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大丈夫。今日はヤらないから
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タクシーを出ると、五階建てのおしゃれな
デザイナーズマンションがあった。
今度は、彼は手をひかず、私の肩に手を回して、
城の石垣みたいなエントランスへと向かう。
「あ、あの、つい、来ちゃいましたが、
お部屋拝見したら、すぐ帰るので」
羽柴さんはちょっと不満げな表情になって
私に半眼を向けた。
「いつから、そんな反抗的になった?」
「え、って ―― で、でもそれ……は困ります」
「それ……って何?」
彼はニヤっと笑って質問してきた。
やっぱ、意地が悪いな。
エレベーターに入ると、彼はまたキスをしてきた。
「なんで困るの?」
パンツが……というわけにもいかず。
しばらく悩んだ挙句、アパートの門限をダシに
使った。
「ア、アパートの門限、1時だから」
「へぇ~、そんなの初耳だなぁ~」
そりゃそうだ。
この場から逃れる為とっさについた嘘、だもん。
「じゃあ、やっぱり今夜は泊まっていけ」
いつになく強引な羽柴さんに、私再びピンチ。
そうこうしているうちに、
最上階の部屋に連れ込まれた。
ドアを閉めてから彼は言った。
「OK。今日はしない。確認だけさせて?」
―― 確認?
やっぱり、この人、言葉の使い方が独特。
ここへ来たのは今日で2回目。
部屋は廊下を進むとダイニングキッチンがあり
そこにドアがふたつ。
間取りは2LDKだ。
ひとつはドアが閉まっていて何の部屋か
わからないが、私が連れ込まれたのは ――
やはり寝室だった。
目の前に濃紺ベッドカバーのかかった
キングサイズのベッドがで~んとあった。
ぎょっとして、彼の双眸を見つめ、
「さっき、しないって!?」と語気を強めた。
「下着だけ確認させて」
えええええっ?!
むしろそれが嫌で、拒否してるっていうのに――!
「それ、どういうこと?」
慌てる私を彼は抱き上げ、
ベッドの上にそっと仰向けにさせた。
彼は眉間に皺を寄せ、吐き捨てるように言った。
「合コン受けしそうな服着やがって」
―― 急に来たー! 野獣モード!
それにしても、
なんで脱がすのに不機嫌になってるんだ?
私よりふた回り以上もガタイの大きい彼が
上に覆い被さって来る。
彼はまずアンサンブルのカーディガンを剥がし、
七分袖のニットとスリップをいっしょくたに上げた。
ブラが丸見え。
―― もしやこの人、下着マニア?
ちなみに、ブラにはお金をかけている。
オーダーメイドだ。
見た目はもちろんつけ心地も重視する。
今日つけてるやつは少しレースがついている、
大好きなピンク色。素材は天然コットン100%。
ここで終われば乗り切れる!
「レースか」
舌打ちの音こそなかったが、
舌打ちするような顔をしていた。
―― レース、お嫌いですか?
彼の手が今度は、スカートに向かった。
―― これはヤバイ!
「ちょ、それは……だめ!」
私は彼の腕を掴んだが「大丈夫、ヤらないから」
と言って、スカートを捲った!
薄いグレーのストッキングに押しつぶされて、
無様に歪んだグンゼの白パンがそこにあった
……はずだ。しかもパンダ柄。
―― 私の恋、終わった。
しばし2人とも固まっていたが、彼が沈黙を破った
「ピンクのレースにパンダ柄の白パン!」
彼が犬に戻って天真爛漫に笑っている。
私は無言で起き上がり、スカートを直し、
ニットとスリップを下げた。
「じゃ、私帰る……」
無表情でそう言うと彼に腕を掴まれた。
「ごめん、馬鹿にしてるんじゃない。安心しているんだ」
本当にこの人の言葉、意味がわからない。
彼はほっとした顔で微笑んでいる。
「勝負下着で合コンに参加していたら、どうしようかと
思ってたから」
私は口をあんぐりとさせてしまった。
開いた口が塞がらないとは正にこの事だ。
「え? 確かめるって……そういうコト?」
彼は当然という顔をしていた。
「そう。嵐山茶房に呼んだのも合コンの二次会を
阻止するため」
いや、あのメンバーで二次会はあり得ないから……。
でも、合コンに行く女なんて ――
嫌われるかと思っていたのに……
いろんな考え方があるものだ。
これが、大人ってやつなのかも。
「ドタキャンがあって、今日は休みだったしたまたま
誘われただけだから」
前々から、頼んでいたのを隠した私はずるい女
でしょうか。
「何それ。芸能人になったキッカケは、
友達がコンテストに応募したから、
みたいな……」
相変わらず表現が変わっているけど、
あながち的外れではないような。
「ってコトで、そろそろ帰りますね……」
でもまた彼に腕を掴まれ、
今度は、ベッドに引き倒された。
「何もやんないから、もうしばらくこのままで。な?」
また艶っぽい視線を向けられ、
ついつい彼の首に手を回してしまう。
しかも彼の片膝が、私の両脚の間に入って来る。
もう、下着もバレたし、このまま一気に
なだれこみたい感じだが、帰るしかあるまい。
私が黙って頭を振ると、
彼は唇を離し、顔を近づけたまま言った。
「今年は30日から年末休暇が取れそうなんだが、
泊りがけで温泉なんてどう?」
うわっ ―― 羽柴さんと温泉!!
