仕事も恋も真剣勝負 ~~ 24才の賭け

NADIA 川上

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甘味処・和み亭

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トクさんのアパート”第一平和荘” のある最寄り駅
方面に向かって数分歩くと、途中、昔ながらの
個人商店が軒を連ねる ”寿町商店街”にさしかかる。


「あー、何だかすっごく久しぶりぃ~。懐かしいなぁ」


辺りをゆっくり見渡しながら麻子が言った。


「ホント、地元に住んでいながらこっちまで来たのは
私も久しぶりだわ」


通りを行けば、私らを見知った商店の小父さんや
小母さんが気さくに声をかけてくれる。


「よう! 咲ちゃんに麻ちゃんじゃねぇか。
久しぶりだねぇ。元気してたかい」


これは魚屋の源さん。


「「 あー、こんにちわー、源さん」」
「見ての通り元気ハツラツだよ~」

「まぁ。2人ともすっかりべっぴんさんになっちゃってぇ
見違えたよ」


これは肉屋の寿美子さん。


「「こんにちわー」」

「姉ちゃん、そういえば~……」


私は麻子の意味深な視線を受け、ニヤリ微笑んだ。


「ついでだから、行ってみようか? あそこへも」

「うん! 行ってみよ」



2人が足を向けたのは ――
*側に小さな池・*側にちょっとした竹林がある所。

その中央・石畳のアプローチを抜けた場所にある
平屋のお店。
今は営業していないのか?
店内もこの周辺も閑散としている。
戸口に掲げられてる店の看板には
甘味処『和み亭』の文字。


「せっかくここまで来たんだから、中へも入って
みたかったけど ――」

「むふふ ―― っ、なら、お任せあれ」


咲耶は戸口脇の植木鉢の下から合鍵を取り出し、
玄関の施錠を解いた。


「あっきれた! 姉ちゃんってばそんなとこに合鍵
隠してたのー?!」

「へへへ ―― じいちゃんに教わってた癖が抜けきれ
なくでねぇ」


そう。
この店は咲耶達の祖父・成瀬 泰三が営んでいた店だ。

ガラ ガラ ガラ ――――

店内は祖父が亡くなって閉店した当時のままだ。
先程通ってきた商店街の古い顔見知り達が交代で
空気の入れ替えやちょっとした掃除をしてくれてる
おかげで、そう、酷い傷みはない。

麻子はイタズラっぽい瞳をキラキラさせ、
カウンターに入り喫茶用で使っていたガス代の
スイッチをカチャッと撚った。
当然だが火は点かない。


「やっぱ駄目かぁ。あわよくばお姉ちゃんの淹れた煎茶、
飲めると思ったのにな」

「何言ってんの。お茶ならうちでも淹れてあげてる
でしょ」

「ここで飲むお茶は特別なの」

「ハイハイ、そうですか」


その時、『なぁーんだ、残念』と入ってきたのは、
数年ぶりに会う懐かしい友 ――
国枝 利沙と松浪 早苗。


「私らも咲耶の淹れたお茶飲みたかったなぁ~」

「りさぁ! なえちゃん! 2人ともどうしたの?」

「仕事絡みで立ち寄ったら、商店街で早苗とばったり
鉢合わせよ」


利沙は**大の政経を卒業後、第一志望の
大手出版社に入社した編集ウーマン。


「私はこの子の定期検診なの」


と、ぷっくり膨らんできてるお腹へ手をやった早苗は
呉服屋の若女将。


懐かしい友との積もる話は尽きないが、
利沙はまだ仕事の途中で、
早苗はご家族の夕食準備があると、またの再会を約束し、
店を出た所で別れ。

麻子を駅まで見送ってアパートへ戻ったら、
何故か? 結城がいた。


「あら、伸吾先生 ―― 何か忘れ物でも?」

「ん ―― まぁな……」


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