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お買い物
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目を覚ますと、匡煌さんは出かける準備をしている。
「出かけるのー?」
「おはよう」
額におはようのキスをしてくる。
「おはよう……」
「買い物だ。和巴も一緒にな」
「えー、私も?」
「なんだ、嫌なのか?」
「別に嫌ってわけじゃないけど」
「なら、さっさと起きろ。朝めし食ったら出かけるぞ」
何だか今日の匡煌さんはいやに張り切ってるから
”体が痛くて動けない”なんて言えなかった。
だけど……
起き上がろうと身体を動かすけど力が入らない。
でも、シャワーも浴びたいしお腹も空いた……
その一念で何とか上半身を起こし、
壁に手をついてヨタヨタと何とも情けない足取りで
バスルームへと向かう。
ったく、こんな姿、誰にも見せられないよ……と、
自嘲しながら体を洗って。
熱いシャワーを腰に当て、幾分楽になったところで
もう1度湯船に浸かった。
なんせ、ここのお風呂。
うちとは違って、ちょっとした高級旅館みたいな
総檜造りの和風な広々お風呂。
心ゆくまで大好きな入浴を楽しんで、
リビングへ戻れば、匡煌さんが朝食まで
用意してくれていた。
「うわぁぁ……美味しそう」
「さぁ、たーんと、召し上がれ」
「いただきます」
***** ***** *****
1軒目は巨大デパートの家具売り場。
「ベッドを買う」
「え?」
「お前の部屋はフローリングだ。
ベッドがないと寒くて眠れないぞ」
「そうなんだぁ……ってか、なんであなたが
そんな事まで知ってるの?」
フローリングなんて横文字が着く部屋は
住んだ事がない。
実家も時々泊まる国枝家も友達のアパートも和室だ。
売り場では匡煌さんが店員と話している。
私は他人事のようにうろうろとベッドを見て回る。
ウォーターベッド?
低反発ベッド??
名前は知っているが実物は初めて見た!
「お客様、お気に召しましたか?」
匡煌さんが耳元で囁く。
「くすぐったいってば!」
「何か気になるものはあったか?」
「ウォーターベッドって水が入ってるんだね」
「当たり前だ」
「……破れたら大変じゃん?」
私が匡煌さんを見ると、彼は何か考え込んでいた。
「ウォーターベッドか、面白いかもな」
「何が?」
「色々な体位を試す時の動き」
耳元で囁く。
「な……」
「『何を言い出すんだ! しかも店の中で』
って書いてある。次はこっちだ」
赤くなる顔の火照りを抑えながら
匡煌さんの後ろを歩き出した。
机や本棚を選んで*階婦人服売り場へと向かい。
通勤に必要なスーツや靴、かばん、アクセ類を
匡煌さんが選ぶ。
自分では分からないので全て彼にお任せした。
なぜ全てを任せているのか自分でも分からない。
匡煌さんに安心感が出てきたのだろう……
考えていたら頭を叩かれた。
「いて!」
「何ぼぉぉっとしてる? 行くぞ」
「まだ何か買うの?」
「次は家電」
「あ、それなら実家から ――」
「いずれは俺達の新居にもなるんだし、出来る限り
新品を揃えたいんだ」
「あ、そう……ねぇ」
歩き出した匡煌さんに声を掛けた。
「なんだ?」
「ありがとう」
「え?」
「家具とか、服とか……色々とありがとう」
匡煌さんは少し驚いた顔をして、笑った。
「和巴に喜んでもらえれば、俺もうれしい」
少し赤らめた匡煌さんをニヤリと笑い、
からかった。
「『しまった、顔が赤くなる』と書いてある」
彼も負けず言い返してきた。
「『抱かれたい』と書いてあるぞ」
「か……書いてない!」
私の顔が赤くなり、彼が笑う。
「腹減った。家電の前にメシ食いに行こう」
歩き出した私のスマホに千早姉から電話が入る。
「もしもし?」
『たまの休みくらいお店手伝ってもバチ当たらない
わよ。今すぐ帰ってらっしゃい!』
うわぁ、珍しくめっちゃ怒っとる……
「はい。今から帰ります……」
私の返事を聞いて電話は切れた。
「誰だ?」
「姉。実はね、今やってる定食屋の他に
