50 / 124
偶然
しおりを挟むビジネス英会話教室でのグループレッスンの後、
個人レッスンも終わり、
先生から勧められた英語小説の原書を買う為、
本屋へ向かっていると利沙から電話が入った。
『ハ~イ、これから何か予定ある?』
「本屋に行って、後は帰る」
『じゃ、清水さんの酔桜祭り行こうよ。
本屋は何処?』
「祇園の白鳳堂」
『なら、清水近いじゃん。私もこれからすぐ出るから、
終わったら電話して』
「分かった」
通話を切り、バス停に向かう。
本当は、各務の会社もあるので洛中エリアは
あまりうろつきたくなかった。
先生に勧められた本は白鳳堂オリジナル本で
そこで買うしかない。
店は駅にもバス停にも近いし、万が一、
偶然会う事があっても逃げ道はたくさんある。
と、気持ちを切り替え、電車に乗った。
***** ***** *****
俺は書類を机の上に散積したまま椅子に座り、
後方の窓外へ目を泳がせていた。
静流が入って来て、ため息をつく。
(この度、彼女も俺と同じ監督委員に着任し。
おまけに俺のお目付け役となった。
ハッキリ言って超ウザい!)
「なぁにクサってんの?
今朝からずっとその調子よ。
昼はちゃんと食べた?」
お袋みたいに小煩い静流にうんざりしつつ、
くわえタバコに火を点ける。
「どーでもいいけど、
今夜の約束はすっぽかさないでよ?
あぁ、Wデートなんて久しぶり!」
「面倒くさい。行きたくねぇー」
「いい加減ハラを据えなさい。結婚するんだから」
「自分で決めた訳じゃない」
「こんな風に部屋へ篭ってばかりじゃ
気分も鬱になるってもんだわ。ちょうどいいから、
白鳳堂に私が予約した本取りに行って来てよ」
「かったりぃー」
「外の新鮮な空気を吸えば、
そのぼっさぁぁっとした頭も少しはしゃっきり
するでしょ。ホラっ」
追い立てられながらエレベーターに乗った。
外に出ると ――
ま、確かに3月の風は爽やかで、
頭と胸の中の澱みも少しは薄れてくれそうだ。
俺はゆっくり祇園方面へと歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる