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ドキドキの大阪出張 ②
しおりを挟む大阪支社の社屋に入ると、
”もわん”とした空気が纏わりついた冷気を
拭うように優しく私を包んだ。
「あぁ、和巴。今夜、うちの課長と同僚達が
夕食でもどうか? と言っているんだが、
何か予定は?」
2人きりのエレベーター。
木村さんは既婚の可能性が高いのに、
素敵な人と一緒に乗っているという現実が
私の緊張を一層高まらせる。
仕事中なのに、
木村さんの事が頭の中をグルグルと巡っていて。
「和巴?」
ヒョイっと視界に飛び込んできた、
木村さんの顔。どアップ
「ひゃっ!」
驚いて身を引いてしまって。
慣れないハイヒールを履いた脚は、
見事にバランスを崩した。
このあと訪れる衝撃に、自然と身体が備える。
……ん? あれっ?
一向に訪れない、衝撃。
それどころか、フワリと浮いているような感覚で。
ギュッと閉じた瞼を開くと、
木村さんが私ごと掬い上げるように受け止めていて。
「ったく、そそっかしいのは相変わらずだな」
って、吐息がかかるほどの距離で、
視線が絡まった。
「だ、大丈夫ですっ。すみませんっ!」
状況を把握して、
木村さんの腕から離れようとしたけど、
十分に足が床についていない。
「こっちこそ驚かせてしまって申し訳ない」
「本当、すみません。」
「それで……今夜どう?」
「……は?」
「本当に聞いてなかったんだな」
聞いてませんでした。
貴方のことばかりに気を取られていて……。
「今夜、みんなでメシでもどう?」
「はい。よろしくお願いします」
顔が紅潮しているのが分かる。
心臓もさっきよりドキドキ、
激しく鼓動を打ち始めたみたい。
エレベーターの閉塞感にちょっと息苦しさを
感じ始めた頃、
ちょうどエレベーターの扉が開いて、
木村さんが〈開〉のボタンを押して、
先に私を降ろしてくれた。
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