7年目の本気

NADIA 川上

文字の大きさ
52 / 124

ドキドキが止まらない

しおりを挟む
 和巴の後を追いかけたけど、通行人が邪魔をして
 匡煌は和巴の姿を見失った。


 まだ心臓が激しく脈を打っている……。

 体の震えも止まらない。

 久しぶりに見た和巴は変わっていなかった。

 いや、少し痩せたか……

 話したかった……抱きしめたかった。

 忘れる事なんか出来るハズがない。
 こんなにも和巴を心から愛しているのにっ。

 匡煌は強引に気持ちを切り替え、
 本屋で静流の用事を済ませ会社へ戻った。


 ***  ***


 何も言わずに執務室へと入った匡煌を不審に思い、
 静流が後に続く。


「―― ありがと、
 結構気持ちよかったでしょ? 外も」


 分厚い本の入った袋を受け取った。


「まぁ、な。気分転換にはなった」

「お祭りは6時スタートだから、
 5時半位に迎えに来るわね」


 と、静流は戸口へ向かう。


「―― かずと会った」

「!!……それで?」

「追いかけたけど逃げられた」

「あっちは若いのよ、
 親父のあんたが敵うわけない」

「……あのまま1人逃げて、
 各務とも一生縁を切ろうかと考えた」

「バカ言ってんじゃないのっ。今さら何よ」

「分かってるさ。冗談だ、冗談……」


 ため息をつきながら出て行った静流を確認すると、
 匡煌はぐったり椅子に沈み込んだ。

 あの時、躊躇せず和巴を捕まえていたら。
 その足で東京を――日本を飛び出して行けたのに。

 各務を捨て、ずっと一緒にいられたのにっ……。

 叶わぬ事とは分かっている。
 和巴がそれを許さない事も分かっている。

 それでも俺は和巴と一緒にいたかった。

 女々しく泣き出しそうな顔を両手で叩き活を入れ、
 匡煌は残りの仕事を再開した。    
  
  
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...