仕事も恋も真剣勝負 ~~ 24才の賭け

NADIA 川上

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家、探し

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季節は春・真っ盛り!!

卒業や新入学 ―― 新たなる門出の時。

気象庁の週間予報では今週中にも桜は一番の
見頃を迎えると言っていた。
そして、桜の芳香に惑わされた花見客もちらほら
出始めている今日この頃 ……


美人(?)三姉妹 + おまけ1名は、
今日も引っ越し先の物件を探す為、
住宅情報誌に首っ引きだ。


「あ、ねぇ、コレなんかどーお? 
JR代々木駅から徒歩10分・築5年・3DK・
*階建ての2階部分・日当たり良好 ――」

「駅から歩いて10分、実は20分ってねぇ」

「なによぉー。ホントに書いてあるんだからぁー」

「ソレ、ほぼ間違いなく事故物件だよ。都心の一等地から
徒歩10分圏内にそんな好物件あるワケないじゃん」

「ウ~ン…………」

「あ、咲姉じゃあコレなんかどうかな ―― って、
アカン。すぐ隣が墓地だわ……」


―― こんな具合に、
引越し先探しは超難航しています。


「うわぁぁぁっ! 激ヤバっ。このままじゃ、大学
始まってもしばらくは横須賀から通う事になり
そうやん……そんなん嫌やわ」

「まぁ、そうなったらなったで、ちょいの間ならここから
通うって手もあるし」

「えぇ~~っ! 私そんなん絶対ヤダっ。こーんな
何考えてるかよう分からん無愛想な中坊と狭い部屋で
年中一緒なんて!」

「オレの方こそ願い下げだ。年中ヒステリーでキィ
キィ喚いてる小母さんと一緒なんて」

「何ですって?!」「何だよ~」


ま、仲がいいほど喧嘩する、とは言うけど。
沙奈と拓実は例えるなら ”水と油”
反発し合って・事あるごとに口喧嘩。

初めのうちは麻子か私が仲裁に入っていたが、
それも最近はアホらしくなって止めた。


『ちわ~~っ! 沙奈と拓実は元気でいいな』


と、入ってきたのは結城。


「あ~、伸吾せんせー。いらっしゃい。暑かったでしょ。
今、冷たいお茶淹れるね」


そそくさとキッチンへ向かう沙奈。
結城にほのかな恋心を抱いている。


「で ―― 物件探しは順調か?」

「これが、順調のように見えます?」

「んんにゃ」


沙奈が結城の為に冷たいお茶を淹れ戻ってきた。
冷え冷えのおしぼり付きだ。


「ハイ、伸吾せんせ、どーぞ」

「おぉ、ありがとな」


外でトクさんが拓実を呼ぶ。
『拓ちゃーん、悪いけど店番頼めるかーい?』
トクさんは向かいでタバコ屋を営んでいる。
拓実は『ハーイ、今いくよ~』と返事しながら立ち上がり
私達へは『ちょっと、行ってくるね』と、断って
出ていった。

すると、今度は沙奈が『あっ!いっけね』と立ち上がり、
あたふた出かける用意をしながら、


「今日のバイト4時入りだったのすっかり忘れてた。
じゃ、いってきま~す」


転がった方が早そうな感じで慌てて出て行った。

煩い末っ子もいなくなったので、
私はずっと気になっていた事を結城にぶつけた。


「拓実の捜査は何か進展あったの?」


コトが ”児童虐待” に関する事なので。
流石の私もまだ物の考え方の幼い沙奈や
当事者・拓実がいる所では話が切り出し難かった。


「んー……はっきり言ってめぼしい進展はないみたいだ。
だいたいアメリカって国自体が州を問わず、幼児・児童
虐待とかDV(ドメスティックバイオレンス)の類が
多すぎるんだ」

「つまり ―― 拓実みたいなケースはそう珍しくない、
って事?」


と、麻子。


「そうなるな。ま、ワイキキ及びハワイ島に限って見れば
拓実のようにかなり手酷い暴行を受けたケースは稀だった
ようで、あちらさんもハワイ全土の司法勢力を結集する
意気込みで捜査続行中らしい」


これから依頼人の接見に向かうという結城は
**警察署へ行き。
”私もキリがいいから帰るね” という麻子と一緒に
外へ出た。
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