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一宿一飯の恩義・そうして新しい物語が動き出す
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”薄給の冴えないサラリーマン氏”は
羽柴 柊二と名乗った。
*丁目交差点にそびえるように建つ
そのマンションは、新築で地下3階地上30階建て
発売開始から僅か10分足らずで完売したという
超人気物件だ。
しかも羽柴の戸室は最上階。
郵便受けの扉にも、玄関口の表札にも
”羽柴”と書いてあったので偽名ではないだろう。
実桜は上京したての田舎娘みたいに、
1階エントランスホールからこの部屋へ着くまで
目を見開きっ放しだった。
「おじゃましまーす」
羽柴の体を支えつつ、
実桜は彼の戸室に入った。
「意外に質素なんだねぇ。表はあんなにゴージャス
だったのに」
「そこいらで適当に寛いでていい」
そう言って上着をソファーに置いた。
実桜は勝手に冷蔵庫を開け缶ビールを飲む。
そしてミネラルウォーターをおっさんに”ん ――”
と言って渡した。
どこからともなく雑種の仔猫が現れる。
「ただいま、ニャース」
ニーと鳴いて足に絡みついてくる。
「って、その猫ちゃんの名前?」
「悪いか?」
「い、いや、別に悪くはないけど ”ニャース”って
なぁ、あまりにもベタすぎて……」
「生き物は必ず死ぬ。下手に凝った名前つけて
情が湧いてしまったら、別れが辛くなるだけだ」
「じゃ、飼わなきゃええやん」
「……間違ってその子の母親、車で跳ね飛ばして
しまったんだ。事切れて、ピクリとも動かなくなった
母親の乳を無心で吸ってるそいつ見たら、もう
何だかなぁ、放っておけなくなって……」
そう言いながらネクタイを解く羽柴を見て、
「ふぅ~ん」と相づちを打つ実桜。
「手間かけたな。あそこまで酔う事はめったにないん
だが……」
実桜は飲みさしのビールを置いて、
いきなり洋服を脱ぎ始めた。
「お、おい、 何してる」
「何って……脱いでる?」
「なぜ?」
「シャワー浴びるんじゃないの?」
「浴びるのは私でキミじゃないだろう?」
実桜はムーッと膨れる。
「あたい、上背のあるおっさん支えてココまで来て
めっちゃ汗かいたぁ~。それなのにこのまま眠れー?
うっそぉー、信じられなぁーい」
「わかった、わかったから。先に浴びておいで」
「はぁ~い」
実桜はそういう習性の目の前で真っ裸になった。
「ちょっ ――」
「おっさんも一緒に入るー?」
「遠慮します」
苦手だ。あの手のタイプは ――
と、羽柴は思った。
実桜がシャワーを浴びている間に着替えを探す。
何か着せるもの……
袖と裾を捲れば何とか着られるそうな
スウェットスーツを用意した。
「着替えここに置いておくから」
「はーい」
待っている間に酔いを醒ましながら新聞に
目を通していると、「お先でしたぁ」と言って
実桜が出てきた。
その姿を見て羽柴は赤くなる。
「し、下はどうしたんだ」
「えーこれ大きいし、ダボシャツだけで十分」
そう言って飲みさしビールを再び飲み始める。
「おっさんもさっさと入っておいでよ」
まったく……という表情で羽柴は着替えを持って
浴室へ向かった。
しばらくして出てくると実桜がいない。
【やはり帰ったのか?】
ホッとして電気を消し、
寝室へ向かいベッドの中に入った。
「―― なっ」
羽柴が電気をつけるとベッドの中に実桜と
ニャース。
「な ―― なんなんだ、キミは。何故ここにっ」
「泊めてくれるって言うたやん」
「なら下に布団を敷いてやろう」
「あたい、床で寝るのやーだ」
「じゃあ私が下で寝る」
そう言って立ち上がると袖をぎゅっと握ってきた。
「……どうした?」
「こ~んなにベッドは広いのに、どうして一緒じゃ
あかんの?」
「そ、それは……」
羽柴が実桜を見ると出逢ったばかりの頃の
勝気な表情ではなく、頼りなさそうな、随分と
年下の少女に見えた。
フゥーと溜息をついて、ベッドへ戻る。
「えへへ、ホントおっさん優しいぃー」
そう笑って羽柴の腕に甘えてしがみ付く。
「ったく。早く寝ろ」
「うん。おやすみなさい、羽柴さん」
こうして羽柴にはやっといつもの静かな夜が
訪れるハズ、だったが ……
それは、草木も眠る丑三つ時 ――
羽柴は自分の下半身にいつもと違う、
何とも言えぬ違和感を感じてぼんやり
目を覚ました。
並んで床に就いた実桜の姿は隣にいない。
でも、自分の下半身の布団がこんもり
盛り上がっていて、そこがもそもそと動き、
時折 ”グ グ グ――” という
くぐもった声が聞こえてくる……それは例えて言う
なら元妻との、その……夫婦の営みをしていた時
聞いていた声だ。
しかし、今妻はいないし。
―― そこまで考え
羽柴はハッとして体を固くした。
自分のナニがとても熱くて柔らかい場所へ包まれる
よう導かれたのを感じたから。
『どうしたのー? 羽柴さぁん』
何となく心配気なその声は実桜のモノで、
それは紛れもなく自分の布団の中から
聞こえてきた……。
大きく深呼吸して、バッと布団をめくった。
「あー、ごめんね。起こしちゃったぁ?」
そう、悪びれる風もなく言い放った実桜は
