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成長編
術後
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夕方過ぎ、絢音が来てくれた。
「えっと ―― 調子はどう?」
「うん。悪くないよ」
「よかった……飲み物とかゼリーとかコンビニで色々買って来たんだ。もし良かったら食べてね」
そう言って絢音は片隅の冷蔵庫にしまう。
「ごめんね。絢音にもとんだ迷惑かけてしまって……」
「ごめんなさいはもういっぱいしたでしょ? だからもういい。これから先は元気になる事だけを考えて」
そんな絢音の優しい言葉に茉莉江は「ありがとう」と声を震わせた。
茉莉江は窓の外を見た。
「ほんと私って酷い女……我儘で自分勝手で……こうなったのは自業自得だったわ」
「まり……」
その時カーテンがそっと開いた。2人はそちらを見る。
「て、三上くん……あなたがどうして?? ―― つっ」
起きあがろうとして茉莉江は顔を歪めた。
「起きちゃだめだ。じっとしていて。真吾先生が連絡してくれたんだ。意識が戻ったって」
「……」
「ほんとはコレ、小母さんに渡したらすぐ帰ろうと思ってたんだけど。直接渡してくれって言われて」
柾也の手にももコンビニの袋があり、色々買い込んで来たようだ。
「お母さんってば……」
茉莉江はほんの少し顔を赤くして目線をそらす。
絢音はそのまま2人を置いて、そっとその場を後にした。
「今回はマジ、心配した。だいたい君はいつもやる事が無茶苦茶だ」
「……」
「俺より半年も大人のくせに ――」
柾也の誕生日は10月15日で。
茉莉江は4月5日。
ちょうど半年違うのだ。
「いつまでもガキで我儘で……だから放っておけない」
「手嶌くん……」
「今度、何か困った事があったら俺でも絢音でも誰にでも相談しろよ? 約束だぞ」
てっきり自分には興味がないと思っていた柾也からの優しい言葉に、茉莉江はポカンとして鳩が豆鉄砲を食ったような表情になったまま固まった。
「……あのぉ、和泉、今の言葉聞こえたよな?」
「あ――えっと……どうも、ありがとう」
柾也は照れたように肩をすくめた。
「OK。じゃ俺、また来るな」
そう言って柾也は病室を出て行った。
【もう――っ。みんな、こんなあたしのためにどうしてそんなに優しいのよ……】
茉莉江は布団のシーツをギュッと握った。
***** ***** *****
意識が戻って3日後、退院前検査の為、真吾先生が病室へやって来て内診が行われた。
膣に入れられていたガーゼが抜かれる。
そのガーゼは真っ赤な鮮血に染まっていた。
術後の経過は順調、との事だった。
内診の後、これからの生活や注意事項について簡単に説明された。
退院しても2~3日は安静第一。
子宮口からの出血が止まり次第シャワーはOKだが、入浴はまだNG。
日常生活は無理のない程度にとどめる事。
担当医の許可が出るまで、概ね約2週間は運動と性交渉は厳禁。
次の生理が来るのは大体術後約1ヶ月から1ヶ月半くらい。
生理の前には排卵があるので、避妊を怠ると再び妊娠の可能性もある事。
突然の入院から10日――。
主治医である真吾先生から、やっと待ちに待った退院の許可が出されると。
お母さんが退院の手続きをしてる間、私はパパっと着替えて数日分の薬をもらい、お母さんの車で、半年ぶりに我が家へ帰った。
お父さんとお母さんは『元浅草のマンションでもいい』と言ってくれたけど、
今回の事で自分の甘さに気づいた私は自らに厳しくなる為、実家生活に戻る事を選んだ。
「えっと ―― 調子はどう?」
「うん。悪くないよ」
「よかった……飲み物とかゼリーとかコンビニで色々買って来たんだ。もし良かったら食べてね」
そう言って絢音は片隅の冷蔵庫にしまう。
「ごめんね。絢音にもとんだ迷惑かけてしまって……」
「ごめんなさいはもういっぱいしたでしょ? だからもういい。これから先は元気になる事だけを考えて」
そんな絢音の優しい言葉に茉莉江は「ありがとう」と声を震わせた。
茉莉江は窓の外を見た。
「ほんと私って酷い女……我儘で自分勝手で……こうなったのは自業自得だったわ」
「まり……」
その時カーテンがそっと開いた。2人はそちらを見る。
「て、三上くん……あなたがどうして?? ―― つっ」
起きあがろうとして茉莉江は顔を歪めた。
「起きちゃだめだ。じっとしていて。真吾先生が連絡してくれたんだ。意識が戻ったって」
「……」
「ほんとはコレ、小母さんに渡したらすぐ帰ろうと思ってたんだけど。直接渡してくれって言われて」
柾也の手にももコンビニの袋があり、色々買い込んで来たようだ。
「お母さんってば……」
茉莉江はほんの少し顔を赤くして目線をそらす。
絢音はそのまま2人を置いて、そっとその場を後にした。
「今回はマジ、心配した。だいたい君はいつもやる事が無茶苦茶だ」
「……」
「俺より半年も大人のくせに ――」
柾也の誕生日は10月15日で。
茉莉江は4月5日。
ちょうど半年違うのだ。
「いつまでもガキで我儘で……だから放っておけない」
「手嶌くん……」
「今度、何か困った事があったら俺でも絢音でも誰にでも相談しろよ? 約束だぞ」
てっきり自分には興味がないと思っていた柾也からの優しい言葉に、茉莉江はポカンとして鳩が豆鉄砲を食ったような表情になったまま固まった。
「……あのぉ、和泉、今の言葉聞こえたよな?」
「あ――えっと……どうも、ありがとう」
柾也は照れたように肩をすくめた。
「OK。じゃ俺、また来るな」
そう言って柾也は病室を出て行った。
【もう――っ。みんな、こんなあたしのためにどうしてそんなに優しいのよ……】
茉莉江は布団のシーツをギュッと握った。
***** ***** *****
意識が戻って3日後、退院前検査の為、真吾先生が病室へやって来て内診が行われた。
膣に入れられていたガーゼが抜かれる。
そのガーゼは真っ赤な鮮血に染まっていた。
術後の経過は順調、との事だった。
内診の後、これからの生活や注意事項について簡単に説明された。
退院しても2~3日は安静第一。
子宮口からの出血が止まり次第シャワーはOKだが、入浴はまだNG。
日常生活は無理のない程度にとどめる事。
担当医の許可が出るまで、概ね約2週間は運動と性交渉は厳禁。
次の生理が来るのは大体術後約1ヶ月から1ヶ月半くらい。
生理の前には排卵があるので、避妊を怠ると再び妊娠の可能性もある事。
突然の入院から10日――。
主治医である真吾先生から、やっと待ちに待った退院の許可が出されると。
お母さんが退院の手続きをしてる間、私はパパっと着替えて数日分の薬をもらい、お母さんの車で、半年ぶりに我が家へ帰った。
お父さんとお母さんは『元浅草のマンションでもいい』と言ってくれたけど、
今回の事で自分の甘さに気づいた私は自らに厳しくなる為、実家生活に戻る事を選んだ。
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