7年目の本気

NADIA 川上

文字の大きさ
75 / 124
第2章 東京編

追憶

しおりを挟む
 マンションの自室へ戻ると和巴はベッド脇の床へ
 直にペタンと座り込んだ。 

 ベラはLDKにも1階の共有ルームにもいなかった 
 ところをみると、まだ外出先から 帰ってはいない
 ようだ。 

 今彼女と顔を合わせたらきっとみっともない醜態を
 晒してしまいそうだったので、
 居てくれなくて助かった。 

 和巴は自分1人だけの部屋でしばらく放心したよう 
 ぼんやりとして、ふと、自分の机の下に押し込んで
 ある 段ボール箱に目を止めた。 

 それを引っ張り出してきて蓋を開けた。 

 大した物も、量も入ってはいない。 
 ふるびたアルバム1冊とブリキで出来たオモチャが
 2~3コ、そして、バンダナサイズのハンカチが
 1枚。 


 ☓☓☓  ☓☓☓  ☓☓☓ 


「ほ、ほんとはよー、もっとすげぇやつプレゼント
 しようと思ってたんだぜ。けど、高価なアクセも
 洋服もお前にゃ何となく似合わない、ような
 気がしてさ……」 


「ううん、私すっごく嬉しい! ずっと大切にするね、 
 ありがと匡煌さん」 


 と、”同棲記念”にって匡煌から貰った 
 真新しいハンカチを握りしめ 
 嬉しそうに涙ぐむ和巴。 


「ハンカチよか、バスタオルの方が 
 良かったかな」 

「えっ、どーして?」 

「マジ、和巴ってば泣き虫なんだもんよ。 
 ハンカチ程度じゃお前の涙拭くには足らないじゃん」 

「もうっ ―― 私はそんな泣き虫じゃないもん」 


 ☓☓☓  ☓☓☓  ☓☓☓ 


 遠い昔を懐かしむよう思い出し、 
 薄く微笑む和巴の瞳に涙が潤む。 

 その時、ガチャ――、玄関先でドアが開く音、
 ベラが帰ってきた。 

 和巴は素早く涙を拭い、
 段ボール箱を閉じてまた机の下へ戻し。
 
 『お帰り、ベラ』とLDKへ出て行った。 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...