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負けず嫌い
しおりを挟む「う、そ……」
綱吉はショックのあまりその場に立ち尽くしていた。
学内模試が終わり、
各学年の総合点の上位50位までが中央昇降口の
掲示板に貼り出されている。
まるで慰めるよう幼なじみ・あつしに肩へ手を回され
綱吉はムムム……ッと唸る。
「嘘だよな、コレ」
======================
1 小鳥遊 聖月 (950点)
2 国枝 あつし (905点)
3 今泉 綱吉 (885点)
4 ――――
======================
(20点差であつしに……しかも、
長らく病欠していた聖月に至っては65点もの
大差をつけられてしまった)
学期末にこの点数はちょっとマズいんじゃね?
中学時代からあらゆる試験で単独首位をほぼ
独走していたこの俺が、まさか・まさかの……。
これをショックと言わず、何と表現しよう?!
「あぁ……にしても、聖月ぃ」
「なに?」
「お前ってさ、いつの間に勉強してんの?」
「それな、長年いとこやってる俺にも謎なんだよなぁ」
と、あつし。
「んー……皆んなと同じ、だよ」
「しかも俺、あつしにまで負けてるし」
「まぁ、長い人生こんな事もあらぁな。そこで
しょげかえってる我が親友へ救いの手を差し伸べよう
ではないか」
「救いの手ぇ??」
きょとんとする綱吉の髪をクシャっとしてあつしは
笑った。
「これから3人でレッツお勉強会!」
「あーっ??」
「何だよ、そのあからさまに嫌そうな顔は」
「別にぃ」
「もち、カテキョは聖月と俺な。題して
【今泉綱吉を救う会】ってことで」
「えー、なんだよそれぇ~」
ムキィィィと怒る綱吉を”あはは――”と笑い
飛ばし、やり過ごすあつし。
流石に13年越しの親友だけあって、
綱吉の扱いに手馴れている。
勉強出来て・スポーツも万能で・
おまけに性格も良し。
そんなツナくんにも抜けてるとこがあるんだなって
今日初めて分かった。
完璧な人間なんているワケないんだから、
それは当然なんだろうけど……ズルい。
ホント、ずるいよ、ツナくん。
これじゃ私ますますあなたの事……。
聖月は思わず赤くなって俯く。
そんな聖月を壁にもたれた1人の男子・菊池が
見ていた。
「さてと、それでは皆さん参りましょうか」
あつしがそう言うと、どこからともなく
「待った!」と言う声に3人は振り返った。
「菊池……くん」
その菊池なる男子は以前、聖月を力ずくで犯そう
とした前歴があり。
綱吉はもちろん、あつしまでもが大いに嫌っていた。
「その【今泉綱吉を虐める会】俺も参加するぜ」
3人は「嘘っ」と驚く。
綱吉は因みに聞いてみた。
「ところで菊池はさ、ここに載ってんのか?」
「もちろん……載ってるわけねぇだろうが」
「あらら。残念くんがここにもう1人か。じゃ
【今泉綱吉と菊池賢治を虐める会】に名前変更だな」
とあつしが言うと「望むところよ」と菊池は
胸を張った。
何故喧嘩越し?
「まぁ、お互い色々思うところはありそだけど、
一応友達?」
あつしに握手を求められ菊池はその手を握る。
プライベートまで聖月嬢と2次元童貞オタクを
一緒にさせるかっての。
そうなるとあのいとことも手を結んだ方が
よさそうだ。
菊池はそう答えを出した。
*** *** ***
「う~ん」と菊池は頭を掻き掻き聖月を見る。
菊池、聖月、綱吉、あつし、の4人は
図書館にいた。
「なんで図書館なんだよ。小鳥遊の家行こうぜ」
菊池にボソっとそう言われ、
え――っとあつしが驚いた。
「ダメだめ。お前の下心くらいわかってんだからなー」
と、綱吉が菊池を見ると菊池は
「はぁー? なんだよ、俺の下心って」
「勉強するっていうのは名目でまた小鳥遊に変な事
しようってんだろ」
(変な、こと……)
聖月はカァァ……と顔を赤らめた。
「何だとっ?!」
にらみ合う2人。
そんな2人の間にあつしが割って入る。
「ちょっと止め・止め。2人共ココ、図書館だって
忘れてないか? 流石の俺も恥ずかしい」
見れば、周囲の利用者の冷たい視線が5人に
集中している。
騒ぎの元となったツナと菊池が”すんません”
と頭を下げ、勉強続行。
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