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第2章 東京編
和解
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ステージがハネても和巴にはやっておきたい事が
幾つかあった。
ジゼルの死装束から余り着慣れているとは言えない
ドレスに着替えた和巴は、藍子が休んでいるハズの
医務室へ向かった。
一方こちらは、医務室で休む藍子に付き添う翔太。
「良かったな、
2週間も大人しくしてりゃ完治だってよ」
「…………」
「藍子?」
藍子は翔太の胸へ縋るよう顔を寄せ。
「やだなぁ……私って、
結構粘着質だったみたい……」
「……シューズの事、皆にはどう言う?」
「何にも言わなくていいよ。
皆がひとつの目的に向かって進み始めた時に
変な水挿したくないし、あんな事しちゃった子も
今頃きっと苦しんでる」
「そっか」
――――トントン。
ドアが静かにノックされた。
2人はハっとしたよう、顔を見合わせた。
「!! どうしよう、翔くん」
「どうしようったって……どうしよう」
もう1度小さくドアがノックされ、続いて和巴の声
「藍子さん? 小鳥遊です。ちょっといいかしら」
その声で翔太はホっとしたが、藍子はまだ不安一杯の
表情だ。
「なんだ ―― 和巴さんか……良かった」
と、立ち上がる。
藍子は小声で翔太を呼び止めた。
「待って、翔くん」
「和巴さんなら大丈夫。きっと理解してくれる」
翔太はドアを開けた。
「あら、翔太くん……キミがどうしてここに?」
(匡煌さんなら分かるが)
「その事について話があるんだ」
「……長くなりそう?」
「あぁ。かなり」
「藍子さんの容態はどうなの?」
それを確認しに来たのだ。
「幸い骨に異常はなくて3~4日で痛みと腫れは引くし
2週間程度で仕事にも復帰出来るって」
「そう……良かった。じゃ、キミからの話は自宅に
帰ってから聞くわ。それでいい?」
「うん。ありがと」
和巴が去り、入れ違いで
入って来たのはまだステージ衣装のままのまりえだ。
まりえは藍子がこのギョーカイに入って初めて出来た
親友だ。
WDCのコールド(群舞)で踊っている。
パッと見の外見は普段と変わりないが、良くみれば
目は真っ赤に充血させていて新たな涙も溢れそうだ。
「やあ、お疲れ様。
打ち上げ途中で抜けちまってごめんな」
「まりちゃんにも心配かけたね」
まりえは、何か言いたい事はあるが
言いにくいといった感じで俯いている。
「……藤城?」
「……お2人から、そんな労ってもらう価値ない……」
「まりちゃん――?」
まりえは2人へ向かって深々と頭を下げた。
「藤城っ」「まりえ??」
「私、なの」
「え……?」
「シューズへガラス片入れたの」
気の遠くなるような沈黙。
「本当にごめんなさい」
それをうち破るよう、
藍子がゆっくりまりえへ歩み寄る。
「頭をあげて?」
まりえは頭を下げたまま、後悔の涙を流す。
藍子はそのまりえの上体を優しく起こして
やりながら。
「キズね、3~4日で完治ですって。骨にも異常なし。
だから、この事はこの場だけで終わり。
有難うね勇気出して言ってくれて」
まりえはとうとう堪え切れず
藍子に抱きついて号泣する。
「私、ジゼルだけは自信があった……前のキャストが
降板して、しばらく新しい役者さんが決まらなくて。
皆んなのあいだでオーディションになるらしいって
噂が広まってから、私、寝る間も惜しんで練習した
でも……」
「次から正々堂々すればいいじゃん。結局ズルして
役貰ったって悔いが残るのは自分なんだからね」
「……ありがと、あいちゃん」
幾つかあった。
ジゼルの死装束から余り着慣れているとは言えない
ドレスに着替えた和巴は、藍子が休んでいるハズの
医務室へ向かった。
一方こちらは、医務室で休む藍子に付き添う翔太。
「良かったな、
2週間も大人しくしてりゃ完治だってよ」
「…………」
「藍子?」
藍子は翔太の胸へ縋るよう顔を寄せ。
「やだなぁ……私って、
結構粘着質だったみたい……」
「……シューズの事、皆にはどう言う?」
「何にも言わなくていいよ。
皆がひとつの目的に向かって進み始めた時に
変な水挿したくないし、あんな事しちゃった子も
今頃きっと苦しんでる」
「そっか」
――――トントン。
ドアが静かにノックされた。
2人はハっとしたよう、顔を見合わせた。
「!! どうしよう、翔くん」
「どうしようったって……どうしよう」
もう1度小さくドアがノックされ、続いて和巴の声
「藍子さん? 小鳥遊です。ちょっといいかしら」
その声で翔太はホっとしたが、藍子はまだ不安一杯の
表情だ。
「なんだ ―― 和巴さんか……良かった」
と、立ち上がる。
藍子は小声で翔太を呼び止めた。
「待って、翔くん」
「和巴さんなら大丈夫。きっと理解してくれる」
翔太はドアを開けた。
「あら、翔太くん……キミがどうしてここに?」
(匡煌さんなら分かるが)
「その事について話があるんだ」
「……長くなりそう?」
「あぁ。かなり」
「藍子さんの容態はどうなの?」
それを確認しに来たのだ。
「幸い骨に異常はなくて3~4日で痛みと腫れは引くし
2週間程度で仕事にも復帰出来るって」
「そう……良かった。じゃ、キミからの話は自宅に
帰ってから聞くわ。それでいい?」
「うん。ありがと」
和巴が去り、入れ違いで
入って来たのはまだステージ衣装のままのまりえだ。
まりえは藍子がこのギョーカイに入って初めて出来た
親友だ。
WDCのコールド(群舞)で踊っている。
パッと見の外見は普段と変わりないが、良くみれば
目は真っ赤に充血させていて新たな涙も溢れそうだ。
「やあ、お疲れ様。
打ち上げ途中で抜けちまってごめんな」
「まりちゃんにも心配かけたね」
まりえは、何か言いたい事はあるが
言いにくいといった感じで俯いている。
「……藤城?」
「……お2人から、そんな労ってもらう価値ない……」
「まりちゃん――?」
まりえは2人へ向かって深々と頭を下げた。
「藤城っ」「まりえ??」
「私、なの」
「え……?」
「シューズへガラス片入れたの」
気の遠くなるような沈黙。
「本当にごめんなさい」
それをうち破るよう、
藍子がゆっくりまりえへ歩み寄る。
「頭をあげて?」
まりえは頭を下げたまま、後悔の涙を流す。
藍子はそのまりえの上体を優しく起こして
やりながら。
「キズね、3~4日で完治ですって。骨にも異常なし。
だから、この事はこの場だけで終わり。
有難うね勇気出して言ってくれて」
まりえはとうとう堪え切れず
藍子に抱きついて号泣する。
「私、ジゼルだけは自信があった……前のキャストが
降板して、しばらく新しい役者さんが決まらなくて。
皆んなのあいだでオーディションになるらしいって
噂が広まってから、私、寝る間も惜しんで練習した
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