B&Bのホテル開業する予定で。今、猫の手も
借りたい位忙しいハズなの」
「それを早く言え」
「は?」
「これから行こう。俺じゃ”猫の手”にもならんかも
知れんが。挨拶もしないとな、お宅の妹さんを
嫁にいただきますって」
それはちょっと、気が早すぎなんじゃ……
「気が早すぎとか考えたろー」
楽しそうにニヤっと笑い駐車場へと匡煌さんは
歩いてる。
こんなに楽しそうな彼を見たのは初めてだ。
何だか私まで楽しい気分になってきた。
注・B&Bとは、ベッド&ブレックファーストの略で
B&Bのホテルとは”素泊まりと簡素な朝食”を
提供する宿泊施設の事です。
***** ***** *****
姉夫婦が開業予定のホテルは元々大手建設会社の
保養所として使われていた建物で。
古い知人からここを安価で買い取った皓兄さんの
指示で改装工事が着々と進められている。
今は大工さん他業者さん達の小休憩タイムらしく、
現場にはのんびりした雰囲気が流れていた。
「ただいま……」
「もうっ! 何がただいまよ。今頃何しに来たの」
開口一番、怒られた。
「ごめん……ずっと宇佐見さんと一緒だったの。
就職したら使う洋服とか、新居で使う家具とか
彼に選んで貰ってて……」
「なんだ。そうだったの。じゃあ、電話なんか
しちゃって邪魔したね」
「ううん、そんな事ない。あ ―― 彼も来てるの。
送ってもらった」
「はぁ?! それを早く言いなさいっ!」
千早姉ったら驚いてバタバタと外に出て行いった。
外では匡煌さんに千早姉が挨拶をしている。
「不束な妹ですが、
どうぞ遠慮なく鍛えてやって下さい」
ん?
何を鍛えろと言うんだ??
「はい。和巴には私も大いに期待しています。
もう、引越し準備は出来ているというので、
今日荷物を車に乗せようと思いますが、
大丈夫でしょうか?」
「はい、お気遣いありがとうございます」
匡煌さんと実家に行き、
まとめている荷物を車に積み込みむ。
手伝いに駆けつけてくれた真守と**に、
処分する荷物を託した。
「卒業までは、店を手伝いに来るから」
「オッケー、頑張ってね和ちゃん」
「あんたも勉強しっかりね」
「うん」
車に乗り込んで、
2人が見えなくなるまで手を振って、
私は座席にもたれ込んだ。
「いい家族だな」
匡煌さんが微笑む。
「ふふ ―― でしょ?」
「出かけるのー?」
「おはよう」
額におはようのキスをしてくる。
「おはよう……」
「買い物だ。和巴も一緒にな」
「えー、私も?」
「なんだ、嫌なのか?」
「別に嫌ってわけじゃないけど」
「なら、さっさと起きろ。朝めし食ったら出かけるぞ」
何だか今日の匡煌さんはいやに張り切ってるから
”体が痛くて動けない”なんて言えなかった。
だけど……
起き上がろうと身体を動かすけど力が入らない。
でも、シャワーも浴びたいしお腹も空いた……
その一念で何とか上半身を起こし、
壁に手をついてヨタヨタと何とも情けない足取りで
バスルームへと向かう。
ったく、こんな姿、誰にも見せられないよ……と、
自嘲しながら体を洗って。
熱いシャワーを腰に当て、幾分楽になったところで
もう1度湯船に浸かった。
なんせ、ここのお風呂。
うちとは違って、ちょっとした高級旅館みたいな
総檜造りの和風な広々お風呂。
心ゆくまで大好きな入浴を楽しんで、
リビングへ戻れば、匡煌さんが朝食まで
用意してくれていた。
「うわぁぁ……美味しそう」
「さぁ、たーんと、召し上がれ」
「いただきます」
***** ***** *****
1軒目は巨大デパートの家具売り場。
「ベッドを買う」
「え?」
「お前の部屋はフローリングだ。
ベッドがないと寒くて眠れないぞ」
「そうなんだぁ……ってか、なんであなたが
そんな事まで知ってるの?」
フローリングなんて横文字が着く部屋は
住んだ事がない。
実家も時々泊まる国枝家も友達のアパートも和室だ。
売り場では匡煌さんが店員と話している。
私は他人事のようにうろうろとベッドを見て回る。
ウォーターベッド?
低反発ベッド??
名前は知っているが実物は初めて見た!
