溺愛! ダーリン

NADIA 川上

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爺の企み ②

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 タキの案内で一同は、
 客間に用意された酒宴の席へ向かった。

 一応、社交辞令の挨拶は済んだので、
 綱吉は部屋に戻ろうとしたが、
 今泉がストップをかけた。


「何処へ行くんだ、
 尊くんにお酌をして差し上げなさい」


 (お酌って、俺、ホストじゃないんだけどー?)
 

 自分の感情だけでこの場の雰囲気を
 壊すわけにもいかず、
 客間に入りタキの用意した酒が運ばれると
 綱吉は「失礼します」と尊の隣に座った。

 酒を持つと震える手で尊の持つさかづきに酒を注ぐ。
 
 緊張からくる震えのせいでカチカチと音を立てて
 少し溢れさせてしまった。


「おっとと ――」

「あ、ご、ごめんなさい。す、すぐに何か拭く
 ものを ――」


 慌てて立ち上がろうとする綱吉を尊は宥める。
 

「いいですよ、これくらい ―― 
 それより、綱吉くんも一杯いかがですか」

「おいおい、尊。綱吉くんはまだ未成年なんだぞ」


 と、柔らかめに注意する若宮に対し、
 今泉は ――
 
 
「まぁ、いいじゃないか若宮さん。めでたい祝いの席
 じゃて」
 
 
 ”めでたい祝いの席”という祖父の言葉に
 引っかかったが。 

 勧められ、盃に満たされた酒を仕方なく飲む。

 その直後に綱吉はビクンとした。
 他の人には見えないよう背後から尊の手が
 綱吉の尻を撫で回している。


 (何だ、こいつっ……とんでもない、セクハラ野郎)


「あぁ、綱吉くん、あそこに見える……ほら、
 あの木は枝垂れ桜ですか?」


 尊の声に綱吉はハッとなった。


「え、えぇ、そうです。
 春になるとあそこでお花見がてら手軽な茶会など
 開くんですよ」

「さぞかし綺麗なのでしょうね」

「1度その頃にいらして下さい」


 つい、話しの流れで言ってしまい、すぐ後悔した。
 
 (俺のばか)
 

「よろしいんですか?」


 仕方がないので、上手く話しを繋げる。


「その時は濃茶でもたててご馳走しますよ」

「あぁ、今から楽しみだなぁ。あの、よろしかったら、
 庭を案内して頂けますか?」

「あ ―― は、はい……」


 (もうっ! 何なんだよコレ!? 
  何かの罰ゲームか?)


 綱吉と尊が庭の小散歩から戻ると一同はダイニングへ
 移動しディナーへ突入。
 
 デザートになった頃合いを見て、
 何とかこの場から脱出しようと試みる度、
 今泉に出鼻を挫かれ失敗。
 
 何度目かの失敗のあと絢二朗の帰宅でやっと
 逃げ出す事が出来た。
 
 そして足早に自室へ向かう途中、
 キッチンへ入っていく父・正親の姿を見て、
 そちらへ方向転換した。
 
 
 
 憮然とした表情の綱吉が入って来ると、
 継母・史香は素早く扉を閉めた。
 
 綱吉は険しい目つきのまま正親へ詰め寄り、
 口を開こうとしたが、正親がその口を手で押さえた。
 
 
「んぐぐ……」

「何も言うな」

「ンんン……」

「あぁ。お前の言いたい事は分かっている」


 綱吉は正親の手をどけて、
 
 
「じゃあ、俺の納得いくように説明してくれる?」

「あぁ ――」  
   

*****  *****  *****


 やっと部屋へ戻った綱吉は、入ってくるなり
 脱力したようその場に座り込んだ。

 何時に増してご機嫌な祖父の様子がずっと可怪しい
 って、思っていた。
 
 案の定、あの作り笑顔の裏には祖父の小狡い魂胆が
 あったのだ。
 
 ドアを小さくノックする音に続いてドアが開き、
 異母弟その壱・純弥が入ってきた。
 
 
「お疲れさまぁ~。聞いたよ。お見合いの件」

「……」

「つっくんらしくもない」

「あー?」

「セクハラされ放題だったじゃん」

「おま(え)っ ―― 見てたんか」


 庭を散歩中の尊は、今泉なら大抵の事は許すと
 踏んで、綱吉をスマートにエスコートするとみせ、
 よほど綱吉のお尻が気に入ったのか?
 ずーっと綱吉の尻を触り続けていたのだ。
 
 
「あそこまであからさまじゃ、見たくなくても
 見えちゃうよ」
 
「お前、見てたなら助けろよ」

「冗談でしょ。あそこで止めちゃったら全然面白く
 ないじゃん」
 
「お、おまえな……」

「俺はつっくんと違って学校生活平穏無事に
 過ごしたいから。院生のプリンスに目ぇ付けられたく
 ないもん」
 
「いっぺん死んでみるか」   

「あと……」
 
「あと?」

「若宮先輩ってさ。狙った獲物には超手が早いって噂
 だから、つっくんも気を付けた方がいいよ」

「……」

「それにー」

「まだ何かあるのかよ」

「つっくんが熱烈片思い中の手嶌せんせとは
 犬猿の仲だって。
 おまけに家同士の確執みたいなもんもあるらしい」
 
「それって一番厄介じゃん」  


 つい先日、久しぶりに良守と会った。
 
 手嶌の出迎えで来ていたのであまり長くは
 話せなかったけど。
 
 何だかとても疲れている感じだった。
 
 そう言えば手嶌も最近疲れている感じだし、
 それだけ仕事が忙しいのか? と思えば、
 休みを取って寮にもいない事の方が多い。
 
 それと今回の事、何か関連があるとは思えないが。
 
 いずれにせよ気になるので、探りは入れてみようと
 考えている。
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