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アフターデート
しおりを挟む浅草新仲見世『嵐山茶房』は、
京都は宇治産の良質なお抹茶をふんだんに使った
甘味が評判の和スウィーツのお店。
テーブルは5つあり、
半分くらいが客で埋まっている。
羽柴さんはいつものようにカウンターいて、
テーブル越しにオーナーの相沢さんと話していた。
私に気付くと満面の笑顔をくれる。
私だけに見せてくれる犬みたいに人懐っこい笑顔だ
その瞬間、心の底から喜びが湧き上がってくる。
―― あ、私、やっぱり彼の事が好きだ。
自分の中で彼の存在がどんどん大きくなって
ゆく……。
私が心臓をどくどくと鼓動させながら横に座ると、
心得たよう相沢さんが米粉で作った
フルーツワッフルを作ってくれた。
「う~ん……美味しい! 今までで一番好きかも」
好きなのは目の前のスウィーツなのか、
横にいる男なのか……。
なんてうっとりしていられたのはここまでだった。
「―― で、オレは何番目なわけ?」
「えっ?」
「人からのお誘いメールはシカトかますくせしてさぁ、
合コンする時間はあった訳だ」
「!! そ、それを言うなら羽柴さんだって ――」
私の脳裏にはアクエリオンで会った美女の姿が
ちらついている。
「あー?? 俺がどうしたよ」
「あんな美人と……」
「あ……桃花の事か」
「へぇ~あの人、桃花さんって言うんだぁ。
ホントに凄い美人だったよねぇ」
すると羽柴さんは ”我慢出来ない” といった感じで
肩を小刻みに揺らし ック クッ クックッ ――
笑った。
「!!」
「…… 相沢さん、チェックお願いします」
「えっ、私まだ来たばかりなんだけど」
「甘いもんなら何時でも食わしてやる。けど、
嫉妬するほど惚れた男とヤる事はもっと他にあるだろ」
「他って……」
「それを今、俺に言わせる気?」
「……」
で、でも、ちょっと待った。
まさか今日はこんな事になるなんて思っても
みなかったから、心の準備もまだだし。
下着だってオシャレの素っ気もない、
グ*ゼのパンダ柄白パンツだ。
これはひとつの、緊急事態です。
***** ***** *****
タクシーに乗るなり、羽柴さんにキスされて、
うっとりしたのもつかの間。
今日の下着、300円パンツという、
厳しい現実を思い出した。
羽柴さんは舌で私の口腔の中を貪ったあと、
唇を離した。
離した後も、その距離、恐らく五センチ以下。
半ば閉じた双眸が色っぽい。睫、長い。
―― そんな事で、恍惚としている場合ではない!
今、目の前にある危機に対処せねば。
どうも彼は私を自宅に連れ込み短時間でヤろう
としているようだが、それは、とっても、マズい。
こんなほいほいヤっちゃう女は、
せいぜいセフレ止まりだろう。
あ、だからって私は彼のオンリーワンになりたい、
とかじゃなくて。
尻軽だと思われるのは、非常に心外な事だ。
そして、何よりまずいのは、
本日身に付けている下着がグ*ゼの白パン、
よりによってパンダのアップリケがついたパンツ
ということだ。
最早、セフレにすらなれない予感……。
そんな私の懸念もなんのその、
羽柴さんはまた私に口づけた。
「ん ―― ふ」
今度は舌は少し入れるだけで、
角度を変えながら何度もキスをしてくる。
そうしながら私の左胸が彼の手に包まれた。
思わず、背中に回していた手の指に力が入り、
ぎゅっとしてしまう。
すると、彼は嬉しそうな表情になった。
「うちに泊まっていけよ……」
私も本当は帰りたくない。
でも、パンツがパンダ柄だし……。
「で、でも、明日はお店あるし……」
ほんと、スカートを脱がされる前に、
可及的速やかにタクシーから降りて浅草へ
引っ返さなければ!
「昼キャバなら始発で帰れば大丈夫だよ」
胸の上にあった手のひらが円を描くように動き、
私はびくっと反応してしまう。
ここで快楽に溺れるわけにはいかない。
声を絞り出す。
「で、でも、今、もう12時過ぎたん……じゃない?」
「“もう” じゃない。“まだ” だ」
彼はそう言うや運転手さんに向かって
「あ、ここで結構です」と告げた。
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