「あ、うん……」
「じゃ、約束な」
また犬になった。
背後にふりふり揺れるしっぽが見える。
その後タクシーでちゃんと送ってくれて、
アパート前で別れた。
―― 本当に"下着確認"だけだった…。
でも、きっと次はヤる気なんだろうな。
如何にもって勝負下着はあざとすぎるし……
下着もだけど、旅行当日は一体どんな洋服、
身につければ良いのやら。
デザイナーズマンションがあった。
今度は、彼は手をひかず、私の肩に手を回して、
城の石垣みたいなエントランスへと向かう。
「あ、あの、つい、来ちゃいましたが、
お部屋拝見したら、すぐ帰るので」
羽柴さんはちょっと不満げな表情になって
私に半眼を向けた。
「いつから、そんな反抗的になった?」
「え、って ―― で、でもそれ……は困ります」
「それ……って何?」
彼はニヤっと笑って質問してきた。
やっぱ、意地が悪いな。
エレベーターに入ると、彼はまたキスをしてきた。
「なんで困るの?」
パンツが……というわけにもいかず。
しばらく悩んだ挙句、アパートの門限をダシに
使った。
「ア、アパートの門限、1時だから」
「へぇ~、そんなの初耳だなぁ~」
そりゃそうだ。
この場から逃れる為とっさについた嘘、だもん。
「じゃあ、やっぱり今夜は泊まっていけ」
いつになく強引な羽柴さんに、私再びピンチ。
そうこうしているうちに、
最上階の部屋に連れ込まれた。
ドアを閉めてから彼は言った。
「OK。今日はしない。確認だけさせて?」
―― 確認?
やっぱり、この人、言葉の使い方が独特。
ここへ来たのは今日で2回目。
部屋は廊下を進むとダイニングキッチンがあり
そこにドアがふたつ。
間取りは2LDKだ。
ひとつはドアが閉まっていて何の部屋か
わからないが、私が連れ込まれたのは ――
やはり寝室だった。
目の前に濃紺ベッドカバーのかかった
キングサイズのベッドがで~んとあった。
ぎょっとして、彼の双眸を見つめ、
「さっき、しないって!?」と語気を強めた。
「下着だけ確認させて」
えええええっ?!
むしろそれが嫌で、拒否してるっていうのに――!
「それ、どういうこと?」
慌てる私を彼は抱き上げ、
ベッドの上にそっと仰向けにさせた。
彼は眉間に皺を寄せ、吐き捨てるように言った。
「合コン受けしそうな服着やがって」
―― 急に来たー! 野獣モード!
それにしても、
なんで脱がすのに不機嫌になってるんだ?
私よりふた回り以上もガタイの大きい彼が
上に覆い被さって来る。
彼はまずアンサンブルのカーディガンを剥がし、
七分袖のニットとスリップをいっしょくたに上げた。
ブラが丸見え。
―― もしやこの人、下着マニア?
ちなみに、ブラにはお金をかけている。
オーダーメイドだ。
見た目はもちろんつけ心地も重視する。
今日つけてるやつは少しレースがついている、
大好きなピンク色。素材は天然コットン100%。
ここで終われば乗り切れる!
「レースか」
舌打ちの音こそなかったが、
舌打ちするような顔をしていた。
―― レース、お嫌いですか?
彼の手が今度は、スカートに向かった。
―― これはヤバイ!
「ちょ、それは……だめ!」
私は彼の腕を掴んだが「大丈夫、ヤらないから」
と言って、スカートを捲った!
薄いグレーのストッキングに押しつぶされて、
無様に歪んだグンゼの白パンがそこにあった
……はずだ。しかもパンダ柄。
―― 私の恋、終わった。
しばし2人とも固まっていたが、彼が沈黙を破った
「ピンクのレースにパンダ柄の白パン!」
彼が犬に戻って天真爛漫に笑っている。
私は無言で起き上がり、スカートを直し、
ニットとスリップを下げた。
「じゃ、私帰る……」
無表情でそう言うと彼に腕を掴まれた。
「ごめん、馬鹿にしてるんじゃない。安心しているんだ」
本当にこの人の言葉、意味がわからない。
彼はほっとした顔で微笑んでいる。
「勝負下着で合コンに参加していたら、どうしようかと
思ってたから」
私は口をあんぐりとさせてしまった。
開いた口が塞がらないとは正にこの事だ。
「え? 確かめるって……そういうコト?」
彼は当然という顔をしていた。
「そう。嵐山茶房に呼んだのも合コンの二次会を
阻止するため」
いや、あのメンバーで二次会はあり得ないから……。
でも、合コンに行く女なんて ――
嫌われるかと思っていたのに……
いろんな考え方があるものだ。
これが、大人ってやつなのかも。
「ドタキャンがあって、今日は休みだったしたまたま
誘われただけだから」
前々から、頼んでいたのを隠した私はずるい女
でしょうか。
「何それ。芸能人になったキッカケは、
友達がコンテストに応募したから、
みたいな……」
相変わらず表現が変わっているけど、
あながち的外れではないような。
「ってコトで、そろそろ帰りますね……」
でもまた彼に腕を掴まれ、
今度は、ベッドに引き倒された。
「何もやんないから、もうしばらくこのままで。な?」
また艶っぽい視線を向けられ、
ついつい彼の首に手を回してしまう。
しかも彼の片膝が、私の両脚の間に入って来る。
もう、下着もバレたし、このまま一気に
なだれこみたい感じだが、帰るしかあるまい。
私が黙って頭を振ると、
彼は唇を離し、顔を近づけたまま言った。
「今年は30日から年末休暇が取れそうなんだが、
泊りがけで温泉なんてどう?」
うわっ ―― 羽柴さんと温泉!!
「あ、うん……」
「じゃ、約束な」
また犬になった。
背後にふりふり揺れるしっぽが見える。
その後タクシーでちゃんと送ってくれて、
アパート前で別れた。
―― 本当に"下着確認"だけだった…。
でも、きっと次はヤる気なんだろうな。
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下着もだけど、旅行当日は一体どんな洋服、
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