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爺の企み
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綱吉は学生寮への引っ越しを認めさせた時、
父と交わした条件の中のひとつを果たすべく、
6時限目の授業が終わって実家へ向かう。
が、その足取りは殊の外重い。
今夜は月いち、祖父を招いての食事会が予定されて
いるのだ。
祖父のお気に入りは今泉家の正統後継者、
実兄・絢二朗で。
同様に正統な血統はあっても横道に逸れてしまった
綱吉を祖父は快く思ってない。
それが、祖父の態度からも口調からもあからさまに
わかるから、
自分達を何とかして仲直りさせようとしてる
父には悪いが、
綱吉は昔っから祖父との同席が大の苦手だった。
それと同じくらい、兄の事も苦手だ。
本当は航海士になりたかったのに、
自分の夢を諦めて祖父の望んだ道を突き進む絢二朗。
それもひとつの生き方だとは思うが、自分なら、
本当の自分を押し殺してまでエリートコースを
歩こうとは思わない。
高校へはただ成り行きに流されるまま
通っているだけで。
確かな目標は見つかっていない……。
***** ***** *****
ここが大都会の1等地である事を忘れさせる
鬱蒼とした森のような広大な土地に、今泉家はある。
立派な桜の木が見え、
満開時にはさぞや壮観だろうなどと、
この屋敷を訪れる客は誰もが思わず
この場に似つかわしくないため息を漏らす。
都内の1等地にこれだけの屋敷を持つ今泉一族は、
古くは天皇家とも関わりのある家柄で、
世が世なら華族様だったはずの家柄だそう。
本来の当主は父の長兄、綱吉にとっては伯父にあたる
朝親だったが、祖父の意にそぐわぬ結婚をして
逆鱗に触れ廃嫡。
家督は父が継いだ。
綱吉は家の通用口までくるとインターホンを
鳴らした。
『はい』
「タキさんただいま」
『綱吉様お帰りなさいませ。すぐにお開けしますね』
ガチャッと門扉の施錠が解かれいつものように
玄関に向かう。
家政婦のタキがあわただしく拭き掃除をしていた。
「ただいま。何か、随分と忙しないね」
「今から大事なお客様をお連れするからと
大旦那様からお電話を頂きまして」
「大事なお客様?」
「さささ。綱吉様も早くこれにお着替えになって下さい」
「えっ ―― 俺も?」
タキに風呂敷に包まれた何かを渡された。
(大事なお客様って、誰だろう?
そんな人の前にわざわざ俺なんて
呼んだりしないと思うけどなぁ)
そんなことを考えながら綱吉は用意された
風呂敷の中身を見た。
「着物?」
それは史香が兄弟お揃いでと、特注で仕立てさせた
西陣織の紬だった。
*** *** ***
「―― まぁまぁ、
お客様と言うのは若宮様だったのですか?
お久しぶりでございます。タキでございます」
「どうも、タキさん。すっかりご無沙汰してしまって」
すると珍しく上機嫌な今泉が言う。
「あぁ、タキさん、悪いが、
綱吉を呼んで来てくれるかな」
「はい、畏まりました」
玄関の方が急に騒がしくなったので
綱吉は部屋から顔を出すと声のする方を伺った。
すると、角を曲がって現れたタキが、
「大旦那様がお呼びでございます」
あまり気は進まないが、
また祖父の機嫌を損ね、家族に無用なゴタゴタは
起こしたくない。
「……」
今泉はタキと共に現れた綱吉を呼び寄せた。
「あぁ、綱吉や、こちらへおいで」
「……はい」
今泉は自分が指示した着物に身を包む綱吉を
満足そうに眺めた。
「馬子にも衣装か」
「……」
お客は70絡みの男性と20代前半位の
和装男子だ。
「こちら、若宮さんと御子息の尊くんだ。
ご挨拶なさい」
(尊……ってぇと、若宮の三男坊か……)
「は……はい」
綱吉はその場に正座をし両手をつき、
作法通りの挨拶をする。
「ようこそおいで下さいました。
綱吉と申します」
「初めまして綱吉くん、僕は若宮尊と言います。
