改訂版『土壇場の恋・あなたならどうする?』

NADIA 川上

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本章

綱吉と竜二 ―― ④

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「―― ここじゃ路駐出来ないんで、この先にある
 コインパーキングに停めて来ます」
 
 
 と、浜尾さんは車から竜二と俺を降ろしたあと、
 八木さんと共に車で一方へ去った。
 
 おでん・ラーメン・たこ焼き・お好み焼き
 ……等など。
 
 その通りには多種多様な手押し屋台の店が
 ひしめくよう並んで、営業していた。
 

 いや、それにしても……こんな場所へ
 スーツでドレスアップして、 
 クラウン マジェスタみたいな国産高級車で
 乗り付けるお客って何なんだろ……。
 
 って、思ってたら。

 ここにある屋台は全部、煌竜会傘下の香具師が
 経営しており。
 竜二は週に1~2度、こうして訪れ、
 抜き打ち視察兼挨拶回りをするんだとか。
 
 
 どの屋台からも”よっ、竜ちゃんお疲れぇ~”
 みたいな親し気な声がかかって。
 
 どの屋台でも、お腹がはち切れそうになるまで
 ご馳走された。
 
 
『じゃ、ごっそうさん』

『またいつでも来てなー』




 隅田川沿いの遊歩道をそぞろ歩き、
 軽く腹ごなしをした後は ――、
 今日のスーツに似合ったオシャレなホテルの
 展望ラウンジへ。
 
 窓際のテーブルは半数がカップル用のペアシートで。
 
 テーブルを挟んで椅子があるんではなく。
 テーブルは窓辺にくっつくよう設置されていて、
 椅子はそのテーブルと平行に並んでいた。

 竜二は常連らしく ”ご予約席”と札の乗った
 テーブルに竜二と俺は案内された。
 
 あ、まぁ―― ここからの眺望は最高だけど、
 男同士でこうゆうテーブルに着くのは
 かなり恥ずかしい……それに。
 

「俺はまだ未成年」

「気分楽しむくらいなら構わないだろ~」


 って、竜二は言ったけど。
 運ばれてきた飲み物はどう見てもカクテルっぽい。

 ”乾杯”と、俺のグラスにカチリと自分のグラスを
 軽く合わせ、ひと口飲んだ竜二はそんな仕草も
 すっごくキマっていて、何故だかちょっとムカついた。
 
 で、腹立ち紛れに飲んだ俺のオレンジ色の
 飲み物は ――ひと口飲んだ途端、
 喉に焼け付く刺激が走って、咳き込む。
 
 ゲホッ ゲホ ゲホ ……
 
 
「な、なんだよ、コレ……」

「何? って、ただのジュースだろ」

「良く言う」


 それは紛れもないカクテルだった。
 
 それもアルコール度のかなり高いテキーラを
 使ったホテルオリジナルのモノ。
 
 
「なら、俺のもちょっと味見させてやる」
 

 と言って、本日2回めの口付けをされた。
 しかも今のは半ば強引に唇を割られ、
 そこから彼が含んでいたカクテルが
 流れ込んできて。
 
 カァァァ――ッと一気に顔が火照り、
 心拍数も急上昇。
 
 彼の唇が離れていった後もしばらく俺は
 惚けた表情のままだった。  
    

*****  *****  *****


 エレベーターから降りてさっさと進んでいく
 竜二の背中を見ながらひたすら早足でその
 少し後ろを歩く。

 深夜0時を少し回った廊下はシーンと
 静まり返っている。  

 その廊下の突き当りで
 やっと足を止めた竜二の背にどすんとぶつかった。


「わっ ―― あ、ごめんなさい」

「一応確認しておこうか」


 くるりと振り返った竜二が、
 ぽかんと半開きになった綱吉の口をキスで塞いだ。

 人通りのない廊下でいつもの綱吉なら気付いていた
 ハズだった……そこは客室の数も少ない
 エグゼクティブルームの並ぶフロアだと。

 やがて離れた唇は、綱吉が”もしや”と想定していた
 言葉を耳元で囁いた。


「ここから先はお前の意志だ……来るか?」


 さっきまでは、あんなに優しく綻んでいた表情が、
 能面のように冷たく凄みを帯びる。

 その手に握られたカードキー。

 目の前に振りかざされ、全身が強張った。

 その意味が分かるようになったのは、
 一体いつの事だったか……。

 祠堂学院は幼稚舎から大学院まで揃っている
 一貫教育制のマンモス校だ。
 幼稚舎・初等部低学年と大学及び大学院は
 免除となるが、それ以外の学生は全員入寮が原則で。
 
 綱吉も高等部の寮生だ。
 
 (見栄っ張りの叔母に無理やり入学させられた。
  が、高1の1学期半ばより不登校中)

 
 ”漲る若さを持て余して”
 
 基本的には校内恋愛禁止のハズが、
 毎年新年度には同級生同士・先輩と後輩・
 教師と生徒・先生同士、等など……様々な
 カップルが誕生している。
 
 それでも ―― 
 カードキーと、何の感情も読み取れない竜二の顔を
 交互に見比べ、綱吉はしばし立ち竦んだ。
 
 だが、自分の意志と言われたって、
 今の綱吉に、他の選択肢があろうはずもなく。
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