『ギブ・アンド・テイク(Give and take)』

NADIA 川上

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5 戸惑いの中で

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 私は人づてとかではなく自分の口で利沙に妊娠を告げたくて。 

 いつものように定時で仕事を終え利沙のアパートで妊娠していることを話した。
 
 そして今自分が抱えている虎河さんについての不安要因も。

 全部包み隠すことなく話した。利沙は何も言わずに聞いてくれた。


「なるほどねぇ」


 利沙は大方聞き終えると、ひと言そう言った。


「話してくれてありがとね」


 そう言って、私の頭をポンポンと撫でてくれた。


「すぐ相談出来なくて、ごめん」

「何ちゃあない。どうせあんたの事だから、いらん事あーだこーだ悩んでたんでしょ」
 
 
  流石、14年来の親友だ。私の事良く分かってる。
 

「……でも、ほんとにどうしよ」

「あやはどうしたい? 産みたい? それとも、産みたくない?」

「うーん……それがよく分からないんだ」


 病院で自分のお腹の中のエコー画像を見た後だって、妊娠したって事は半信半疑だし。
 
 初産で双子を産む覚悟が出来るのだろうか……。

 仮に赤ちゃん産んだとして、虎河さんと一緒にちゃんと育てていけるのだろうか。
 
 考えれば考えるほど、不安が頭の中いっぱいになる。

 一応赤ちゃんの父親だから、虎河さんへ妊娠した事は国際電話で知らせたけど、彼からの反応は『ふーん。わかった』って、ホントに素っ気ないモノだった。

 10代女子に安全日なんて存在しない。
 たとえ避妊したとしても失敗する確率は大きいし。
 快楽に流されセッ△スすれば、妊娠って結果があるって事くらい分かってたはず。
 
 一度に2人分の重責を背負うという事実が私の心に重くのしかかる。

 せっかくこのお腹に宿ってくれたこの子を堕ろすということは、小さな生命を殺すのと同じだ。
 

「あや。まだ時間はあるから。ゆっくり考えていこう? 及ばずながら私も協力する」


 利沙のその言葉で、私はとても救われた。


「利沙……」


 利沙の優しさが嬉しくて、泣きたくなってしまった。

 いろんなことがあって頭もついていけないし、考えることがたくさんあって、正直かなりしんどい。


「あやが辛い時は私がそばにいる。慰めるし、美味しいものだって作るよ。……もし産みたいと思うのなら、私はあやのその決意をずっと応援していくつもりだから」

「っ……ありがとう……利沙」

「何言ってんの。うちら親友でしょ」

「うん」


 利沙に本当の気持ちを話した事で、私の心は少し軽くなった気がした。
 だけど産むか産まないかの選択はしばらく出来そうにない。

 真吾先生からは中絶をするなら、20週目までだと言われた。
 だけど私のお腹に宿っているこの小さな生命を、捨てることは許されない気もする。

 
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