7年目の本気

NADIA 川上

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第2章 東京編

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 自宅まで持ち込んだ仕事を片付けながら
 ひと息入れて時計を見ると、午前1時……。

 俺は眠気覚ましにポットから注いだコーヒーを
 ブラックのまま飲んだ。

 本当はこういった嗜好品も、
 深夜にまで及ぶハードワークも
 まだドクターストップがかかっているが、
 何かに没頭していないと、つい和巴の事を
 考えてしまう……。

 あいつが上京する前、ここへ来てくれた時は
 本当に嬉しかった。

 いっそこのまま、
 手に手を取って和巴と何処かへ
 雲隠れしてしまおうか、とも考えたが。

 泣きながら自分の道を決めた和巴の気持ちを
 踏みにじりたくは無かった。

 今のまま逃げ出しても、
 いつかきっと限界は来る。


 ―― 和巴は決して喜ばないだろう……

 俺は待つと腹をくくった。

 その間に、やっかいな問題を片付けてしまう。
 あいつを迎えられる環境を作る。


『―― 私は絶対匡煌の傍を離れない。
 それが出来ないくらいなら死んだ方がマシよ。
 匡煌のいない生活なんて、も、考えられないん
 だから』
 
 
 俺だって同じだ。
 和巴のいない人生を、
 どうしても考える事が出来ない。

 和巴が歩く道の横を、笑いながら歩いていきたい。

 俺は和巴と生きていく……

 ソファーに座り和巴に貰ったライターで
 タバコに火を点ける。


「かず……」


 俺はそっと目を閉じた。


*****  *****  *****


 夕食も終わり、
 ディーノとジュニは帰って行った。

 私はベラと後片付けを済ませ、飲み直し。

 皓さんが荷物に入れてくれたイカの燻製を出す。


「おぉ! イカくん、コレ大好き」


 まだ未成年だからアルコールはNGだけど

 ベラはこういったおっさん臭い酒のつまみが
 大好物らしい。


「……カズハ、さぁ」

「―― ん?」


 既に2本飲み干して3本目いこうか? どうか
 考えながらベラを見た。


「恋人、地元にいるの?」


 そんな言葉にドキッとする。


「なんで?」

「ん~、なんとなく」

「……いないよ」

「ふ~ん、意外」

「そ~お?」

「めっちゃモテそう。マスコミ業界になんかいると
 イケメンよりどりみどりなんとちゃう?」

「ふふ、だといいけどねぇ。実際はそんな甘くは
 ないよ」

「ふ~ん、そうなんだぁ」

「そうゆうベラはいないの?」

「私? いないよ」

「そう……」

「うん、いない」

「そ~言えばさ、
 インターネットは繋げられる?」


 私は話題を変えて聞いた。


「パソコンは持ってる?」

「ある。会社が連絡用に繋げろって煩いの……」


 仕事用だけじゃなくて。
 ネットが繋がれば、
 匡煌さんとも顔を見ながら話せる!

 (早くも広嗣さんと交わした約束を破ってしまって、
  その事だけが心苦しいけど)
  
  
「ほな、友達が詳しいから、明日頼んであげる」

「お願いします」


「了解。じゃ、シャワー浴びて寝るわ」


  ベラが立ち上がる。


「うん、おやすみー」
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