羽柴の足の間に陣取り、まだ力を持たぬソレ
(ふにゃチン)へ愛おしそうに唇を這わせていた。
羽柴 柊二と名乗った。
*丁目交差点にそびえるように建つ
そのマンションは、新築で地下3階地上30階建て
発売開始から僅か10分足らずで完売したという
超人気物件だ。
しかも羽柴の戸室は最上階。
郵便受けの扉にも、玄関口の表札にも
”羽柴”と書いてあったので偽名ではないだろう。
実桜は上京したての田舎娘みたいに、
1階エントランスホールからこの部屋へ着くまで
目を見開きっ放しだった。
「おじゃましまーす」
羽柴の体を支えつつ、
実桜は彼の戸室に入った。
「意外に質素なんだねぇ。表はあんなにゴージャス
だったのに」
「そこいらで適当に寛いでていい」
そう言って上着をソファーに置いた。
実桜は勝手に冷蔵庫を開け缶ビールを飲む。
そしてミネラルウォーターをおっさんに”ん ――”
と言って渡した。
どこからともなく雑種の仔猫が現れる。
「ただいま、ニャース」
ニーと鳴いて足に絡みついてくる。
「って、その猫ちゃんの名前?」
「悪いか?」
「い、いや、別に悪くはないけど ”ニャース”って
なぁ、あまりにもベタすぎて……」
「生き物は必ず死ぬ。下手に凝った名前つけて
情が湧いてしまったら、別れが辛くなるだけだ」
「じゃ、飼わなきゃええやん」
「……間違ってその子の母親、車で跳ね飛ばして
しまったんだ。事切れて、ピクリとも動かなくなった
母親の乳を無心で吸ってるそいつ見たら、もう
何だかなぁ、放っておけなくなって……」
そう言いながらネクタイを解く羽柴を見て、
「ふぅ~ん」と相づちを打つ実桜。
「手間かけたな。あそこまで酔う事はめったにないん
だが……」
実桜は飲みさしのビールを置いて、
いきなり洋服を脱ぎ始めた。
「お、おい、 何してる」
「何って……脱いでる?」
「なぜ?」
「シャワー浴びるんじゃないの?」
「浴びるのは私でキミじゃないだろう?」
実桜はムーッと膨れる。
「あたい、上背のあるおっさん支えてココまで来て
めっちゃ汗かいたぁ~。それなのにこのまま眠れー?
うっそぉー、信じられなぁーい」
「わかった、わかったから。先に浴びておいで」
「はぁ~い」
実桜はそういう習性の目の前で真っ裸になった。
「ちょっ ――」
「おっさんも一緒に入るー?」
「遠慮します」
苦手だ。あの手のタイプは ――
と、羽柴は思った。
実桜がシャワーを浴びている間に着替えを探す。
何か着せるもの……
袖と裾を捲れば何とか着られるそうな
スウェットスーツを用意した。
「着替えここに置いておくから」
「はーい」
待っている間に酔いを醒ましながら新聞に
目を通していると、「お先でしたぁ」と言って
実桜が出てきた。
その姿を見て羽柴は赤くなる。
「し、下はどうしたんだ」
「えーこれ大きいし、ダボシャツだけで十分」
そう言って飲みさしビールを再び飲み始める。
「おっさんもさっさと入っておいでよ」
まったく……という表情で羽柴は着替えを持って
浴室へ向かった。
しばらくして出てくると実桜がいない。
【やはり帰ったのか?】
ホッとして電気を消し、
寝室へ向かいベッドの中に入った。
「―― なっ」
羽柴が電気をつけるとベッドの中に実桜と
ニャース。
「な ―― なんなんだ、キミは。何故ここにっ」
「泊めてくれるって言うたやん」
「なら下に布団を敷いてやろう」
「あたい、床で寝るのやーだ」
「じゃあ私が下で寝る」
そう言って立ち上がると袖をぎゅっと握ってきた。
「……どうした?」
「こ~んなにベッドは広いのに、どうして一緒じゃ
あかんの?」
「そ、それは……」
羽柴が実桜を見ると出逢ったばかりの頃の
勝気な表情ではなく、頼りなさそうな、随分と
年下の少女に見えた。
フゥーと溜息をついて、ベッドへ戻る。
「えへへ、ホントおっさん優しいぃー」
そう笑って羽柴の腕に甘えてしがみ付く。
「ったく。早く寝ろ」
「うん。おやすみなさい、羽柴さん」
こうして羽柴にはやっといつもの静かな夜が
訪れるハズ、だったが ……
それは、草木も眠る丑三つ時 ――
羽柴は自分の下半身にいつもと違う、
何とも言えぬ違和感を感じてぼんやり
目を覚ました。
並んで床に就いた実桜の姿は隣にいない。
でも、自分の下半身の布団がこんもり
盛り上がっていて、そこがもそもそと動き、
時折 ”グ グ グ――” という
くぐもった声が聞こえてくる……それは例えて言う
なら元妻との、その……夫婦の営みをしていた時
聞いていた声だ。
しかし、今妻はいないし。
―― そこまで考え
羽柴はハッとして体を固くした。
自分のナニがとても熱くて柔らかい場所へ包まれる
よう導かれたのを感じたから。
『どうしたのー? 羽柴さぁん』
何となく心配気なその声は実桜のモノで、
それは紛れもなく自分の布団の中から
聞こえてきた……。
大きく深呼吸して、バッと布団をめくった。
「あー、ごめんね。起こしちゃったぁ?」
そう、悪びれる風もなく言い放った実桜は
羽柴の足の間に陣取り、まだ力を持たぬソレ
(ふにゃチン)へ愛おしそうに唇を這わせていた。
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