7年目の本気

NADIA 川上

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偶然

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 ビジネス英会話教室でのグループレッスンの後、
 個人レッスンも終わり、
 先生から勧められた英語小説の原書を買う為、

 本屋へ向かっていると利沙から電話が入った。


『ハ~イ、これから何か予定ある?』

「本屋に行って、後は帰る」

『じゃ、清水さんの酔桜祭り行こうよ。
 本屋は何処?』

「祇園の白鳳堂」

『なら、清水近いじゃん。私もこれからすぐ出るから、
 終わったら電話して』

「分かった」


 通話を切り、バス停に向かう。

 本当は、各務の会社もあるので洛中エリアは
 あまりうろつきたくなかった。

 先生に勧められた本は白鳳堂オリジナル本で
 そこで買うしかない。
 店は駅にもバス停にも近いし、万が一、
 偶然会う事があっても逃げ道はたくさんある。
 と、気持ちを切り替え、電車に乗った。


*****  *****  *****



 俺は書類を机の上に散積したまま椅子に座り、
 後方の窓外へ目を泳がせていた。

 静流が入って来て、ため息をつく。


 (この度、彼女も俺と同じ監督委員に着任し。
  おまけに俺のお目付け役となった。
  ハッキリ言って超ウザい!)
  

「なぁにクサってんの? 
 今朝からずっとその調子よ。
 昼はちゃんと食べた?」


 お袋みたいに小煩い静流にうんざりしつつ、
 くわえタバコに火を点ける。


「どーでもいいけど、
 今夜の約束はすっぽかさないでよ?
 あぁ、Wデートなんて久しぶり!」

「面倒くさい。行きたくねぇー」

「いい加減ハラを据えなさい。結婚するんだから」

「自分で決めた訳じゃない」

「こんな風に部屋へ篭ってばかりじゃ
 気分も鬱になるってもんだわ。ちょうどいいから、
 白鳳堂に私が予約した本取りに行って来てよ」

「かったりぃー」

「外の新鮮な空気を吸えば、
 そのぼっさぁぁっとした頭も少しはしゃっきり
 するでしょ。ホラっ」


 追い立てられながらエレベーターに乗った。

 外に出ると ―― 
 ま、確かに3月の風は爽やかで、
 頭と胸の中の澱みも少しは薄れてくれそうだ。

 俺はゆっくり祇園方面へと歩き出した。
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