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第2章 東京編
月日の流れは驚くほど足早で……
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辞令に従い出向した
覇王エンタテインメントで働き始め、
この業界での動き方などまるで分からなかった私も
ぼちぼちギョーカイ人っぽくなってきた
今日このごろ……
『―― かずはぁー、かずはぁー!
かずはおらんのっ』
「はい、薫さん。お呼びですか」
「もーうっ、おっそいわよ。
私(わたくし)が呼んだら20秒以内に
いらっしゃいって、言っておいたのもう忘れたー?」
って、スタッフ達が忙しそうに働くスタジオの
片隅で、ディレクターズチェアにふんぞり返って
座り嫌味タラタラなのは、女優・浅霧薫さん。
内心”んな無茶な!”と異議を唱えながらも、
表向きは営業スマイルでにこやかに ――
「はぁ、すんまへん。で、何か、ご用でしたか?」
「私、今夜のディナーは祇園”華川”って気分なの。
予約、お願い」
流石の私も固まった。
祇園の料亭は軒並み”一見さんお断り”
もっとも最近では、祇園の料亭文化を多くの人に
知ってもらおうと、昼食時のみ”一見さん”を
受け入れているお店もあるというが、
夜のお座敷はお馴染みさんの紹介がなければ
入店はほぼ拒否される。
「あ、あのぉ……もちろん薫さんもご存知だとは
思いますが ――」
私が言いかけた言葉を遮るよう、薫さんに監督から
出番コールがかかり、
薫さんは『じゃ、頼んだわよ』と容赦ないひと言を
残して監督の方へ行ってしまった。
私は肩の力をがっくり落とし、ポケットから
スマホを取り出しながら、スタジオから出た。
『―― おい、チビうさ』
その声に振り返ると、やって来たのは薫さんの
チーフマネージャーで覇王映画社の代表取締役
専務・羽柴さん。
元・セフレだったあの羽柴仁だ。
「あ、羽柴専務、お早うございます」
「お前何度言ったら分かんだよ」
「は?」
「は? じゃねぇ。マネージャーが担当タレントに
へつらってどうする??」
「あ……」
「お前はマネージャーであって、薫の小間使いや
使いっ走りじゃねぇんだぞ。頼むから、もうちっと
しっかりしてくれよー」
「はぁ」
『まぁまぁ、羽柴ちゃん、根っからのお人好しで
頼まれ事に嫌と言えんのがうさちゃんのええとこ
なんやさかい、そうカリカリしなさんな』
って、羽柴さんは制作部の神代さんに肩を抱かれ
先に行ってしまった。
私は自販機コーナーで立ち止まり
すれ違う人々と『お早うございまぁす』と挨拶を
交わしつつ、スマホの液晶上へ呼び出した
ナンバーをタップ。
発信待ち受けの曲は GReeeeNの”キセキ”
その曲がワンコーラス目のサビの部分で途切れ
眠たそうな声の親友が出た。
『はぁーい、どちらはんどすぅ……』
「あー、ごめん、ひょっとして今寝たばっかりだった
とか?」
利沙は大卒後、家業の『エスポワール』グループへ
入社し。
グループ傘下の老舗料亭”華川”の総務課接客部へ
配属された。
『んー……んなとこかな。で、どうしたん?』
「また、華川の予約お願いしたいんだけど」
『あー、ひょっとしたらまた、薫さんの気まぐれ?』
「んー、そんなとこ。で、どうだろ? 今夜、大丈夫
そう?」
『うん、幸いウィークデーやからな、問題ないと
思うわ』
「じゃ、宜しくね」
覇王エンタテインメントで働き始め、
この業界での動き方などまるで分からなかった私も
ぼちぼちギョーカイ人っぽくなってきた
今日このごろ……
『―― かずはぁー、かずはぁー!
かずはおらんのっ』
「はい、薫さん。お呼びですか」
「もーうっ、おっそいわよ。
私(わたくし)が呼んだら20秒以内に
いらっしゃいって、言っておいたのもう忘れたー?」
って、スタッフ達が忙しそうに働くスタジオの
片隅で、ディレクターズチェアにふんぞり返って
座り嫌味タラタラなのは、女優・浅霧薫さん。
内心”んな無茶な!”と異議を唱えながらも、
表向きは営業スマイルでにこやかに ――
「はぁ、すんまへん。で、何か、ご用でしたか?」
「私、今夜のディナーは祇園”華川”って気分なの。
予約、お願い」
流石の私も固まった。
祇園の料亭は軒並み”一見さんお断り”
もっとも最近では、祇園の料亭文化を多くの人に
知ってもらおうと、昼食時のみ”一見さん”を
受け入れているお店もあるというが、
夜のお座敷はお馴染みさんの紹介がなければ
入店はほぼ拒否される。
「あ、あのぉ……もちろん薫さんもご存知だとは
思いますが ――」
私が言いかけた言葉を遮るよう、薫さんに監督から
出番コールがかかり、
薫さんは『じゃ、頼んだわよ』と容赦ないひと言を
残して監督の方へ行ってしまった。
私は肩の力をがっくり落とし、ポケットから
スマホを取り出しながら、スタジオから出た。
『―― おい、チビうさ』
その声に振り返ると、やって来たのは薫さんの
チーフマネージャーで覇王映画社の代表取締役
専務・羽柴さん。
元・セフレだったあの羽柴仁だ。
「あ、羽柴専務、お早うございます」
「お前何度言ったら分かんだよ」
「は?」
「は? じゃねぇ。マネージャーが担当タレントに
へつらってどうする??」
「あ……」
「お前はマネージャーであって、薫の小間使いや
使いっ走りじゃねぇんだぞ。頼むから、もうちっと
しっかりしてくれよー」
「はぁ」
『まぁまぁ、羽柴ちゃん、根っからのお人好しで
頼まれ事に嫌と言えんのがうさちゃんのええとこ
なんやさかい、そうカリカリしなさんな』
って、羽柴さんは制作部の神代さんに肩を抱かれ
先に行ってしまった。
私は自販機コーナーで立ち止まり
すれ違う人々と『お早うございまぁす』と挨拶を
交わしつつ、スマホの液晶上へ呼び出した
ナンバーをタップ。
発信待ち受けの曲は GReeeeNの”キセキ”
その曲がワンコーラス目のサビの部分で途切れ
眠たそうな声の親友が出た。
『はぁーい、どちらはんどすぅ……』
「あー、ごめん、ひょっとして今寝たばっかりだった
とか?」
利沙は大卒後、家業の『エスポワール』グループへ
入社し。
グループ傘下の老舗料亭”華川”の総務課接客部へ
配属された。
『んー……んなとこかな。で、どうしたん?』
「また、華川の予約お願いしたいんだけど」
『あー、ひょっとしたらまた、薫さんの気まぐれ?』
「んー、そんなとこ。で、どうだろ? 今夜、大丈夫
そう?」
『うん、幸いウィークデーやからな、問題ないと
思うわ』
「じゃ、宜しくね」
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