7年目の本気

NADIA 川上

文字の大きさ
62 / 124
第2章 東京編

月刊『カミングアウト』編集部

しおりを挟む

 出版業界第*位、株式会社・嵯峨野書房。

 新宿副都心の再開発エリアに建つ 
 地下2階・地上**階建の自社ビルは
 先月完成したばかり。

 真新しく洒落た造りだ。


 『―― おはよう!』と、
 朝の挨拶も爽やかに颯爽と登場の編集長・安東に
 引きかえ、
 その部署の机に着いているスタッフは皆、
 ほとんど死体と化しているように見える。

 それに心なしかこの部署のシマにだけ、
 学校の運動部とかでもお馴染みの臭気が
 漂っているようだ。

 因みに全ての編集部は週刊誌も月刊誌も
 この5階フロアにあって、
 担当しているジャンル別にそれぞれシマが
 分けられている。

 安東が中央の机に着いたこのシマは、
 担当ジャンル・少女マンガ。

 腐女子向けのBL漫画の月刊『カミングアウト』
 編集部。

 このシマだけはやたらとパステルカラーや
 可愛らしいキャラクターグッズが溢れている。

 けど……少女マンガの編集が揃いも揃って
 野朗ばかりなんて、どうなんでしょう。

 外見で人を判断してはいけません、
 とは言うけど……あーんなヒゲ生やして
 ピアス着けた柄の悪い奴が編集長なんて……

 ホント大丈夫かなぁ この会社……。  


 他の社員達から”腐男子倶楽部”と
 呼ばれるソコは、
 校了間近でメンバー全員鬼気迫る雰囲気が
 漂う――、


「―― ギイさん、また、中央印刷の鈴木さんから
 お電話です」


 一応 ”課長”という肩書があっても、
 社内では決してそう呼ばせない。


「オレは留守だ」

「もうっ、子供じゃないんだから ――」

「嵯峨野書房は潰れたと言えっ」

「んな無茶な……」

「オイ、巽っ。山倉大先生の原稿はまだか??」   

「あと、30ページだって言ってますが、この分だと
 明日まではかかるでしょうね」

「何呑気に構えてんだよっ! 先生に張り付いて、
 何が何でも今日中に原稿ぶん取ってこい。
 でなきゃお前、来月から無期限の減俸な」


 そう言われたメンバー・巽は
  ”担当作家の遅筆で給料カットされちゃあ、
   堪らん!”と
 慌てて編集部を後にした。 

 それと入れ違いに副編集長・村田が出社。


「ちーっす」

「オレの駄々っ子はちゃんと学校へ行ったな?」

「おお、一応大学の前までは送ったけどー。
 あのよーギイ、今夜の約束、何とかなんねぇかな」

「あー? オレ、何かお前と約束してたっけ?」

「ちげーよ。めぐちゃんの誕生日プレゼントに
 2丁目行くってやつ」

「あぁー! アレねぇ……なに、お前、行くの
 やなの?」

「あ、いや、別に嫌って訳じゃねぇけど ――」


 すると、違うメンバーから『ギイさぁん ――』と
 懇願めいた声があがり、
 安東はお決まりのセリフ
 『オレは留守だ。会社は潰れたと言え』と言い捨て
 さっさとこの室を出て行ってしまった。


「あ、逃げるなよ、ギイ」


 こんな感じで、毎月校了間近の修羅場は
 『カミングアウト』に連載中の全作品が
 無事印刷所で刷り上がるまで延々と続くの
 でした……。
 

  
  
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

処理中です...