4 / 12
序章
きっかけ ―― ③
しおりを挟む目的の横浜・元町へ近付きつつある車窓へ目をやり、
小さなため息をついた。
今日は大きな商談をひとつまとめた帰りだ。
精神的にもかなり困憊しているし、
出来ればこのまま山手の自宅へ真っ直ぐ帰りたい
というのが本音だった。
ただ、隣に座る男、組織の相談役の1人で
現会長の懐刀とも言われるキレ者・八木 由伸が
言うように、この世界に身を置く以上こういった
義理ごとは必要不可欠な営業なのだ。
古今、”武闘派”を掲げてきた極道も
新・暴力団対策法の施行に伴い、
やれ出入りだ抗争だといった即懲役送りになりそうな
荒っぽい事は滅多に起こさなくなった。
その代わり、
付き合いのある同業者や財界人の
祝い事へ顔を出したり、
新しいビジネスチャンスを開拓する事が組織の
主な財源になってきた。
フロント企業と呼ばれる多くの上場企業を展開し、
必要とあれば海外へだって傘下を増やす。
潤沢な資金源をどれだけ確保するかが、
どの組織にとっても生き残る上で最優先の重要課題
となっているのだ。
*** ***
再びため息を吐いた時 ――、
ドスン! という衝撃と共に車が急停止した。
ぼんやり考え事をしていたせいで思わず
前のめりになったが、何とか堪えた。
いつもは慎重過ぎるくらい慎重で、
ドライビングテクニックなら右に出る者はいない
秘書見習い・浜尾 利守にしては珍しいと思い、
竜二は端正な表情に微かなシワを寄せつつ問いただす。
「どないした? 何があった」
浜尾 ”はっ”として我に返り、
「か、確認して参ります」
と、車外に降り立ち、驚愕で目を見開いた。
「マオっ」
「……」
ある一点を凝視したまま車内からの声かけにも
応じない浜尾を不審に思って、降り立った竜二と
八木も驚きのあまり言葉を失った。
先程の ”ドスン”という強い衝撃音は
ボンネットに落ちた物体のせいらしい。
その物体は車が急停止した反動で飛ばされたような
状態になり、車から数メートル先の路上に倒れ、
ピクリとも動かない。
問題はその物体が人間であるという事だ。
車内の誰もが固唾を呑んでその物体を凝視していたが
いち早く我に返った八木が確認を急ぐ。
「……どうや?」
「息はあるようですし、ぱっと見たところ
目立った外傷も見当たりません」
竜二は沿道にあるビル群を見渡す。
「高層階か屋上から落ちたか……落とされたか……」
次に、うつ伏せ状態のその人物をそうっと
仰向けにさせる。
男と呼ぶにはまだ幼さの残る中性的な顔立ち。
「どちらにせよ、このままにゃしておけないな」
と、その少年を抱きかかえた。
「社長 ――っ」
「自宅に戻る」
少年を抱えたまま車内へ戻った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる