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生誕祭
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毎年、クリスマス・イブの前日から25日まで
催される、
立祠堂学院のイエス・キリスト生誕祭は、
三段階方式の公開だった。
1日目が学校内部公開、
2日目が学校関係者及びマスコミ向け、
3日目が一般公開となっている。
初日と二日目を何とかそつなくこなし、
ようやく3日目……。
1ヶ月程前に突然依願退職した、
元体育副担当・手嶌も見に来るとあって、
心持ち綱吉は緊張していた。
「いらっしゃいませ―」
学食を特別に貸し切り、
綱吉達2-S=2年S組クラスは
”コスプレカフェ”をしていた。
基本男子は女装、女子は男装するのだが、
小柄な男子数人……綱吉、マモ、よっしー、3人と、
背の高い女子数人 ―― 京子・智己・笑子ら
3人が代わる代わる一般客を案内している。
「次、マモときょーこちゃんだよ??」
案内を終えた智己が、男子・マモに声をかけた。
「うん。分かった」
そのマモが一息つき終わり、交代の時間になっても、
綱吉は客席の方から戻って来ない。
「ツナの奴、まだ給仕してるのかな……」
「うん。もうすぐお父さん達が来るから、
それまで頑張るって言ってたよ? ね、ヒロ?」
「うん。そうそう……」
笑子とヒロがマモに説明する。
「でもさ、ツナくん……すっごいあのコスチューム
似合ってるよねぇ」
「似合う似合わないのレベルじゃないよ。
似合いすぎ。特に、アレつけたから ――」
「あー、うんうん。
アレ、ホント良く似合ってもんねぇ」
女子がさざめく。
女子達の視線の先に立つツナは ――、
頭に猫耳のカチューシャ、
そして黒い猫の尻尾をつけていた。
柔らかな金髪を、ゆるふわなツインテールに結い、
ゴスロリに近い作りのメイド服は、
高い襟や半袖に細かくクオリティーの高いレースが
ふんだんに使われている。
スカートは、
幾重にも付けられたペチコートによって、
フワリと膨らんでいるのだが、
不思議な事に膝上15センチ位なのに、違和感も無い。
清楚な白いエプロンにも、
ギャザーを寄せたフリルがつけられて、
メイド服の可愛さを倍増させている。
白いニーハイは、ギャザーを寄せて作ったガーターが
取り付けられ、可愛らしさの中に、
少々危ういイメージも付け加えている。
そのメイドコスチュームのオプションとして、
黒くて長い尻尾と猫耳カチューシャがついている
のだ。
可愛く見えない訳がない。
楚々とした歩き方も手伝い、
女の子にしか見えない。
何層にも重ねたペチコートの下に、
ボクサーブリーフを穿いているなど、
誰も想像もつくまい……。
「足音も立てないから、ホントに猫みたいよねぇ……」
「シミちゃん達も似合うけど、一番似合うのはツナくん
だよね」
ほぅっ……と溜息をつくコスプレ女子達に気づかず、
綱吉はかいがいしく給仕に徹していた。
大柄な男子は、あまり可愛らしいのコスプレは
無理だった為、少しレトロなロングスカートの
メイド服にしている。
猫の尻尾をつけたミニスカメイド服をチョイス
したのは、比較的小柄な男子達だけだったので、
一種異様な光景が広がっていたりする。
それでも、毎年このテの模擬店は一二を争う繁盛店
になる。
「では、ごゆっくりお寛ぎ下さいませ……」
教師以外の職員達が座る一角に、
綱吉はお菓子やジュースを運び終え、
ペこりと一礼して厨房へ下がった。
そこでは柾也がコック長をしている。
「お疲れ、なんか飲むか?」
「ん、ミルクティーかな……茶葉が濃いめのが飲みたい」
「了解」
「ごめんね。せっかく完全オフの1日だったのに、
こっちの手伝いさせちゃって」
「気にすんな。
俺が見てらんなくて手を出しただけだから、
お前が気にする必要はねぇし」
手前のオーブンでは、
リーフパイが焼き上がる寸前だ。
「……? 疲れたのか? ツナ」
俯いて、スカートと手だけの視界に、
柾也の心配そうな表情があった。
「……っ!? えっ?
あっ、あの、ちっ、ちがっ」
心臓がバクリと跳ね、慌てた拍子に体が傾いだ。
ぱしっ。
綱吉の腕を柾也が掴み、倒れかけた体を支える。
「あ、あり、がと……」
「お前、やっぱり疲れてんじゃねえの?
