7年目の本気

NADIA 川上

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ラブ・イズ・オーバー

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「―― ごめんねぇ、
 ちゃんと家で飼ってあげられればいいんだけど
 今の住んでるとこ、ペット禁止だから」


 ここはシェアハウスへ帰る途中にある
 小さな児童公園。
   
 ミケの仔猫が妙に懐いてしまって。

 あさひ亭から持参した残飯を与えている。  
  

「じゃあ、また明日」


 そう言って和巴は仔猫に手を振り、
 ベンチから立ち上がった。


 その時 ――


「―― かずは?」


 聞き慣れた優しい声に、ビクンッと立ち止まる。


「かず……」


 (う、そ……)


 和巴は振り返らずにとっさに駈けだした。


「待ってかずっ! 逃げないでくれ!」


 (どうして? どうして匡煌さんがここに……?)


「かずっ ……くそっ」


 匡煌は無我夢中で和巴の後を追う。


 (お願い ―― 私の事はもう放っておいて)
  

 カンカンカンと鳴り降りる遮断機。


「和巴っ」

「来ないでっ!!」


 降りてきた遮断機の下をくぐり、向こうの道に
 出る和巴。


「和巴っ!」


 匡煌がやっと遮断機に着いた時、
 電車はすぐそこまで来ていた。


「聞いてくれ、和巴、俺は ――」

「何も聞きたくない。あなたは私なんかに
 関わってちゃダメなの。
 私はもう……貴方の事なんて好きじゃない
 何とも思ってないから」
 
「嘘つけ。なら ―― なら、
 なんで泣いてるんだっ」


 和巴の頬に熱い雫がツツッ ――と、落ちる。


「泣いて、ないっ」

「頼むから、もう1度だけ俺にチャンスをくれ」


 無情にも2人の間を電車が駆け抜ける。


「あぁ、くそ……っ」


 イラつく匡煌。

 電車が駆け抜け、匡煌が遮断機を持ち上げた時
 ……既に和巴の姿はなかった。


「かずっっ!!」


 匡煌は和巴の立っていた場所でキョロキョロと
 辺りを見回す。


「かず、どうして……」


 和巴はひたすら走り、ハウスの階段を
 駆け上がって部屋の中に入った。

 ハァハァと息を吐き、ズルズルとその場に
 座り込む。

 ガタンガタンと電車が通る度に、
 カタカタと揺れる窓のサッシ。


 『今は裁判所へ提出する嵯峨野書房の再生計画案の
  作成で手いっぱいだろうから』と、
 完全に油断していた。
 
 もしかすると、今月末なんて悠長な事は言わず、
 明日の卒業式が済み次第旅発つべきなんではないか?
 
 と、和巴は考え直していた。
   
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