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そうして、奇妙な共同生活が始まる

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  ベッドの上、ぼんやり目覚める柊。

  昨夜の夜更かしのせいか? 
  いくら寝ても寝足りない、ような気がする。

  
  ジェイクは結局、転居費用が溜まるまで
  柊のアパートで居候する事になり、
  ジェイクはロフトでいいと言ったのだが、
  柊はたとえ居候と云えどゲストに荷物置き場を
  使わわせる訳にはいかんと言い張り、
  メインベッドルームはジェイクが使い、
  柊はLDKのソファーベッドで寝ていたのだが……。

  いつもは冷たいはずの傍らへ、人肌の暖かみ。


「…………?」


  戸口へ現れた、1人息子の大地を抱きかかえた
  チャイルドシッタ-・コニーの視線が柊へ
  注がれたまま固まっている。


「ん……おはよ、コニー」

「あ、おはよ、慎……今日の朝食は3人分?」

「んー? どしてー?」

「(長いため息)はぁ~~……っ、とにかく早く起きて
 来て下さいね。大地くんの新しい学校とクラス見学に
 行く予定なんですから」

  
  と、コニーは出て行った。

  傍らで何か(誰か)が軽く動いて、
  その体をすり寄せて来たので、柊は無意識に
  そのジェイクを抱きしめた所で完全に目が覚めた。


「?!☆ ジェ ――っ(絶句)」

「ン ―― ん、ン……もう、朝なの~?」

「あ、あぁ」


  (ど、どうして、一緒に、ね・て・る……??
   それにオレ達は何故、素っ裸なんだ?)


「何か、今、女の子の声が聞こえてたけど……
 こんなとこ見られてマズかったんと違うー?」

「ま、マズい事なんか何ひとつないよ。俺はバツイチ
 子持ちだけど、彼女はいない」

「ふ~ん、慎之介って、バツイチ子持ちだったん
 だぁ―― にしては、めっちゃ冷や汗出てるよー?」

「お、大人をからかうな。ほら、朝飯食う前にシャワー
 して来い」


  と、起き上がって、ベッドの端に足を下ろして
  呆然としたよう、固まる。

  その柊の視線の先にはゴミ箱から、溢れんばかり
  となったティッシュと使用済み避妊具の山。


「んー、どしたのー?……あ、あぁ! 昨夜の慎さん、
 ものすご~く絶倫だったよ。よっぽど溜まってたん
 だね」

「……」


  ”やっべぇ~、オレとしたことがまるで記憶に
   ない……っ”


  この世の終わり、みたいな様子でベッドの端に
  座ったままの柊を横目にジェイクはすまし顔で
  シャワールームへ入って行く。


  柊が昨夜のジェイクとの行為を記憶していないのは
  ”ヤッていない”のだから当たり前で。

  ……あのティッシュと使用済み避妊具の山は、
  車中のフェ*だけで人を中途半端に興奮させ、
  自分は病院からアパートに戻るなり爆睡して
  しまった柊へのちょっとした意趣返しだったのだ。


***  ***  ***



  シャワーを浴びて、LDKで朝飯にありつく頃には

  柊も普段の状態を取り戻しており、これから
  しばらくこのアパートの居候になるジェイクへ
  大地とコニーを紹介した。


「―― 彼女は大地のチャイルドシッタ-のコニー」

「よろしく。日本語お上手ね。日系の方?」

「いや、クオーター。
 5才の時からアメリカと日本行ったり来たりの生活
 してたから」


  (相手が可愛い女の子だと、随分優しいじゃ
   ないか。それに、自分のパーソナルデータも
   素直に教えてる……)


「やだ、転勤族って私と同じだわ」

「ふ~ん、そうなの」

「うん。私の場合、母と再婚した継父
 (ステップファーザー)が外資系銀行の営業マン
 でね、引っ越し・転校は日常茶飯事だったわ」
 
「だからかぁ、キミの言葉のイントネーションって
 訛りがなくて聴きやすい」

「そーぉ? 嬉しい! アメリカの学校じゃ言葉も
 ロクに喋られなきゃ即イジメの対象だから、必死で
 補習クラスに通ったの」


  ジェイクとコニー、2人の様子が和気あいあいと
  していくに釣れ、柊の表情は憮然としたものに
  なってゆく。

  それが大地には面白くて仕方がない。

  俯き、必死に笑いを堪える。


「―― コラ、大地、何がそんなに可笑しいんだ?」

「ジェイクとコニーってとーっても仲良しさんですね」

「あぁ、仲が良いのは凄くいい事だ」

「でも、お父さんは……」

「……何が言いたい?」


  との、問いに大地は「別にぃ」と、
  言葉をはぐらかして、壁時計を見やり、


「あー、もう11時ですよ。ミセス・ブラウンとの
 お約束に遅れちゃいます」

「おぉ、そうだな」
  
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