「お客様、お気に召しましたか?」
匡煌さんが耳元で囁く。
「くすぐったいってば!」
「何か気になるものはあったか?」
「ウォーターベッドって水が入ってるんだね」
「当たり前だ」
「……破れたら大変じゃん?」
私が匡煌さんを見ると、彼は何か考え込んでいた。
「ウォーターベッドか、面白いかもな」
「何が?」
「色々な体位を試す時の動き」
耳元で囁く。
「な……」
「『何を言い出すんだ! しかも店の中で』
って書いてある。次はこっちだ」
赤くなる顔の火照りを抑えながら
匡煌さんの後ろを歩き出した。
机や本棚を選んで*階婦人服売り場へと向かい。
通勤に必要なスーツや靴、かばん、アクセ類を
匡煌さんが選ぶ。
自分では分からないので全て彼にお任せした。
なぜ全てを任せているのか自分でも分からない。
匡煌さんに安心感が出てきたのだろう……
考えていたら頭を叩かれた。
「いて!」
「何ぼぉぉっとしてる? 行くぞ」
「まだ何か買うの?」
「次は家電」
「あ、それなら実家から ――」
「いずれは俺達の新居にもなるんだし、出来る限り
新品を揃えたいんだ」
「あ、そう……ねぇ」
歩き出した匡煌さんに声を掛けた。
「なんだ?」
「ありがとう」
「え?」
「家具とか、服とか……色々とありがとう」
匡煌さんは少し驚いた顔をして、笑った。
「和巴に喜んでもらえれば、俺もうれしい」
少し赤らめた匡煌さんをニヤリと笑い、
からかった。
「『しまった、顔が赤くなる』と書いてある」
彼も負けず言い返してきた。
「『抱かれたい』と書いてあるぞ」
「か……書いてない!」
私の顔が赤くなり、彼が笑う。
「腹減った。家電の前にメシ食いに行こう」
歩き出した私のスマホに千早姉から電話が入る。
「もしもし?」
『たまの休みくらいお店手伝ってもバチ当たらない
わよ。今すぐ帰ってらっしゃい!』
うわぁ、珍しくめっちゃ怒っとる……
「はい。今から帰ります……」
私の返事を聞いて電話は切れた。
「誰だ?」
「姉。実はね、今やってる定食屋の他に
B&Bのホテル開業する予定で。今、猫の手も
借りたい位忙しいハズなの」
「それを早く言え」
「は?」
「これから行こう。俺じゃ”猫の手”にもならんかも
知れんが。挨拶もしないとな、お宅の妹さんを
嫁にいただきますって」
それはちょっと、気が早すぎなんじゃ……
「気が早すぎとか考えたろー」
楽しそうにニヤっと笑い駐車場へと匡煌さんは
歩いてる。
こんなに楽しそうな彼を見たのは初めてだ。
何だか私まで楽しい気分になってきた。
注・B&Bとは、ベッド&ブレックファーストの略で
B&Bのホテルとは”素泊まりと簡素な朝食”を
提供する宿泊施設の事です。
***** ***** *****
姉夫婦が開業予定のホテルは元々大手建設会社の
保養所として使われていた建物で。
古い知人からここを安価で買い取った皓兄さんの
指示で改装工事が着々と進められている。
今は大工さん他業者さん達の小休憩タイムらしく、
現場にはのんびりした雰囲気が流れていた。
「ただいま……」
「もうっ! 何がただいまよ。今頃何しに来たの」
開口一番、怒られた。
「ごめん……ずっと宇佐見さんと一緒だったの。
就職したら使う洋服とか、新居で使う家具とか
彼に選んで貰ってて……」
「なんだ。そうだったの。じゃあ、電話なんか
しちゃって邪魔したね」
「ううん、そんな事ない。あ ―― 彼も来てるの。
送ってもらった」
「はぁ?! それを早く言いなさいっ!」
千早姉ったら驚いてバタバタと外に出て行いった。
外では匡煌さんに千早姉が挨拶をしている。
「不束な妹ですが、
どうぞ遠慮なく鍛えてやって下さい」
ん?
何を鍛えろと言うんだ??
「はい。和巴には私も大いに期待しています。
もう、引越し準備は出来ているというので、
今日荷物を車に乗せようと思いますが、
大丈夫でしょうか?」
「はい、お気遣いありがとうございます」
匡煌さんと実家に行き、
まとめている荷物を車に積み込みむ。
手伝いに駆けつけてくれた真守と**に、
処分する荷物を託した。
「卒業までは、店を手伝いに来るから」
「オッケー、頑張ってね和ちゃん」
「あんたも勉強しっかりね」
「うん」
車に乗り込んで、
2人が見えなくなるまで手を振って、
私は座席にもたれ込んだ。
「いい家族だな」
匡煌さんが微笑む。
「ふふ ―― でしょ?」
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