以後、お見知りおきのほどを」
まるで、お見合いみたいに堅苦しい雰囲気に、
綱吉はどんどん居心地が悪くなっていった。
父と交わした条件の中のひとつを果たすべく、
6時限目の授業が終わって実家へ向かう。
が、その足取りは殊の外重い。
今夜は月いち、祖父を招いての食事会が予定されて
いるのだ。
祖父のお気に入りは今泉家の正統後継者、
実兄・絢二朗で。
同様に正統な血統はあっても横道に逸れてしまった
綱吉を祖父は快く思ってない。
それが、祖父の態度からも口調からもあからさまに
わかるから、
自分達を何とかして仲直りさせようとしてる
父には悪いが、
綱吉は昔っから祖父との同席が大の苦手だった。
それと同じくらい、兄の事も苦手だ。
本当は航海士になりたかったのに、
自分の夢を諦めて祖父の望んだ道を突き進む絢二朗。
それもひとつの生き方だとは思うが、自分なら、
本当の自分を押し殺してまでエリートコースを
歩こうとは思わない。
高校へはただ成り行きに流されるまま
通っているだけで。
確かな目標は見つかっていない……。
***** ***** *****
ここが大都会の1等地である事を忘れさせる
鬱蒼とした森のような広大な土地に、今泉家はある。
立派な桜の木が見え、
満開時にはさぞや壮観だろうなどと、
この屋敷を訪れる客は誰もが思わず
この場に似つかわしくないため息を漏らす。
都内の1等地にこれだけの屋敷を持つ今泉一族は、
古くは天皇家とも関わりのある家柄で、
世が世なら華族様だったはずの家柄だそう。
本来の当主は父の長兄、綱吉にとっては伯父にあたる
朝親だったが、祖父の意にそぐわぬ結婚をして
逆鱗に触れ廃嫡。
家督は父が継いだ。
綱吉は家の通用口までくるとインターホンを
鳴らした。
『はい』
「タキさんただいま」
『綱吉様お帰りなさいませ。すぐにお開けしますね』
ガチャッと門扉の施錠が解かれいつものように
玄関に向かう。
家政婦のタキがあわただしく拭き掃除をしていた。
「ただいま。何か、随分と忙しないね」
「今から大事なお客様をお連れするからと
大旦那様からお電話を頂きまして」
「大事なお客様?」
「さささ。綱吉様も早くこれにお着替えになって下さい」
「えっ ―― 俺も?」
タキに風呂敷に包まれた何かを渡された。
(大事なお客様って、誰だろう?
そんな人の前にわざわざ俺なんて
呼んだりしないと思うけどなぁ)
そんなことを考えながら綱吉は用意された
風呂敷の中身を見た。
「着物?」
それは史香が兄弟お揃いでと、特注で仕立てさせた
西陣織の紬だった。
*** *** ***
「―― まぁまぁ、
お客様と言うのは若宮様だったのですか?
お久しぶりでございます。タキでございます」
「どうも、タキさん。すっかりご無沙汰してしまって」
すると珍しく上機嫌な今泉が言う。
「あぁ、タキさん、悪いが、
綱吉を呼んで来てくれるかな」
「はい、畏まりました」
玄関の方が急に騒がしくなったので
綱吉は部屋から顔を出すと声のする方を伺った。
すると、角を曲がって現れたタキが、
「大旦那様がお呼びでございます」
あまり気は進まないが、
また祖父の機嫌を損ね、家族に無用なゴタゴタは
起こしたくない。
「……」
今泉はタキと共に現れた綱吉を呼び寄せた。
「あぁ、綱吉や、こちらへおいで」
「……はい」
今泉は自分が指示した着物に身を包む綱吉を
満足そうに眺めた。
「馬子にも衣装か」
「……」
お客は70絡みの男性と20代前半位の
和装男子だ。
「こちら、若宮さんと御子息の尊くんだ。
ご挨拶なさい」
(尊……ってぇと、若宮の三男坊か……)
「は……はい」
綱吉はその場に正座をし両手をつき、
作法通りの挨拶をする。
「ようこそおいで下さいました。
綱吉と申します」
「初めまして綱吉くん、僕は若宮尊と言います。
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