ちょい悪オヤジに恋をした

NADIA 川上

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出逢い

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「―― 止めてっ。離して下さい」


 俺の腕を掴んで離さないその男は息遣いも
 鼻息までも荒くなってきた。


「何もったいつけてるんだ。アフター込みで3万だよ。
 相場より上げてやってるじゃないか」


 こんな風に俺と、この40代後半位の小父さんの
 押し問答は、夜の盛り場の片隅でかれこれ10分は
 続いている……。


 首都圏に住んでいるからと言って、高校生皆んなが
 遊び慣れているワケじゃない。

 俺・桐沢 綱吉きりさわ つなよしは、新宿のとある場所に来た途端
 目的の場所にも辿り着けず、しつこい小父さんに
 絡まれてしまった。

 迷って・ただ道を聞いただけなのに、
 さっきからずっとこの調子だ。


「嫌だ……ホントに違うんです。
 嫌だっ! 助けて……」

「いつまで愚図ってるんだよっ。ウリ専小僧の癖して
 あんまりつけ上がるなよ」

「ウリ ―― !! ち、違いますっ! 俺はそんな
 んじゃないっ! 誰か ―― 誰か助けて!」


 俺が小父さんから逃げようとしたら、
 何処からともなく”いかにも下っ端”的な
 雰囲気をまとった若い男がすっ飛んできた。


「―― おーっと、逃げんなよ。大人しそうな顔して、
 枕探しとは ―― ヤラずボッタクリされたんじゃ、
 カオが立たねぇんだよっ」
  
「誤解です。ちが ――  」


 問答無用で男に思い切りほっぺたを殴られた。


「とぼけんな。事務所でナシつけるぞ。店にも報告
 するからな。来いっ」


 そこへ、第三の男登場。


「おいっ。ちょーっと待て」


 但し今度の男は”ナシつけるぞ”と凄んできた
 やくざ風の男とは、格が違うと言うか……
 まとっているオーラが違うというか……
 俺みたいな超一般庶民とは住む世界がはっきり違う
 容易には人を寄せ付けないような雰囲気を持った
 男の人。

 やくざ風の男の顔色がサーッと変わった。


「あっ ―― こ、こりゃあ、手嶌てしまさん。その節は
 どうも」


 やくざがこんな風にペコペコ平身低頭でへつらう
 この人物は……一体何者?
 

「何だか、不似合いなお子様連れてるじゃねぇか。
 何処に行く気だ」

「あ、あぁ ―― いえ、こいつこんなナリですけど
 うちのイメクラの社員でして」

「ちが ―― 違いますっ! 俺は ――」

「身分証明証、見せてみろ」

「は?」

「学生なら学生証とか、生徒手帳とか持ってんだろ。
 オラ、早くしろぃ」

「は、はい」


 何がなんだか、ワケ判らなかったけど、
 やくざ風の男が ”手嶌さん” と呼んだ男に
 自分の学生証を見せた。


「(深いため息)……何処の誰が、未成年じゃねぇんだ
 高校2年生って書いてあんじゃねぇか」

「ええっ!! ―― そんな! 
 じゃ、まさか本当に……」

「人違いです。何度も言ったじゃないですか!」

「中田よ。シマ違いのオレがシノギに口出すほど
 暇じゃねぇがな……ケツ持ちすんなら、ガキに
 絡むようなマネしてんじゃねぇぞ! 
 こら(ゴルァ)」


 やくざ風の男は ”手嶌さん”なる男に一撃で
 沈められ ――、


「す、すいません……」

「今回は未遂って事で見逃してやらぁ、
 ガキ殴ったのは今のでチャラだぞ。
 そのホモ親父連れてさっさと失せろ」

「ほ、ほんとすいません。申し訳ない」


 男と小父さんは這々の体で走り去った。


「次は―― そこの糞ガキ! 
 そんなナリで商売する気か。
 ちょっと来いっ!」

「違う。俺、そんなんじゃない」

「てめぇな、今さら言い訳したって ――」

「本当だもん! 
 さっきの小父さんに道を聞いたら、
 いきなり腕を掴まれて……」

「おい…… じゃあ、
 ほんとにただの人違いか?」

「売春なんて、そんなつもりはない……
 俺はただ、
 2丁目へ行きたかっただけなのに……」

「あー? てめぇみたいなガキが何で2丁目
 なんぞへ行くんだよ」

「あなたまで行っちゃダメだって言うんですか?!」


 長い時間理不尽な事で拘束され非常に腹立たしく
 なって、何だか泣きたくなってきた。


「あ、イヤ、別にダメって事はねぇが ――」

「もう、新宿怖い……ワケ分かんないよ……」


 ググッと涙がこみ上げてくる。


「ワケ分かんねぇのはこっちだよ……って、
 お、おい ――」


 堪え切れずにとうとう泣き出した。


「わ、分かった ―― 分かったから泣くな」


 それでも泣き止まない俺に ――

  
「ちょっ、ちょっとこっち来い」

「嫌だっ。殺されるぅっ! 人攫いっ」

「バカっ。助けてやったのに、どうゆう言い草だ??
 お前は。人聞き悪い事いうなっ。いいから来い」
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