我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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34 発表会

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部屋に戻り、選曲をしてサロンに戻った。

(そういえば、父や兄の前でもこうやって披露するのは初めてね・・。)

練習中に兄が通りかかって拍手してくれたり、父が城に向かう途中の馬車の中で練習していた曲の感想を言ってくれることはあるが、面と向かって弾くのはこれが初めてだった。

私は一礼して、ヴァイオリン構えた。

「それでは。」

・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。

演奏を終えると、トリスタン様が何かを呟いた。

「凄い・・。これが7歳の演奏・・。」

私がドレスの端を持って、一礼をすると、父と兄が嬉しそうに拍手をしてくれた。
トリスタン様は唖然とこちらを見つめていた。

「ベルナデット。また上手になったね。」
「ありがとうございます。お父様。」

父に褒められて嬉しくなった。

「ビブラートだったか?よく響いていたぞ。
あと音がだいぶ大きく美しくなったな。」
「本当ですか?ありがとうございます。」

兄はサミュエル先生とのお茶会にも参加し、私のヴァイオリンを始めてた当初から演奏をよく聴いてくれていたので、最近指摘がマニアックになっている。

私はトリスタン様を見た。
てっきり褒めて貰えるかと思ったが、トリスタン様はなんの反応も示さなかった。

(あれ?初めて会った時からオーバーリアクションだったのに・・?なぜ無反応?
私の演奏、まだ聴かせるのは早かったのかしら?)

私は心臓を抑えながら、トリスタン様に尋ねた。

(やっぱり私はまだまだ褒めてくれるのは身内だけ・・のレベルなのね。
調子に乗ってはダメだったわ・・。
でも一応一般の方の感想も聴きたいわ。今後のためにも・・。)

「いかがでしたでしょうか。トリスタン様。」

すると、はっとした様子で、トリスタン様が真剣な表情を見せた。

「ベル・・。君の師は誰だ?」

(え?これ・・。言ってもいいのかしら?
残念な生徒で、先生にご迷惑をお掛けしないかしら。
でも嘘はつけないわ。)

「・・・・サミュエル先生です。」

すると今度は、トリスタン様は兄に顔を向けた。

「エリック。サミュエルとは何者だ?」
「はい。イズール侯爵家の3男、現宮廷楽団員ヴァイオリン担当のトップです。
そして王都音楽学院設立の中心人物でもあります。
経歴は、最年少で王妃主催の演奏会で最優秀賞を受賞し、歴代最速で宮廷楽団員のトップになった偉才です。側近候補に選ばれるほどの頭脳を持った秀才でもあり、剣術大会では3位入賞。馬術大会では5位入賞など、全ての面に秀でた稀有な人物です。」

(そうなんだ・・!!サミュエル先生ってそんな凄い方だったの!!
私にヴァイオリンを教えたり、お茶飲んだりできる方じゃないんじゃない!!!
どうしよう。そんな凄い先生に教えて貰えてるなんて!!!
でも・・兄。サミュエル先生について詳し過ぎない?ストー・・・。
いやいや、むしろ私が知らなすぎ?!)

すると、トリスタン様がすぐに立ち上がった。

「エリック。すぐに彼に会いたい。」
「わかりました。」
「いいかい?兄さん。」

父と兄も同時に立ち上がった。

「ああ。では私も同行しよう。
ベルナデットすまないが、エリックとトリスタンと共に城に行ってくる。
家で待っていてくれるかい?」

父が私の頭を優しく撫でてくれた。

「はい。」

すると、トリスタン様も優しく微笑んでくれた。

「あ~ベル。離れるのは寂しいけれど、昼にはまた話をしようね。」
「え?ええ?」
「じゃあ、いってくるね。」
「はい。いってらっしゃいませ。」

すると、父とトリスタン様は足早にサロンを出て行った。
どこか緊急な空気が漂い、私はどうすればいいのかわからなかった。

(何?何事?どうして、みんな真剣な顔なの?
私もしかして何かおかしなことをしてしまったのかしら?
まさか!!演奏がダメ過ぎて、サミュエル先生にお叱りを!!)

私は思わず出て行こうとする兄の手を掴んだ。

「どうした?ベル?」

兄が怪訝そうな顔をしたが、そんなことに構っている余裕はなかった。
自分の演奏が酷かったせいで、サミュエル先生になにかあったらどうお詫びをすればいいのかわからないかった。

「演奏が下手なのはサミュエル先生のせいではありません。私の実力不足のせいです。」
「何を言っているんだ。」

兄はまだいつもの呆れ顔をした。

「え?私の演奏のせいでサミュエル先生に会いに行かれるのでしょう?」
「そうだな。だが、ベルの心配している理由ではないから安心しろ。」

兄は優しく私の頭に手を置いて何度か頭を撫でた。

「?」

状況がわからず困惑していると、兄が顔を近づけて、ニヤリと笑った。
そして、私の耳元に口を寄せた。

「ベル。やっぱり俺の言った通りだ。」
「え?」

どうやら兄は笑っているようだった。

「おまえが死ぬ気で毎日ヴァイオリンと向き合ったおかげで、新しい道が開いたかもしれないぞ?」
「え?それはどういう・・。」

その時、開け放たれた扉の向こうから父の声が聞こえた。

「エリック。行くぞ。」
「はい。では、ベル。行ってくる。」

そう言って、兄は私の頭を優しく撫でた。

「???はい。いってらっしゃいませ・・。」

(何?何なの?)

私は訳もわからずに3人を見送った。
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