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後日談 サミュエル編 奥手な2人の誘惑大作戦!!
7 誘惑大作戦!!(サミュエルSIDE)
しおりを挟むサミュエルSIDE
馬車の中で、私は幸せをかみしめていた。
私の目の前ではずっとお会いしたかったベルナデッド様が笑顔で楽しそうのお話されている。
少し離れている間に、ベルナデット様は王族としての気品と高貴さ。
女性としての色気と美しさを増していて、どう接したらいいのかわからなくなった。
本当なら膝に抱き上げて思いっきりベルナデット様を抱きしめたいと思っていた。
だが……。
(こんな美しく大人の女性になられたベルナデット様にそんなことをしては嫌われるのではないだろうか?)
とりあえず、ここは馬車の中だ。
宮殿について2人きりになればもう少しベルナデット様に近づくチャンスもあるかもしれない。
そう思い私はとりあえず、楽しそうに話をされるベルナデット様を見ながら宮殿に戻ることにしたのだった。
(……ここは馬車の中だ!! もう少し我慢だ!!)
+++
宮殿に戻ると、ベルナデット様と共に女王陛下つまり母に報告に行った。
「お疲れ様!! さすがね!!
今日は疲れたでしょうから、すぐに休む?
それとも皆で夕食にする?」
(皆で夕食……)
正直に言えば、私はすぐにでもベルナデット様と2人だけになりたかった。
ベルナデット様の方を見ると、ベルナデット様が眉間に皺を寄せていた。
(これは……どういう意味だろうか?
ブリジット様のお誘いを受けろということだろうか?)
もしかしたら、ベルナデット様は個人的な報告があるのかもしれないと思い、私はブリジット様のお誘いを受けた。
「ぜひ、皆様と夕食をご一緒したいです」
ベルナデット様は次期女王陛下だ。
報告は重要だ。
それはわかる。
だが!!
早くベルナデット様と2人きりになって、今日ぐらいこれまで我慢した分、溶けるほどにベルナデット様を甘やかしたいし、可愛がりたいし、触れ合いたい!!
とにかく一晩中腕の中に抱きしめて、たくさん愛を囁いて溺愛の限りを尽くしたい!!
そう思っていたのは私だけのようだ。
ベルナデット様はすでに王族としての職務を全うしようとしている。
彼女を支える王配となる私が邪魔をするわけにはいかない。
私がそんなことを考えていたなんて、絶対にベルナデット様に知られるわけにはいかない!
そうなれば、チャンスは夜だ!!
さすがに夜は、ベルナデット様と2人きりで過ごすことができるだろう!!
その時に溺愛しよう!!
私は夜になるのをおとなしく待つことにしたのだった。
+++
ようやく、食事も終わりだ。
食後のお茶がテーブルに置かれたタイミングでベルナデット様が不安そうな顔でこちら見上げてきた。
「今日は、もうお休みになりますか?」
(もしかして、私が疲れているのかと心配してくれているのだろうか?)
確かに疲れてはいるが、ベルナデット様を抱きしめた方が絶対回復にするに決まっている!!
私はベルナデット様を安心させるように微笑んだ。
「え? あ、いえ。
まだ休まなくても大丈夫ですよ?」
ベルナデット様と2人で退席する流れになっていると悪魔のような提案がされた。
「では、サロンで皆でもう少し話でもするかい?」
(え?! なぜ?! なぜ今日なんだ?!)
私が急いで、ブリジット様の方を見ると眉を寄せていた。
そしてトリスタン殿は『助け船を出したぞ!!』という目をしていた。
(もしかして、ブリジット様は、娘に手を出すな!! と私を遠まわしに牽制しているのだろうか?
それでトリスタン殿が妥協案を出してくれた??
有り得る!!
ブリジット様があのお顔をされる時には私がヴァイオリンの練習で、とてつもなく大きな失敗をした時だ!!)
つまりブリジット様は、今日私とベルナデット様を2人きりにすると取返しの使いないことが起こるかもしれないと危惧したのかもしれない。
確かに久しぶりにずっと触れるのを我慢していたベルナデット様に触れたら……。
(……自分の理性が保てるか……自信ないな……)
私はブリジット様に『ベルナデット様には手を出しません』という意味でゆっくりとトリスタン殿の誘いを受けたのだった。
「ぜひ……」
私はがっかりと肩を落としたのだった。
+++
その後、夜遅くまで4人で話をして部屋に戻った。
月は随分と高くなっていた。
ベルナデット様の明日のご予定がどうなっているのかわからないが、明日休みの私と違って彼女は忙しいだろう。
「おやすみなさい。また明日」
少しだけ引き留めて貰えるかと期待したが、やはりベルナデット様は明日の公務に備えられるようだ。素晴らしい……。
素晴らしいが……恋人としては寂しい……。
「……おやすみなさい。また明日」
私はすぐに部屋に入ってソファーに沈み込んだ。
「久しぶりに会えたのにな……」
そう思って頭を振った。
(昨日までは『一目お目にかかれるだけでもいい』と思っていたのに!!
お会いした途端に、これだ!!
今日は初日だ!! 会えただけで充分だ!!)
私は窓の月を見上げた。
たった半年会えなかっただけなのに、ベルナデット様は随分とお綺麗になっていた。
港でベルナデット様を見た時にはあまりの美しさに歩みが止まってしまいそうになった。
会いたい。
会いたい。
ずっとそう願っていたのに……。
いざ、お会いするとどうしていいのかわからない。
「せめて、明日は腕の中に抱きしめたいな……」
(今日は緊張してしまったからな!!
明日はもっと自然に……自然に接する!!)
私は自分の手を見ながらそう決意した。
+++
身体を清め、寝るのに適した服に着替えた。
寝ようとは思ったものの、どうしても眠れなくて、少しだけ夜風に当たりたって頭をすっきりさせるためにバルコニーに出た。
私はそこで、思わず息を飲んでしまった。
「ベルナデット様?!」
「サミュエル先生?!」
ベルナデット様は夜着姿で、バルコニーに出ていた。
視線が絡みあって、動けない。
愛しい。
愛しい。
そう思った瞬間。
私はバルコニーの手すりに足をかけて、ベルナデット様の元に飛び出していた。
ベルナデット様のすぐそばに着地した瞬間。
「サミュエル先生!! ずっとお会いしたかった!!」
ベルナデット様が私の腕に飛び込んで来てくれた。
「私もです!! ずっとずっとこの時を願っていました!!」
ベルナデット様をしっかりと腕に抱きしめた。
肌のやわらかさも、匂いも、声も全てが愛おしい。
まるで2人が溶けあってしまうのではないかというほど、きつく抱きしめたのだった。
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