えて見えた。
(あの海の隣の町大きいわね・・。もしかして隣国かしら?でも隣国にしては近いような・・?)
「ベル、2時の方向に大きな湖が見えるだろ?」
「え?湖??あれが?」
(海じゃなかった!!湖!?まるで、海のようだわ!!ん~でも、琵琶湖を初めて見た時、海だと思ったから・・・そんな感じかしら?)
「そうだ。あれが、隣国との国境でもあるラルジュ湖だ。」
「ラルジュ湖・・。大きいですね。どのくらいの広さがあるのですか?」
「5千平方キロメートルだと言ってわかるか?」
(5000㎢?!琵琶湖って確か、ろくろ首もびっくりな669㎢でしょ?それは、海に見えるわよね~。)
「大変大きな湖だということは理解しました。」
すると、兄が優しく微笑んだ。
「充分だ。」
そして、兄は、さらに解説を続けるようだった。
私は正直、遠くまで広がるの美しい景色をゆっくり堪能したかった。
(こんな綺麗な景色の中で授業だなんて、兄も物好きね・・。
この素晴らしい空気と、景色を堪能すればいいのに。)
兄の話を軽く聞き流しながら、大きく深呼吸して新鮮な空気を胸一杯に取り込んだ。
(身体の中が綺麗になる気がするわ~。)
そう思っていると、耳の中に恐ろしい言葉が飛び込んできた。
「あの湖のほとりの街が我がアトルワ公爵領で一番大きな街だ。」
「は?」
さらに兄はショッキングな内容を続けた。
「人口、税収など、王都よりも我が領土が上だ。」
「へ?」
(え?王様の治める土地が家臣の治める土地よりも小さいの??いいのかしら?)
「数年前に我が領は隣国の協力を得て、大規模な開拓を行った。」
「ほ~。」
(大規模な開拓?それって、いいのかしら?王家に知られたら怒られるんじゃ!!)
「一応断っておくが、陛下から開拓の許可は貰っているぞ?」
「ふ~。」
(ああ。よかった。王家への反乱分子と勘違いされて、お咎めがあることはないわね・・。)
「ベル、これから大切なことをおまえに伝える。
・・いいか?」
兄は元々とても美しい顔だが、決意ある横顔は身内びいきを差し引いても、とてもかっこよくて、頬が赤くなるように思えた。
兄はゆっくりと視線を向けると、真剣な目で見つめられた。
「私たちの行動や判断があの街すべての人々の命に繋がっているんだ。」
「・・・・。」
(私たちの行動や判断があの街すべての人々の命に繋がる・・・。)
「ひ~~~~!!!!」
ずっと実感できなかった『公爵家』の立場や存在を初めて実感した気がした。
(重い・・。重いわ!公爵家!!)
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一部、修正致しました。
kenkanokka 様ありがとうございました♪
手違いで感想に掲載出来ず申し訳ありません。
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