呼んでもボンヤリして返事しねーし。
ちょっと座って休んでろ。」
厨房の端にあった椅子を持ってきて、
綱吉を座らせる。
「お父さんが来るまで頑張るっつっても、
肝心の回る時に疲れてちゃ意味ねえだろ?
少し座っとけ」
綱吉の横の調理台に、
ミルクティーとリーフパイを置き、
柾也も暫し休憩する。
「ありがとう。いっつも心配かけてごめんね」
苦笑いする。
「別に、これくらい親友なら当たり前だろ?」
ぶっきらぼうな言葉に篭められた感情は、
柾也自身の言う通り親友としてなのか、
それとも、別のものなのか ――?
そんな事考える自分の方が少し可怪しいと、
綱吉は黙るしかない。
「とりあえず、それ味見しろよ。
客に出せるかどうかとかあるし」
「あ、うん。いただきます」
少し冷めたパイは、サクリとした歯ざわりで、
メープルシロップとバターの香りが鼻に抜けた。
「おいしい……」
「そっか。 ならいいや」
ツインテールのリボンを崩さないように、
綱吉の頭をやんわりと撫でて、柾也は離れていった。
『ちょっと、さっきのアレ、見た?』
『見た見たっ。なんかさ、綱吉くんと八神くん、
すんごくイイ雰囲気だったよねー!?』
『ぶっきらぼうだけど、さりげなくツナくんの事
気遣ってて……やぁん、
なんだか変な想像しちゃうじゃなーいっ!!』
ヒソヒソ話す女子達の声は、
マモ達男子にもかろうじて届く。
「………女子、怖………っ」
男性同士の恋愛ネタで盛り上がる女子達に、
マモ達は正直引いていた。
「ん~……確かに、
八神とのやり取りって、なんか怪しい感じは
するけど、今泉の好きな人って違う気がする……」
腕組みをした京子が呟いた。
幼い顔立ちをしているが、
微かに艶っぽい部分が滲み出ているのを、
女子達は敏感に嗅ぎ取っている。
誰かに恋愛感情を抱いているだろうことも。
ただ、漠然とだが、その感情が柾也にではない
他の誰かに向けられているのだと、
京子は薄々感じていた。
催される、
立祠堂学院のイエス・キリスト生誕祭は、
三段階方式の公開だった。
1日目が学校内部公開、
2日目が学校関係者及びマスコミ向け、
3日目が一般公開となっている。
初日と二日目を何とかそつなくこなし、
ようやく3日目……。
1ヶ月程前に突然依願退職した、
元体育副担当・手嶌も見に来るとあって、
心持ち綱吉は緊張していた。
「いらっしゃいませ―」
学食を特別に貸し切り、
綱吉達2-S=2年S組クラスは
”コスプレカフェ”をしていた。
基本男子は女装、女子は男装するのだが、
小柄な男子数人……綱吉、マモ、よっしー、3人と、
背の高い女子数人 ―― 京子・智己・笑子ら
3人が代わる代わる一般客を案内している。
「次、マモときょーこちゃんだよ??」
案内を終えた智己が、男子・マモに声をかけた。
「うん。分かった」
そのマモが一息つき終わり、交代の時間になっても、
綱吉は客席の方から戻って来ない。
「ツナの奴、まだ給仕してるのかな……」
「うん。もうすぐお父さん達が来るから、
それまで頑張るって言ってたよ? ね、ヒロ?」
「うん。そうそう……」
笑子とヒロがマモに説明する。
「でもさ、ツナくん……すっごいあのコスチューム
似合ってるよねぇ」
「似合う似合わないのレベルじゃないよ。
似合いすぎ。特に、アレつけたから ――」
「あー、うんうん。
アレ、ホント良く似合ってもんねぇ」
女子がさざめく。
女子達の視線の先に立つツナは ――、
頭に猫耳のカチューシャ、
そして黒い猫の尻尾をつけていた。
柔らかな金髪を、ゆるふわなツインテールに結い、
ゴスロリに近い作りのメイド服は、
高い襟や半袖に細かくクオリティーの高いレースが
ふんだんに使われている。
スカートは、
幾重にも付けられたペチコートによって、
フワリと膨らんでいるのだが、
不思議な事に膝上15センチ位なのに、違和感も無い。
清楚な白いエプロンにも、
ギャザーを寄せたフリルがつけられて、
メイド服の可愛さを倍増させている。
白いニーハイは、ギャザーを寄せて作ったガーターが
