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分かれ道
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「すいませんでした」
竜二の部下が車を用意する間、
竜二と綱吉はアパートの狭い廊下に置かれた
木箱に座っていた。
痛みが薄くなった代わりに、
傷口の辺りが麻痺してるような違和感があった。
まだ、麻酔が効いているからだろう。
「……何故あんなをした」
答えられずに綱吉はじっと黙っていた。
「まぁいい、それはお前が保護者に話す事だ」
静かな口調に突き放されたように感じて
綱吉は不意に寂しくなった。
「……何故だ?」
その問いかけが意外だったのか?
男が不思議そうに俺を見た時、
車が玄関前に横付けされた。
「とりあえず乗ろう」
***** ***** *****
促されて車の後部席に乗ると竜二は綱吉の実家 ――
父が暮らす家の住所をドライバーの部下・
浜尾 利守に告げた。
「あの……」
あの医者らしい髭面のおっさんはこの男を
”竜二”と呼んでいたが、果たして自分まで
そう呼んでもいいのか? 戸惑って言葉を切った。
「手嶌だ」
綱吉の戸惑いを察したように、竜二が名乗った。
「手嶌さん……俺は、成瀬綱吉って言います。
あの部屋で、もし、俺があんな事しなかったら、
俺の事……」
躊躇いながら綱吉は「抱いたのか」とは、
口に出せなかった。
この実直そうに見える男に対する
侮辱のように思えたのだ。
「……俺はバイセクシュアルだ。
しかし、同意じゃないセッ*スはしない。
相手がガキだろうと女だろうとな」
綱吉の聞きたい事を察したように、
手嶌はきっぱりと答えた。
そして利守へ『ここで停めろ』と指示をだす。
車はハザードライトを点滅させ、路肩に寄って
ゆっくり停止した。
ほっと安心して力を抜いた綱吉に手嶌は聞いた。
「ここがどの辺りか分かるな」
綱吉は黙って頷いた。
今この車が停まっている道の先は分かれ道で、
右は大通り、左に折れれば綱吉の実家・今泉家のある
道に向かう。
「実家に戻る気がないんなら、いったん、
俺の家に来るか?」
ずっと後になって、手嶌は無理に実家へ連れ帰っても、
逃げ出したら元も子もないからと、
綱吉に打ち明けたが、そんな様子はおくびにも
出さなかった。
再び綱吉は頷いた。
こんな顔を家族には見せられないと思った。
「学校は?」
「停学中」
「そうか。だが、親に連絡だけは入れろ」
以前の俺なら大人にこんな上から目線で命令されたら
文句の二三は言って相手を病院送りにした、
もんだけど、手嶌さんの場合は少しも気にならな
かった。
竜二の部下が車を用意する間、
竜二と綱吉はアパートの狭い廊下に置かれた
木箱に座っていた。
痛みが薄くなった代わりに、
傷口の辺りが麻痺してるような違和感があった。
まだ、麻酔が効いているからだろう。
「……何故あんなをした」
答えられずに綱吉はじっと黙っていた。
「まぁいい、それはお前が保護者に話す事だ」
静かな口調に突き放されたように感じて
綱吉は不意に寂しくなった。
「……何故だ?」
その問いかけが意外だったのか?
男が不思議そうに俺を見た時、
車が玄関前に横付けされた。
「とりあえず乗ろう」
***** ***** *****
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父が暮らす家の住所をドライバーの部下・
浜尾 利守に告げた。
「あの……」
あの医者らしい髭面のおっさんはこの男を
”竜二”と呼んでいたが、果たして自分まで
そう呼んでもいいのか? 戸惑って言葉を切った。
「手嶌だ」
綱吉の戸惑いを察したように、竜二が名乗った。
「手嶌さん……俺は、成瀬綱吉って言います。
あの部屋で、もし、俺があんな事しなかったら、
俺の事……」
躊躇いながら綱吉は「抱いたのか」とは、
口に出せなかった。
この実直そうに見える男に対する
侮辱のように思えたのだ。
「……俺はバイセクシュアルだ。
しかし、同意じゃないセッ*スはしない。
相手がガキだろうと女だろうとな」
綱吉の聞きたい事を察したように、
手嶌はきっぱりと答えた。
そして利守へ『ここで停めろ』と指示をだす。
車はハザードライトを点滅させ、路肩に寄って
ゆっくり停止した。
ほっと安心して力を抜いた綱吉に手嶌は聞いた。
「ここがどの辺りか分かるな」
綱吉は黙って頷いた。
今この車が停まっている道の先は分かれ道で、
右は大通り、左に折れれば綱吉の実家・今泉家のある
道に向かう。
「実家に戻る気がないんなら、いったん、
俺の家に来るか?」
ずっと後になって、手嶌は無理に実家へ連れ帰っても、
逃げ出したら元も子もないからと、
綱吉に打ち明けたが、そんな様子はおくびにも
出さなかった。
再び綱吉は頷いた。
こんな顔を家族には見せられないと思った。
「学校は?」
「停学中」
「そうか。だが、親に連絡だけは入れろ」
以前の俺なら大人にこんな上から目線で命令されたら
文句の二三は言って相手を病院送りにした、
もんだけど、手嶌さんの場合は少しも気にならな
かった。
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