続・7年目の本気~岐路

NADIA 川上

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選択肢はふたつ

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 まるで当たり前の動作みたいに
 さり気なく腰へ手が回され、
 心臓のあたりを鷲掴みされた感覚。
 
 
「次に行く所は和巴に選択権やる」

「え……?」

「店を変えて飲み直すも良し・宿舎へ直帰するも良し・
 ホテルでオトナの時間を過ごすも良し」
 
 
 (オトナのじかん……)
 
 途端、頭の中に広がるピンク色の妄想。
   

 あーもうっ!
 ダメダメ。相手は既婚者なんだから。

 それに、東京と大阪じゃ滅多に会えないし、
 元々私なんて相手にされてないんだから……って、
 何考え始めてるのよ、と自分に言い聞かせるけど、
 時すでに遅し。

 タクシー乗り場がある大通りに回る間の僅かな時間。

 木村さんの横顔がキラキラして見える。

 少しだけ皮肉っぽく微笑みをたたえたその表情すら、
 ドキドキさせる。


 いつもは全然気にならないラブホのネオンが
 嫌に眩しく映る ――。
 
 そして、意識せずそちらに目が行ってしまう。
 
 
「……木村さんは、どうしたい?」 
 
「おいおい。今の俺にそんなこと決めさせたら、
 明日、まともに仕事出来なくなるかも知れないぞ」
 
「!! それ、どうゆう意味よ」

「だから……俺もそろそろ限界が近いって事だ。
 そのくらい察しろよ」  
 
 
 2人、どちらからともなく、
 左へ行けば大通りのタクシー乗り場・
 右へ行けばネオン瞬く色街への分岐点で
 立ち止まった。

 私は真っ暗な夜空を仰ぐよう上を向き、
 また元に戻って、木村さんの手を握り
 右へ歩を進めた。
 
 私がいつまでもぐずぐず終わった恋を引きずって
 いれば、せっかくこんな私に好意を寄せてくれた
 人をも傷つけてしまう。
 
 匡煌さんの事、
 完全に忘れるにはまだ時間が必要だけど。
 木村さんになら、今の自分を全て曝け出しても
 いいと思った。



*****  *****  *****



 1度決心したら女の行動は早い。
 
 そのまま木村の手を引き ~ 
 目に止まったラブホの玄関に躊躇する事なく入って、
 お客のニーズに合わせた客室のチョイスボードがある
 所でもさっさと部屋を選び ~ 受付・支払いを
 済ませ、いよいよ客室へ ――
 
 
「わぁぁ……最近のラブホってこうゆう風になってる
 んだ……」 

 
 青と白の壁紙に、『青』を連想させる地球や海。
 天井には青空と夜空が描いてある。

 インテリアはまるで王侯貴族の宮殿のようだ。

 和巴は嬉しそうに部屋の中を探検している。


「ねぇ、来て! 煌紀さん」


 ついさっきまで恥ずかしそうに”木村さん”って
 呼んでいたのに、いつの間にやら名前呼びだ、と
 内心苦笑い。


「はいはい」


 バスルームに向かうと、


「大きなお風呂! 2人で浸かったらさぞや気持ち
 いいでしょうねぇ。一緒に入って確認してみる?」


 和巴が喜々として木村を見る。


「お、お前 ―― それ意識して言った?」


「??……」


 (う”ぅ ―― 俺のキュウリがズッキーニに……)


 和巴楽しそうに微笑みながら、
 バスタブの中に湯を入れ始めた。


 (頑張れ、煌紀。あともう少しの辛抱だ)
 
 
「背中、流してあげるね」


 うはっ、堪らん……鼻血噴きそ……。

 なんか、もう、強引に耐久マラソンやらされて・
 そのすぐ後に物凄く世話の焼ける子供のお守り
 やらされてる気分だよ……。



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