取り付けられ、可愛らしさの中に、
少々危ういイメージも付け加えている。
そのメイドコスチュームのオプションとして、
黒くて長い尻尾と猫耳カチューシャがついている
のだ。
可愛く見えない訳がない。
楚々とした歩き方も手伝い、
女の子にしか見えない。
何層にも重ねたペチコートの下に、
ボクサーブリーフを穿いているなど、
誰も想像もつくまい……。
「足音も立てないから、ホントに猫みたいよねぇ……」
「シミちゃん達も似合うけど、一番似合うのはツナくん
だよね」
ほぅっ……と溜息をつくコスプレ女子達に気づかず、
綱吉はかいがいしく給仕に徹していた。
大柄な男子は、あまり可愛らしいのコスプレは
無理だった為、少しレトロなロングスカートの
メイド服にしている。
猫の尻尾をつけたミニスカメイド服をチョイス
したのは、比較的小柄な男子達だけだったので、
一種異様な光景が広がっていたりする。
それでも、毎年このテの模擬店は一二を争う繁盛店
になる。
「では、ごゆっくりお寛ぎ下さいませ……」
教師以外の職員達が座る一角に、
綱吉はお菓子やジュースを運び終え、
ペこりと一礼して厨房へ下がった。
そこでは柾也がコック長をしている。
「お疲れ、なんか飲むか?」
「ん、ミルクティーかな……茶葉が濃いめのが飲みたい」
「了解」
「ごめんね。せっかく完全オフの1日だったのに、
こっちの手伝いさせちゃって」
「気にすんな。
俺が見てらんなくて手を出しただけだから、
お前が気にする必要はねぇし」
手前のオーブンでは、
リーフパイが焼き上がる寸前だ。
「……? 疲れたのか? ツナ」
俯いて、スカートと手だけの視界に、
柾也の心配そうな表情があった。
「……っ!? えっ?
あっ、あの、ちっ、ちがっ」
心臓がバクリと跳ね、慌てた拍子に体が傾いだ。
ぱしっ。
綱吉の腕を柾也が掴み、倒れかけた体を支える。
「あ、あり、がと……」
「お前、やっぱり疲れてんじゃねえの?
呼んでもボンヤリして返事しねーし。
ちょっと座って休んでろ。」
厨房の端にあった椅子を持ってきて、
綱吉を座らせる。
「お父さんが来るまで頑張るっつっても、
肝心の回る時に疲れてちゃ意味ねえだろ?
少し座っとけ」
綱吉の横の調理台に、
ミルクティーとリーフパイを置き、
柾也も暫し休憩する。
「ありがとう。いっつも心配かけてごめんね」
苦笑いする。
「別に、これくらい親友なら当たり前だろ?」
ぶっきらぼうな言葉に篭められた感情は、
柾也自身の言う通り親友としてなのか、
それとも、別のものなのか ――?
そんな事考える自分の方が少し可怪しいと、
綱吉は黙るしかない。
「とりあえず、それ味見しろよ。
客に出せるかどうかとかあるし」
「あ、うん。いただきます」
少し冷めたパイは、サクリとした歯ざわりで、
メープルシロップとバターの香りが鼻に抜けた。
「おいしい……」
「そっか。 ならいいや」
ツインテールのリボンを崩さないように、
綱吉の頭をやんわりと撫でて、柾也は離れていった。
『ちょっと、さっきのアレ、見た?』
『見た見たっ。なんかさ、綱吉くんと八神くん、
すんごくイイ雰囲気だったよねー!?』
『ぶっきらぼうだけど、さりげなくツナくんの事
気遣ってて……やぁん、
なんだか変な想像しちゃうじゃなーいっ!!』
ヒソヒソ話す女子達の声は、
マモ達男子にもかろうじて届く。
「………女子、怖………っ」
男性同士の恋愛ネタで盛り上がる女子達に、
マモ達は正直引いていた。
「ん~……確かに、
八神とのやり取りって、なんか怪しい感じは
するけど、今泉の好きな人って違う気がする……」
腕組みをした京子が呟いた。
幼い顔立ちをしているが、
微かに艶っぽい部分が滲み出ているのを、
女子達は敏感に嗅ぎ取っている。
誰かに恋愛感情を抱いているだろうことも。
ただ、漠然とだが、その感情が柾也にではない
他の誰かに向けられているのだと、
京子は薄々感じていた。
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